朝からイライラが募る明日は休みだというのに
明日は休み・・・・
その言葉がさらにイライラを増殖させる
あの言葉を聞いたから?
そう考えて自分が可笑しくなる。この私がそんな事で気分を悪くするとは考えたくなかった。
人間は人間同士で勝手にやってくれればいい
そう思っているから・・・・。
休日前になると決まって休み明けの予定の打ち合わせなど一段と仕事が増える。
シンジュは朝から城内を行ったり来たりしていた。
「どうしてこうも忙しいのでしょうか・・・」
一人愚痴をこぼしながらも足を止めて窓の外を見る。外は眩しいまでの晴天。
こんな日にする森林浴はとても気持ちがいい。
「何もなければ外でゆっくりと過ごしたいものですね・・・・。」
ぽつりとつぶやき物思いにふける。
ふむ・・・明日もこんな天気なら、木陰でローズと将棋を指すのも一興・・・
そう考えたら憂鬱な気持ちが晴れて楽しくなってきたから少し不思議な気分。
趣味を持つという事はいい事だと自分で納得。
仕事の続きをする為に窓を離れようとした時、目の端に淡い桃色が映った。
「ん?」
視線を窓の外に広がる庭に写すと、そこには見慣れた女性がいた。
インカ・ローズだ。
ローズは一人ではなかった。隣には20代後半の男性と一緒にいて楽しそうに笑っている。
途端にシンジュの顔が曇る。シンジュはそんな自分の変化に気付いてない。
ただ自分が見たことのない人とローズが楽しく会話しているのが面白くなかった。
相手は誰なのか、何を話しているのかそれが気になってしまって・・・・
いけない事だとわかってはいても力を使ってそっと会話を聞いてしまった。
「明日も来るの?」
「はい!お休みですので伺います!」
「いつもと同じくらいの時間かな?」
「はい!大体それくらいの時間に行きますね!楽しみにしています!」
「わかった。じゃあ明日は・・・・」
そこで会話は突然途切れた。シンジュが力を使うのをやめた為だった。
陽も少し傾いてきた頃、シンジュとローズは会議室で仕事をしていた。
ローズは終始上機嫌なのだが反対にシンジュは不機嫌だ。
「なにかあった?」
ローズは気になってシンジュに訊ねた。
「いえ。仕事が終わらないだけです。下手したら明日は休み返上でやらないといけないのかもしれませんね」
素っ気なくシンジュが答える。
「私の方はもう少しで終わるから手伝うわ。明日は朝から用事があるから手伝えないけど・・・・・。出来る限り手伝うから!そ・・・それでね、仕事の方が終わったら明日いつもの勝負しよ!夕方くらいになってしまうかもだけど・・・」
ローズは頬を少し赤く染めて言った。
「用事があるのでしたら、私に無理して付き合う事はないのですよ?折角の休みですし休んでいただいて結構です」
「でも・・・。シンジュも明日は休みの日だし手伝うわ」
「それでしたら、これとこれお願いします。私は部屋で続きをやります。出来ましたら持って来てくださいね。」
そういってローズの前に資料の束を置いてさっさと部屋を出て行ってしまった。
「シンジュ・・・なにかあったのかな・・・」
どうして機嫌が悪いのか気になるけど・・・目の前に積まれた資料を見てため息をつく。
明日は朝から用事もあるし、シンジュと勝負できなくなっちゃう!今が頑張りどころよ!ローズは気を引き締めて、目の前の仕事に取り掛かった。
「ってなによこれ〜〜〜〜。調べる事だらけじゃない!!!今日中に終わらないじゃない!!!!」
うぅ・・・・。が・・・がんばるのよインカ・ローズ!これも明日の為なんだから!
