アクア、15歳の誕生日。
赤い屋根の屋敷裏庭では、野外パーティの準備が着々と進んでいたが、招待メンバーはまだ全員揃っていない。
今居るのは、一族の長メノウと、コハク、ヒスイ、ジスト、スピネル、オニキス・・・そして、コクヨウ。
シトリン、サルファー、タンジェ、カーネリアンも加わる予定だが、トパーズは仕事で欠席だ。
開始を待ちきれずにコーラの瓶を開けたのは、本日の主役、アクア。
「ね~、なんか、面白い話なぁい?例えばぁ~、誰かの恥ずかしい話とかぁ~」
それで時間潰しをするつもりらしい。
「そんじゃ、いっちょ聞かせてやるか」
孫を喜ばせるべく。名乗り出たのは、メノウだ。
普段から神出鬼没なだけに、その口から誰の暴露話が飛び出すか、予測不能だ。周囲に緊張が走る。
「ま、今日はアクアの誕生日だし」
アクアに纏わる話をひとつ。と、メノウは回想昔話を始めた。
アクア、生後半年――リビングにて。
「ん・・・おにいちゃ・・・」
唇の間に自ら指を咥え、快感に目を細めるヒスイ。
拡げた両脚の間・・・コハクはそこでヒスイの膣に舌を詰め込んでいる最中だった。
「ん・・・ふ・・・」
コハクの舌から滲み出す唾液は、膣内で媚薬に変わる。
両手でお尻を持ち上げられ、舌先から落ちた雫が子宮口を穿つと。
そこから、痺れと疼きが同時に発生した。
「んッん・・・あッんッ・・・」
膣肉がぎゅむぎゅむとコハクの舌を絞り。
勢い余って、隙間からぷちゅぷちゅと愛液を飛ばす。
「あ・・・!!おにぃちゃ!!」
長く伸ばした舌をゆっくり縮めるコハク・・・引き止めようと、ヒスイの膣奥からとっておきの蜜が流れてくる。
舌を挿したまま、口を開け、入ってくるのを待って。
ごくり、コハクの喉が鳴るのを間近で見ている者がいた。
「あれ?アクア?」と、コハクはまばたき。
しっかり寝かしつけてから、行為に及んだつもりだったが、いつの間にか両親のところまで来ていた。
(お腹空いちゃったかな?)
無駄泣きはしない赤子だが、体格が良い分、頻繁に空腹を訴える。
今はまだ大人しくしているが、狙いは恐らくヒスイだ。
「えっ!?アクア!?ちょっ・・・や・・・」
「こらこら、ヒスイ。こんなにびしょびしょにして、我慢できるわけないでしょ?」と、コハク。
這って逃げようとするヒスイの腰を掴んで、軽くペニスを挿入し。
括れ部分を膣口の裏側に引っ掛けた。
「あッ・・・だめ・・・おにぃちゃ・・・アクアが見て・・・」
「別にいいんじゃないかな?アクアは僕達の娘なんだし」
恥ずかしがることはない、と言って、逆に恥ずかしがらせる・・・何気に鬼畜趣向だ。
「そ・・・なの・・・だめに決まって・・・」
「うん、でも・・・中、開いてきちゃったでしょ?熱気が充満してる。このままじゃ辛いよね」
天使の笑みで、悪魔の囁き。
ヒスイの耳にキスをして、赤く染まるのを見届けてから、今度はアクアの頭を撫でて。
「パパとママが愛し合っているところを、よ~く見ててね」
「あい!」
会話が成立している風なのが凄い。
思えば、この時からコハクとアクアは意気投合していたのかもしれない。
「お・・・おにいちゃ・・・やめ・・・!!ひッ・・・」
残りの部分をインサートした直後から、コハクは激しく腰を振り出した。
「あッ・・・うぅぅんッ!!」
本来なら、ペニスを刺激する筈の、細かな突起を削られ。濡れて。
膣内がツルツルになってしまったことに、新たな羞恥を覚える。
「いや・・・あッあッ・・・だ・・・だめ・・・」
抗う言葉も、喘ぎと混ぜこぜになり。
重力に引かれて落ちた愛液が、先端に珠を作って、気ままに揺れている。
「ひっ・・・くぁ・・・あ、あぁん・・・」
アクアの目の前で、快楽に堕ちてゆくヒスイ・・・自分でもわからない内に絶頂を迎えていた。
「あ・・・あ・・・おにぃ・・・」
「よしよし、いい子だね~・・・」
コハクはまだ射精をする気がないようで、ヒスイのオーガズムを確かめながら、膣内で緩やかなピストンを続けている。
「はっ・・・はっ・・・あふっ・・・」
舌を丸出しにして、官能の涎を垂らすヒスイの姿に、アクアは手を叩いて喜んでいたが。
コハクがペニスを突き入れる度、感じて弾むヒスイの胸が、次第にアクアの目を引いて。
「あ~・・・」こちらも涎を垂らし始めた。
「くすっ、おいで。そろそろヒスイにおっぱい貰おうね」コハクが手招きする。
「んぁ・・・は・・・」
一方ヒスイは、絶頂の副作用で、平衡感覚を失い。
