学園祭の目玉。PTAによる出し物は演劇だった。
演目は『赤ずきん』だ。


道草していた赤ずきん。
先回りして、おばあちゃんになりきる狼。
本物のおばあちゃんはとっくにぺろり・・・腹の中だ。

ここまでは順調だったのだが・・・

狼が赤ずきんを待っていたのは、食べる為ではなかった。
恋・・・してしまったのだ。
狼トパーズは赤ずきん姿のヒスイに萌え、勝手にシナリオ変更。


「どうしておばあちゃんのお口はそんなに大きいの?」
「お前を食うためだ・・・が、やめた」


「へ???」
台本と違う展開に焦るヒスイ。
「来い。嫁にする」
トパーズがヒスイの手首を掴んで引っ張る。
せめて舞台の上で、ヒスイとハッピーエンドを迎えたかったのだ。
赤ずきん二次シナリオ。アドリブで演りきる自信があった。
「え?ちょ・・・トパ・・・お、オオカミさんっ!!?」
つい素に戻ってしまったが、必死に演技を続けようとする赤ずきんヒスイ。


そこで・・・


「ちょっと待ったぁ!!」
颯爽と、猟師役のコハクが登場した。
ところが、大きな問題が。
関係者一同びっくり仰天だ。
舞台裏のおばあちゃん=オニキスが深い溜息と共にツッコミを入れた。


「・・・どこの王子だ・・・お前は・・・」


通りすがりの猟師とは思えない煌びやかな衣装。
その姿はまさに王子。
「美しいお嬢さん、これを・・・」
しかもコハクが懐から取り出したのは、ガラスの靴。
シナリオ変更どころか、全く違う話になっている。
これには会場騒然。
「え?ちょ・・・おにぃ・・・じゃなくて、通りすがりの猟師さん!!?」
「違うよ」
赤ずきんヒスイにサイズぴったりのガラスの靴を履かせ。
「キミを探していたんだ!」と、熱く叫ぶ。
「さあ、僕と一緒に行こう」


「ちょっと待て」


ハッピーエンド計画を邪魔されたトパーズが黙って見過ごす筈もなく、狼VS王子、赤ずきんの取り合いに。
互いに譲らず、自分の方へとヒスイを引っ張る。


「お前はこっちだ」
「いや、こっち」


と、くればお次は・・・


ビリビリビリ!!


ずきんやら下に着ていた洋服やらが見事に裂かれ。
ステージの上、ヒスイのランジェリーがお披露目となった。


「いやぁっ!!」
「ヒスイ!!」


舞台裏でひたすら呆れていたオニキスが慌てて飛び出すが・・・
おばあちゃんの衣装の裾に躓き・・・
「ちょ・・・オニキス!?じゃない、おばあちゃ・・・!!」
そのままヒスイを押し倒す。
「んむっ!!」
更に、不可抗力のキス。


会場は別の意味で沸き上がり、動揺したルチルの声と共に幕が降された。





しばらくおまちください。




お題:れい様

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