そう自分を励まして仕事に取り掛かった。
その頃、シンジュは自室で持ち込んだ仕事をするでもなくぼーっと考え事をしていた。
以前は、時間があれば朝からでも部屋に押しかけて来ていたローズが、最近の休業日は夕方以降しか訪れなくなったのは・・・・
・・・朝一緒にいた男と一緒にいるから・・・
オモシロクナイ
ナゼそう思ってしまうのかが自分でもよくわからない。初めての感覚・・・
気持ち悪い・・・・
机の上に突っ伏して目を閉じる。なにも考えたくなかったし仕事をする気にもなれなかった。
本当は急ぎの仕事はもう終わらせてしまっていた。
それなのに、まだ急ぎでもなく自分でも嫌になる仕事を任せてしまった。
今日中に終わる仕事ではないのに・・・・。
どれくらい時間が過ぎたのだろう。外は暗闇に包まれ、周りには静寂が漂う。
ハッっとしてシンジュは目を覚ました。
連日の疲れでそのまま寝てしまったらしい。かなり寝てしまったらしく日付が変わってしまっていた。
それなのにローズが部屋を訪れた形跡はなにもなかった。
ローズもシンジュと同様に連日忙しく疲れが溜まっている筈なのだ。
人間であるローズの方が精霊であるシンジュよりも疲労は蓄積されているはず。
そう思ったら申し訳なさと恥ずかしさがこみ上げて来て・・・・
早足で会議室へと向かった。
カチャ・・・
後悔が背中をおして遠慮気味に扉を開かせた。そっと中を覗くと、資料の山の間から桃色の髪が顔を覗かせているのが見えた。
「ローズすみません・・・その仕事は・・・・」
そう言いかけて、笑みがこぼれた。
「無理をさせてしまいましたね・・・」
そう言いながらローズの頬にかかった髪を払う。
「なんの夢をみているのでしょうか」
こっちまでつられて微笑んでしまうくらい、ローズは幸せそうな顔をして寝ていた。
このままここで寝られて風邪をひかれても困りますし・・・・起すのも・・・・
悩んだ挙句、自分の部屋に連れて行くことにした。
大人の姿になり、力を使って自室までのルートに人がいない事を確認する。
城の者に、この姿を見られる訳にはいかないのだ。
姿を変えられる・・・・それは時として面倒この上ない。ずっと子供の姿でいるよりはいいのだけれど。
「後は・・・」
眠り姫をさらっていくだけ・・・・
そっとローズを腕に抱くとローズの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「以外に軽い・・・」
女性の前で言ったら怒られそうな事を言いながら入り口に向かおうとした時
「シンジュ・・・」
ローズの小さな声が聞こえた。
「起こしてしまいましたか」
そう言って、ローズの顔を覗くが目は閉じたままだった。
・・・・寝言?・・・・
「・・・ンジュ・・・大好き・・・」
「!!」
途端シンジュの体がビクッとなった。それと同時に胸が甘く疼く。
ローズ・・・あなたは・・・
・・・私の事・・・それ程までに好きなのですか?
夢にみるまで・・・
私の夢を見て・・・あんな幸せそうな顔をしていたのですか?
そう考えただけで胸が早鐘を打っていた。
では、あの男性は?
考えれば考えるほど分からなくなってくる・・・
思考を巡らせている間に自室に着いてしまった。ローズをそっとベッドへ横たえる。
ローズの寝顔を見ていたらその柔らかい髪に、頬に、唇に・・・・
触れたい衝動に駆られる。将棋の勝負をして、何回肌を合わせたのだろうか。
以前は、あれほど汚らわしいと思っていた事が今は・・・・
「ん・・・シンジュ?」
物思いにふけっていたらローズが目を覚ました。状況が把握できずに目を擦っているローズがかわいく思える。
「会議室で寝ていたので私の部屋に連れて来ました。あのまま風邪を引かれてもこまりますからね」
「あ!仕事まだ終わってないの!すぐ続きするから!」
「あの仕事は期限がまだありましたので今日中じゃなくていいんです。無理をさせてすみませんでしたね」
ベッドから飛び出そうとするローズを制止して素直に謝る。
「そうなの!」
ローズは目を大きくしてシンジュを見たが、すぐに笑顔になる。
「期限まだでよかったわ。実は、体力の限界だったの。それじゃあ私部屋に戻るね」