アクアを視界に捉えることができなくなっていた。
羞恥を孕んだ快感に屈し、逆らうこともできずに。
「あん・・・ぁ・・・はぁぁん・・・」
母乳を出しながら、子宮に精液を浴び。
とろけ顔で、淫声をあげていた――
“恥ずかしい話”として語られる事件は、この翌日に起こった。
コハクのシャツ1枚で昼寝をしているヒスイに、ハイハイで近付くアクア。
昨日、コハクがヒスイの割れ目を舐めているところをずっと見ていたので、そこに美味しいものがあるのではないかと、赤子心に思ったのだ。
「あ・・・おにぃ・・・」
割れ目に息がかかると、ヒスイは寝惚けたまま、脚を開いた。
「ん~・・・」
しばらくの間、目を閉じて、好きにさせていたのだが・・・
「うわぁっ!!アクア!!」
ジストの声がして、やっと現実に気付く。
「え?アクア???えぇぇぇぇっ!!?」
「あう~・・・」
股ぐらから、アクアが見上げている。
「だめだよっ!!ヒスイのソコは父ちゃん専用・・・」
ジストが慌てて抱き上げる、と。アクアはニヤリと笑い。
小さな唇の端から、ヒスイの愛液を溢したという――
「――で、俺は確信したワケ。こいつは大物のエロになるって」
「じいちゃん!?なんで知ってんのっ!?」ジストもびっくりだ。
「企業秘密ってヤツ?」と、人差し指を唇に指を乗せるメノウ。
ヒスイは顔を真っ赤にして「もぉぉぉっ!!お父さんっ!!」と、怒鳴った。
忘れたくても忘れられない羞恥体験を、赤裸々に暴露されてしまったのだ。
けれども、怒っているのはヒスイだけで。周囲は笑うか呆れるかだ。
「見てたのに、なんで止めてくれなかったの!?」
ヒスイが烈火の如くメノウを責めるも。
「“恥ずかしい話”は、多い方が楽しいじゃん。ほら、こういう時とかさ」
メノウ理論、炸裂。
「だよね~」
賛同したアクアが、メノウにコーラの瓶を手渡し、乾杯。
「おじ~ちゃん、ナイストークだっだよぉ~、ねぇ、ママぁ?」
ヒスイを見て、ニヤリ、笑う。
「っ~!!!!知らないもんっ!!」
勝ち目がないと思ったのか、ヒスイは屋敷へ逃げ込んでしまった。
「そうそう、あの事件あと、ヒスイに物凄く怒られたんですよ」
隣にいたオニキスに、コハクもまた、楽しそうに語る。
「当然だ」と、オニキス。(しかし・・・)
どんなに“恥ずかしい話”だとしても。親と子の思い出には違いない。
「何か、ないか?」
不意にオニキスがそう尋ねたのは、シトリンとトパーズに聞かせてやれるような話があれば――と、思ってのことだった。
「初めての子供だろう。思い出のひとつくらいは・・・」
「逆に聞きたいくらいですよ」と、コハクは笑ったが。
「ああ、そういえば・・・」
シトリンとトパーズが生まれた日のことを話し出した。
視線は、少し先のメノウに向いている。
「あの日、メノウ様と僕でヒスイの出産に臨みました。最初は、ヒスイが僕の子供を産んでくれるのが嬉しくて、浮かれてたんですけど」
そこまで言って、息を継ぐ。
「まっさらな生の塊を目にした時、一瞬ね、どうしていいか迷っちゃったんですよ」
「・・・・・・」
「数えきれないほど人を斬った手で触ったら、汚れてしまいそうだったから。そうしたらメノウ様が、僕の手を取って、こう言ってくれたんです」
「いいじゃん。お前の子供なんだから。遠慮なく愛してやればいいんだよ」
『死と生を知る手――俺は悪くないと思うけどな』
「メノウ様のあの言葉がなかったら、僕はたぶん、自分の子供を・・・ヒスイの子供を、腕に抱くことができなかった」
「・・・・・・」
「今となってはこれも“恥ずかしい話”ですけどね、っと、全員揃ったかな?」
コハクは会場を一望し。
「それじゃあ、ヒスイを迎えにいってきます」
【エピローグ】
パーティ会場から離れ、一族所有の村を散策するオニキス。
モルダバイトは、時代と共に刻々と変化を遂げているが、この村は何十年経っても変わらぬ風景を残している。
公園のブランコに至るまで、コハクの手入れが行き届いているのだ。
「・・・・・・」
庭には年中花が咲き誇り。
菜園は毎年豊作。
ヒスイはいつだって満たされて、幸せそうにしている。
「・・・あいつは元々、生かして、育てるのが上手い」
気付いているのか、いないのか。オニキスは、ひとり笑って。
「死と、生を知る手・・・か。だが今は――」
死よりも、生を・・・知る手だろう。
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