“銀の女は子供ができにくい”
(・・・どこがだ)
アクアマリン。コハクとヒスイの間にできた6番目の子供だ。
(あの女・・・ボコボコ産みやがって)
舌打ちの嵐。
子沢山で散々周囲を巻き込んでいることは知っていたが、ついに自分にまでしわ寄せがきた。
数日前のこと。
「夫婦水いらずで旅行がしたいから、アクアのことよろしくね」と、ヒスイ。
「アクアがコクヨウのところに行きたいって言ったのよ。私に文句を言われても困るわ。じゃあね」
無責任なところは何年経っても変わらない。
「いってらっしゃい〜v」
アクアが手を振る。
コクヨウが一言も言い返せないうちにヒスイの姿は消え、アクアと二人取り残された。
初対面ではなかった。
メノウとコンビを組み、エクソシストの寮で生活していたため、何度も顔を合わせる機会があった。
(このガキ・・・嫌いだ)
銀の獣に抱き付いて毛を毟る。
幼さ特有の残酷さが顕著なタイプだった。
「いもうとがほしいから、きょうりょくするの」
ヒスイを見送ったアクアがくすくすと笑う。
(意味わかってんのか!?コイツ)
「あのね?きょうはおみやげがあるんだよ」
「・・・・・・」
とにかく深入りしたくない。コクヨウは顔を背けた。
「おじいちゃんじきでんのま・ほ・う」
ふさふさとしたコクヨウの体毛に顔を埋め、アクアが呪文を唱えた。
「な・・・」
銀の獣、返上。本来の吸血鬼の姿に戻っている。
「わぁ〜・・・こくよ〜かっこいい〜v」
ぱちぱちと拍手。しかしコクヨウの気分は最悪だった。
「ふざけんな!ヒトを勝手にいじんじゃねぇ!!」
サンゴを失ってから、元の姿に戻りたいと思うことはなかった。
過去を忌むように、本来の姿にも憎しみに近い気持ちを抱いていた。
「獣に戻せ」
自分にはそれがお似合いだ、と思うのだ。
「い・や」
いくら怒鳴られようがアクアは全く動じず、一歩も譲らなかった。
そして今に至る。
「ね〜こくよ〜・・・ねてばっかりじゃつまんないよ〜」
「・・・・・・」
服を着て、ふて寝。この際アクアは無視することにした。
「こくよ〜。こくよ〜。こ〜く〜よ〜」
「・・・・・・」
「こ〜く〜よっ!」
「・・・うぜぇ!!あっち行け!!・・・って・・・」
アクアを追い払おうと顔を上げて・・・唖然。
「オマエ・・・何で服脱いでんだ?」
「えへへっ♪」
驚くべき巨乳。12歳の体つきとは思えない。
「ね〜、こくよ〜、えっちしよ〜?」
「12で男と寝ること考えんな!ボケ!」
「ど〜してぇ?あくあね、もうあかちゃんうめるの。だからえっちしてもいいよ、って」
「・・・誰が言った」
「おじいちゃんv」
(あのヤロウ・・・)
額に血管が浮き出すほど腹が立つ。
「でね、こくようはあくあのものだから、すきにしていいよ、って」
「・・・それは誰が言った」
「ぱ・ぱv」
(畜生・・・極悪天使め・・・)
「ね〜・・・しようよぅ〜。えっちってすごぉくきもちいいんだって〜」
天使の微笑み。悪魔の言葉。
(あいつら一体どういう教育してんだ!!?)
性教育しかしていないように思える。
しかも、タチが悪いことに似ているのだ。最愛のサンゴに。
コクヨウは意地になって叫んだ。
「オマエとは死んでもやんねぇよ!!」
その頃・・・
「アクアね、コクヨウのこと好きなんだって」
旅行の準備をしながら、口を押さえてヒスイが笑う。
「だからもう迎えに来なくていいよ、って」
「あはは・・・我が娘ながら大胆だなぁ」
頭を掻いてコハクも笑う。
あまりに早い娘の巣立ち。
「まぁ・・・いっか。恋愛は素直が一番だからね」
お題:匿名希望1号様
‖目次へ‖