そういって立ち上がろうとするローズをまたもや制止する。
「コホン。今はもう真夜中なんです。こんな時間に私の部屋から出て行く所を見られたら大変ですし、女性が出歩くのもあまり関心しません。明日は休みですのでもう少し日が高くなってから出て行ったら如何ですか?」
「えっ・・・・・そ・・・それって・・・・」
「このまま休んでいっていいと言っているのです」
ふぅーっと一息ついてシンジュは言った。
ローズの方はというと、嬉しいのと驚きと恥ずかしさと・・・・とにかく色々な感情が入り乱れてどうにかなってしまいそうだ。
「あっあのね!シンジュはどこで寝るの?」
いまにも心臓が飛び出しそう・・・真っ赤な顔をしてローズが訊ねる。
「クスッ。なんですか?その顔は。いつもはもっとすごいことしているでしょう?」
シンジュは言いながらローズのいるベッドに滑り込む。
「そ・・・・そうだけど・・・シンジュからそんな事言われるなんて思っていなかったから・・・・一緒に寝てくれるの?」
「もう寝る体勢ですが。一緒に寝るの嫌ですか?嫌ならソファーで寝ますよ」
「一緒がいい!」
すばやい動きでベッドに潜り込む。腕枕をさせる事も忘れていない。
クスッ
即答なローズが面白くて仕方がない。
ホント素直なんですねあなたは。私とは正反対・・・・
「仕事をがんばったご褒美に一緒に寝てあげます」
ローズの頭を撫でながらそっと囁いた。
ローズは、シンジュが自分からこんな事してくれるのが初めてだったから、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。でも、と思う。折角一緒に寝てるのだし・・・・・と。
「シンジュぅ」
自然と甘い声がでてきてしまう。そのまま身体を少し起してシンジュにキスをする。拒まれない。
そのまま首元に顔を埋めて抱きつく。とても華奢な体・・・それでも男性で、私に快楽を与えてくれる人。
とても大好きな人・・・だからいつでも触れていたい。
一つになりたい
手が自然と下へと伸びていく・・・・
「ローズ・・・・今日は寝るだけですよ」
シンジュは、やれやれといった様子で言った。
「い・や。ご褒美にプラスして!」
ローズはすでにシンジュの中心を捕まえていた。それを手で刺激すると、すぐに膨張してきた。
「シンジュの体もいやっていっていないわ」
勝ち誇ったようにローズは言いながらシンジュを見上げた。
「貴方には敵いませんね」
シンジュが諦めモードに入ったのを見て、ローズはシンジュの服を脱がせていく。
勝負以外で肌を合わすのは初めてなのに、あまりにもあっさりと許しが出たのでローズは驚いていた。
だが、こんなチャンスはこれからまたあるとは限らない。
今を楽しまなくちゃ!それでいつかシンジュから誘ってくれるように頑張らないと。
シンジュの服を脱がせ終わり、自分も服を脱ぐ。シンジュはベットの上に寝たままだ。
いつもの様に主導権はローズが握る。シンジュの上に覆いかぶさりキスをする。
それが段々と激しくなると同時に、シンジュの大切な部分に手を伸ばす。
触れると同時にシンジュの体がビクッとなった。
「うふっ。シンジュかわいい」
言われた途端、シンジュの頬に朱が走り、そのままそっぽを向いてしまった。
そういうところがかわいくて仕方ないんじゃない。
そっぽを向いてしまったシンジュの顔を、やさしくこちらに向けさせてキスをすると、そのまま少しずつついばむ様なキスを下へ下へと降らせて行く。
その間にもきつく吸って自分の証を付ける事を忘れない。そして、目的の物に到達するとそこにもキス。
「ローズ・・・・」
その声にローズが顔を上げると、ほんのりと頬を染め目を潤ませたシンジュがこちらを見ていた。
「気持ちよくしてあげるわ」
そう言うと、ローズは、シンジュ自身を口に含む。
「んっ・・・」
少し刺激を与えると、シンジュは小さく声を出し、シーツを握り締めた。
そしてすぐに、シンジュ自身が口の中で主張をし始める。
ローズの口から音が発せられる度に、シンジュの興奮が高まっていく。
もしも、この音をワザと聞かせているのだったら・・・・
一瞬強く吸われてシンジュの思考が停止する。
「ん・・・・・そんな風にされたら・・・・もう・・・・」
途切れ途切れの声でそれだけ言う。
少しずつ波がシンジュを襲い始めたのを感じると、ローズはさらに動きを早くした。
「・・・ローズ・・・・も・・う・・・」
シンジュは無意識にローズの腕を掴むと一瞬体を強張らせ、そして数回体を震わせた後、くたりとベッドに体を預けた。
コクン
ローズの喉がなる。シンジュの放ったものを飲み込んだのだ。
けしておいしいものでは無いと聞いていたけれど、ローズにはおいしく感じる。
他の人のだったらそう感じないのかも・・・
「シンジュ・・・きもちよかった?」
そう聞いても、シンジュはそっぽを向いたまま何も言わない。
「もっと気持ちよくしてあげるから」
そう言って、シンジュの上に跨ると、しっとりと濡れた自分の秘所をシンジュの物に擦り付けた。
「・・・ローズは」
「ん?」
突然、シンジュが言葉を発する。
「ローズは策士ですね。私を興奮させるのがすごく・・・上手です・・・・」
そう言って、シンジュはローズを抱きしめた。
ローズは一瞬びっくりしたが、すぐに、うっとりと目を瞑って呟く。
「策士かどうかはわからないけれど、振り向いて貰う為に必死だもの」
「そうですね」
ローズの寝言を思い出し、自然と口元が緩んでくる。
ローズが直球で気持ちをぶつけてくるから気付かない訳がない。ただ、自分の気持ちが良くわからない。
ローズとの事は、何もかもが初めての経験だから。
「早く私とつきあっちゃえばいいんだわ!」
ぷくぅっと頬を膨らましてローズはぶっきらぼうに言った。
「それはいやです」
すかさず即答。
「でも・・・・興味深い」
「シンジュ・・・?」
・・・・それって・・・少しは期待してもいいのかな?
真意を聞き出そうとローズが口を開きかけた途端、ローズの世界がくるりと回り、シンジュの長い髪が、彼女を世界から覆い隠すようにローズの両端に降り注いた。
シンジュがローズを胸に抱いたまま、半回転したのだった。一瞬で、2人の立場が逆になる。
「いつもして頂くばかりでは悪いですので・・・・」
シンジュは真っ赤になりながらボソリと呟いた。
「え?」
今の展開に頭がついていかないローズは眼を瞬くだけだ。
「こういう事です」
シンジュがローズにキスをした。最初は遠慮がちに、そして段々と激しく・・・
2人の唇が離れると、離れるのが惜しいとばかりに銀色の糸が2人を?いでいた。
「シンジュぅ」
あまりに嬉しくて、ローズはシンジュの首に腕を回して抱きついた。涙が自然と頬を伝う。
「あなたは、泣き虫ですね」
ローズの涙を指でぬぐって、髪をやさしく撫でた。
「・・・あなたの前だけよ」
ローズはそう言いながら、未だ涙目のままシンジュの唇に唇を寄せた。
甘いキスを交わすと、シンジュの唇はローズの2つの膨らみへと吸寄せられて行く。
ローズがするように、頂にある小さな果実を口に含む。
「あぁ・・・ん」
甘い声をだす。シンジュは硬くなった小さな果実を舌で堪能しながら空いてる右手をもう片方の膨らみへと伸ばす。
2人は肌を合わせているといっても、いつもローズの一方通行の為ローズは、シンジュに触れられるという経験がなかった。
「ダ・・・メぇ・・・体がビクってなっちゃうの」
ローズは、シンジュのの背中に腕を回して、体の奥から湧き上がってくる感覚に必死で耐えていた。
「まだまだですよ」
口はそのままで、右手をローズの秘所へと移動させる。茂みに触れるとローズの体がビクンと跳ねた。
茂みに指を滑り込ませると、そこはすでに十分濡れていた。
雫を指でそっとすくい、小さな蕾に与える。
それを、繰り返しているうちに、ローズの体は落ち着きを無くし、声色は更に甘さを増やした。
次の段階へ進むべくシンジュは、ローズの果実を堪能していた口を、白いお腹、形のいいお臍と段々と下げていく。
小さな丘にある茂みには、軽く唇で触れただけで、すぐ太ももに移動して数箇所に赤い花を咲かす。
「シ・・ンジュぅ」
ローズが、切なげな声を出してこちらを見ていた。
「そんな目で見ないで下さい。意地悪をしている訳ではないのですから」
「うぅ・・」
本当は、いつも意地悪されている為に、少し焦らしてみようと思ったのだけれど・・・・。
そんな声を出されたら、ただでさえ熱くなっている体が更に熱さを増してしまいそうだ。
シンジュは、ローズの期待に沿えるべく、太ももから茂みの中に隠れている小さな蕾に口づける。
途端にローズは声をあげた。
シンジュは、そのまま舌でやさしくやさしく刺激を与えた。
・・・・私がこんな事をする日がくるなんて・・・・。
ローズの甘い声を聞きながら、シンジュはそんな事を考えていた。
それもそのはず、シンジュはこの行為自体、忌み嫌っていた。
長年生きているのもあり、普通にこの行為で何をするのか、どうしたら喜ばれるのかは知っていたし、メノウ様やコハクから愛についてのノロケ話など散々聞かされていたから。
しかし、分裂する事で自分と同等の力を持つ子孫を残す事の出来る高精霊にとって、他者と交わり自分の混ざり物を作るという事が不快で仕方がないのだ。ましてや、自分より弱い者となど考えたくもない。
なのに・・・自分から進んで彼女に快楽を与えようとしている。
このままいけばどうなるのかなんて、頭では分かっているのに・・・。
分かっているのですよ・・・。
それなのに・・・・。
彼女の奏でる歌声に惹かれてしまったのか、彼女から発せられる自然の香水に酔ってしまったのか・・・・。
今のシンジュにはどうでもよかった。
「あ・・・ぅん」
ローズの口から吐息が漏れる度に、泉から湧き水が溢れ出してくる。
その水を堪能しようと口を近づけると、彼女の香りがさらに強く香る。
泉にそっと口をつけて、ゆっくりと舌で味わう。
味わっても味わっても枯れる事のない湧き水だけれど、もっと欲しくなって動きが早くなってしまう。
それと同時にローズの呼吸が浅くなっていき、体の動きも艶かしさが増していく。
「あっ・・あっ・・・シン・・ジュぅ・・いっちゃ・・・よぅ」
そして、ローズの体が今まで以上にビクッと撓った。
シンジュは、泉から顔を上げローズを見上げた。
胸を上下に揺らしている彼女の唇が、月の光に照らされて艶かしく輝いていた。その唇に吸い寄せられるように、キスをする。
「んっ・・・」
「シンジュ・・・おねがい・・・・ほしいの・・」
いつも主導権を握っているローズにとって、このお願いは顔が火事になるかもというくらい恥ずかしかった。
そんなローズの姿が、シンジュの悪戯心をくすぐる。
「もう降参ですか?」
「うぅ〜。今日のシンジュいじわるだわ」
「あなたの真似ですよ」
シンジュは余裕の表情で答える。
「おぼえていなさい!」
ローズはシンジュを睨むが、シンジュがとてもとても優しく微笑んだから憎らしさはすぐに消えてしまい、そのままシンジュの背中へと両腕をまわした。
それが合図となり、ゆっくりとシンジュがローズの内へと潜入した。
普段は静寂な闇の中、ベッドの軋む音と、艶かしい声と、2人の息遣いが音を紡ぎだしていた。
「あっ・・・あ・・・んんっ・・・」
シンジュの動きに合わせて、ローズの口から声が溢れる。
少しでも気を許したら果ててしまいそうな程、ローズの中は熱を持ち締め付け、シンジュを快楽へと導く。
シンジュは、ローズの両足を肩に乗せ、さらに深いところまで潜入させ攻めたてた。
「もっと・・・感じてください・・・」
・・・私の事を・・・
波の様に揺らめく快楽に身を委ねていて、自分を見ていないローズの顔をこちらに向けさせて囁く。
ローズが、うっすらと涙を浮かべた瞳でこちらを見上げた。
「シンジュ・・・・大好き」
ローズは、シンジュの首に優しく腕をまわして答えた。
「もっと・・・見せてください・・・」
誰も知らないあなたを・・・・
「ああっっ」
途端に、シンジュが激しく攻めた。
ローズの声が、段々と声にならなくなっていく。
もっとローズを見ていたい。そう思って必死で耐えていたシンジュももう限界だった。
「・・・す・・みません・・・も・・う・・」
「や・・・あ・・も・だめっ・・・」
ローズが言葉を発した瞬間、ローズの体が大きく震えると、シンジュを強く強く締め付けた。
その直後、ローズは自分の中に熱いものが流れ込んでくるのを感じた。
「はぁ・・・」
シンジュが大きく息を吐くと、ローズの上に倒れ込んだ・・・・。
心地良い疲れの中、ローズはシンジュの腕の中にいたのだが、シンジュと目が合うと、一瞬で頬が赤くなりそっぽを向いてしまった。
「どうしたのですか?」
不思議そうにシンジュが訊ねた。
「は・・・恥ずかしいの・・・シンジュがいつもと・・・ちがうから・・」
注意しないと聞き取れない程の小さな声でローズは答えた。
「こういう時があってもいいでしょう?」
悪戯っ子のような顔でシンジュは答えた。こんなにも表情の変わるシンジュを見た事がなくて、ローズはドキドキが止まらない。
「それよりも、明日・・・というより今日ですが、用事があるのですよね?早く寝ないと時間がなくなってしまいますよ」
そう言いながら、シンジュはローズの髪をやさしく撫でた。
もっとこの時間を堪能したいと思っていたローズだったが、シンジュの手がとても気持ちよくて、すぐに意識を手放した。
シンジュは、ローズが眠りについたのを見て、自然と笑みがこぼれた。
・・・自分にこんな一面があったなんて・・・・。
こんなにも、一人の人間を知りたいと思ったことはなかった。ましてや、契約者以外の人間・・・・。
今までの自分では考えられない事だった。
「あなたと出会ってから、自分の事がよく分からなくなってしまいました」
聞いていないと分かっていて、ローズに語りかけた。
「今まで思っていた事と、今が違いすぎるから戸惑う・・・」
自分は精霊で、人間と恋に落ちるとかそういう事はありえなくて・・・・。
人間は、人間同士で恋に落ちればいいと思っていたし・・・・。
なのに・・・・。
「あなたと過ごす時間が楽しくて・・・」
私の所ではなく、違う人の所へいってしまっているという事実が面白くなくて、その気持ちをローズにぶつけてしまった・・・。
付き合わないと言っておきながら、「身勝手ですね・・・私・・」
あなたを放したくないみたいです。
ローズを抱く腕に力を込めると、無意識に彼女が擦り寄ってきた。
その額にキスを落とすと、シンジュも眠りについた。
チュンチュン・・・
小鳥のさえずりが聞こえる。起きないと・・・ローズは頭の片隅でそう思った。
しかし、暖かくて、気持ちいいこの時間を、もう少し堪能していたかった。
それでも今日は用事があるのだと思い出し、しぶしぶ瞼を持ち上げた。
その目に飛び込んできたのは、眩しい光と大好きな大好きな彼の顔。
ドクンッと心臓が飛び跳ねる。
一瞬状況が把握出来なかったけれど、昨日は一晩一緒に過ごしたんだと思い出し、頬が熱くなる。
少し冷静になってシンジュの寝顔を見る。太陽の光に照らされて、白い髪がキラキラと輝いていた。
整った顔立ち。すべてに目を奪われてしまう。
無性にキスをしたくなり触れるだけのキスをした。
「んっ・・・」
シンジュが目を開いたから、ローズは慌てて体を離した。
「お・・・おはよっ」
真っ赤な顔をして、バツが悪そうにローズは慌てて言った。
そんなローズが可笑しくて、クスッっと笑いながらシンジュも朝の挨拶を返した。
「・・・今何時ですか?朝にしては、日が高いようですが」
シンジュは窓の外を見上げて言った。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
時間は昼を少し過ぎていた。ローズはベッドを飛び出すと、慌てて服を着始めた。
「寝癖を直してから出かけるのですよ」
可愛らしくはねている髪を指してシンジュが言った。
「あ〜〜〜ん。時間がないのに!!夕方には戻るから、ちゃんと待っててよね!」
ローズがシンジュに念を押した。
「はいはい。待っていますよ」
その答えを聞きけて満足すると、ローズは小走りに部屋を出て行った。
ローズが出て行った後、残されたシンジュの心は軽かった。昨日とは比べ物にならないくらいに。
疑うまでもなくローズは自分の所に戻ってくるのだから。
彼女の香りが残っているベッドにもう一度潜り込むと、静かに目を閉じた。
その頃、ローズは着替えと寝癖を直す為に自室へ戻っていた。
髪を湿らせ鏡の前へ移動したローズは、鏡を見た途端・・・・硬直した。首筋に一つ、赤い印がついていたのだ。
いつの間に・・・・。手を当てると、胸が甘く疼いた。自然と笑みがこぼれてしまう。
シンジュの変化。それがすごく嬉しかった。
今すぐにでも会いたい!
その気持ちをぐっと抑えて、ローズは出かける準備を進めた。
夕刻、シンジュは窓際でお茶をたしなんでいた。ローズが自分の元へ来るとわかってはいても、やはり昨日会っていた男性の正体が気になっていた。
・・・あんなに親しげに・・・笑っていた・・・。
考えれば考えるほど深みにはまっていきそうで、断ち切るように一気にお茶を飲み干した。
コンコンッ
「シンジュ〜。入るわよ」
その声にドキンッと心臓が飛び跳ねた。ローズが戻ってきたのだ。扉が開いて甘い香りと共にローズが部屋に入ってきた。
最初、目に付いたのは大きなバスケット。次に目に入ったのは、首に巻いてある白いスカーフ。
「おかえりなさいローズ。そのスカーフお洒落ですね」
平然を装って挨拶をする。確信犯なのに、ローズの反応を見たくて聞いてみた。
「もうっ!知っててそういうこと言うの!あと少し上だったら、メイド服から見えちゃうじゃない!」
ローズは、バスケットをテーブルに置くとシンジュに歩み寄りながら、少し怒りのこもったった声音で答えた。
「バレましたか」
その反応に満足して素直に認めるが、顔が笑っているシンジュに反省の色はない。ローズはため息をついた。
「もしかして・・・狙ったの?」
すぐにいつもの悪戯っ子の顔に戻り、シンジュの頬を軽く抓ると、首にふわりと腕を回して抱きついた。
「今度はもっと下につけてよね」
耳元で囁くと、軽く触れるだけのキスをした。シンジュの胸がじんわりと疼き、抱き締めたい衝動に駆られる・・・・。思った時にはすでにローズを抱き締めていた。
「今日は・・・どこへいっていたのですか?」
ローズはシンジュの突然の行動にびっくりして動きを止めたままだったが、シンジュは気にするでもなくローズの肩に顔を埋めながら昨日からの気になって仕方がなかった事を口にした。
ローズの気持ちは知っていたのだけれど・・・気持ちを抑えられなかった。
言葉に出してしまうと、もしかしたらという不安が頭をよぎり気持ちが重くなる。
しかし、シンジュとは対照的にローズの声は明るかった。
「シンジュには秘密にしていたんだけど・・・・」
そう言うと、ローズはシンジュの腕からするりと抜けるとバスケットを片手に戻ってきた。
シンジュは、『秘密』という言葉に不安を覚えたが、ローズは笑顔でバスケットをシンジュに渡した。
「中見てくれる?」
ローズは早く見てくれとシンジュを急かした。
「これは・・・」
バスケットの中に入っていたのは、甘い匂いのする焼き菓子と、藍色の小鉢に植えられた3本の小さな小さなサツキだった。ところどころ葉に穴があいているのが痛々しい。
「この前一緒に行った盆栽展で、入選してた白とピンクの花のついた木がすごくかわいくて気になってたのね。そしたら出展者がお城の庭師さんだったから、枝をわけてもらって育ててたの。そしたら虫に食べられちゃったり枯れかけたりして・・・・。結局根がしっかりするまで預けてたの・・・」
もう少し早くシンジュに見せようと思っていたのだけど・・・・と、恥ずかしそうにローズは言った。
「そうだったのですか」
今までの悩みはなんだったのだろうかとシンジュは自分が可笑しくて笑みがこぼれた。
「でもねローズ。私は、盆栽を見るだけが趣味ではありませんよ。また枯れたりしたら可哀相ですし・・・。
これは私が預かります。ローズは時間がある時にでも見にきてください」
「え〜〜〜!」
ローズは抗議したが、シンジュの頑固な姿勢に結局は折れた。
「私の負けね・・・。わかりました!枯らしたら承知しないからね!」
「私が枯らしたりする事はありません」
きっぱりとシンジュは言った。
「じゃあ。いつもの勝負しよ!この勝負は絶対負けないからね!」
「私も負けませんよ」
ローズの持ってきた焼き菓子とお茶を用意すると、2人の間に火花が散った。
今回の勝負の行方はどうなるのか・・・・。
私も策士ですね。
シンジュは静かに微笑んだ。
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