「・・・お兄ちゃんいないと静か・・・」
一人残されたヒスイ。リビングがとても広く感じた。
コハクとヒスイはいつも一緒に行動する。
そのため留守番などしたことがなかった。
(・・・トパーズのとこいこ。たぶんまだ寝てると思うけど・・・)
トパーズは朝に弱い。
徹夜明けでなければ、起きてくるのは昼過ぎだった。
ヒスイはそっとトパーズの部屋に入った。
トパーズは案の定熟睡している。
(うわぁ・・・こうして見るとトパーズもお兄ちゃんに似てる・・・カッコイイ・・・)
頬を突いてみる。でも起きない。
ヒスイはじっとトパーズを見つめた。
(私と同じ銀の髪・・・モルダバイトでは目立ってばかりで嫌だったけど・・・ひとりじゃないと思うとなんか嬉しいな・・・)
トパーズの寝顔につられてヒスイもウトウトし始めた。
ベッドに突っ伏して半分夢の中・・・
コン。コン。
玄関の扉を叩く音が聞こえて、ヒスイは目を覚ました。
(・・・お客さん?)
「は〜い。只今〜」
コハクを真似て返事をし、玄関へ向かう。
「こんにちわァ!」
扉を少し開けると、眼鏡を掛けた東洋風の女が見えた。
グラマラスビューティ。
肩までの黒髪を軽く巻いて、ロングのチャイナドレスを着ている。
(わ・・・頭良さそうなヒト・・・)
ヒスイは扉を開き、女を見上げた。
シトリン以上に背が高い・・・が、明るく聡明で愛想のいい女だった。
「お母様ですカ?わたくしサファイアと申しマス。トパーズと同じ研究室に在籍しておりまシテ。あの、彼、いらっしゃいまス?」
「・・・ちょっと待って」
「はい〜v」
ヒスイは急いで階段を駆け上がり、再びトパーズの部屋に入った。
「トパーズ。起きて。お客さんよ」
「・・・・・・」
ヒスイがトパーズの体を揺らす。
「ほら!早く起きて!玄関で待ってるんだから!」
「・・・・・・」
「サファイアっていう女の子だよ!」
「・・・サファイア?」
やっとトパーズの声が返ってきた。
が、目をつぶったまま起き上がる気配はない。
「・・・眼鏡よこせ」
ベッドからトパーズが手を伸ばす。
「眼鏡?」
「・・・机の上に・・・」
「ああ、これね」
ヒスイは近くの机から眼鏡を取って手渡した。
「そんなに目悪いの?勉強のし過ぎなんじゃない?」
「・・・・・・」
眼鏡を掛けたトパーズが気怠そうに起き上がった。
上半身裸。髪には微妙に寝癖がついている。
「・・・連れてこい」
うっとうしそうに髪を掻き上げ、ヒスイに命じる。
「うん。わかった」
(あの子誰なんだろ。気になる・・・私が“母親”ってどうしてすぐわかったのかな?トパーズとどういう関係??)
「・・・堂々と玄関から来るとはな」
トパーズはサファイアを眼鏡越しに睨んだ。
「フフッ。なかなか楽しかったですヨ〜。可愛らしいお母様にお出迎えしていただイテ」
サファイアは軽く眼鏡に指をかけ、知的な微笑みを浮かべた。
「・・・何か用件が?」
「イエ。イエ。様子を見に来ただけデス。寝返られては困るノデ♪」
「・・・20歳になるまで何も起きない。見張るのは勝手だが、オレの前に姿を見せるな・・・失せろ」
「クス。クス。その時を楽しみにしていますヨ・・・」
バサリ・・・とサファイヤの背中から漆黒の翼が現れた。
今度は腕を組んで妖しく微笑む。180℃雰囲気が変わった。
「ア!万が一の時はどちらをお選びデ?金ですカ?銀ですカ?もうお決めになりまシタ?」
「・・・銀だ」
「了解しまシタ♪では運命の日にまたお会いしまショウ」
「トパーズ?あれ?あの子は・・・」
2階からリビングに下りてきたトパーズを少し驚いた顔でヒスイが迎えた。
「帰った」
「え?もう?」
「・・・朝メシ」
べったりとヒスイにくっついてガブリ。
「ね、ねえ、トパーズ。今の・・・彼女?」
「・・・そう」
「へ、へぇ〜っ・・・・トパーズも年頃の男の子だもん、彼女がいたって当たり前だよネ!ウン!」
なぜか動揺・・・ヒスイは裏返った声でそう口にした。
「・・・アイツは?」
「お兄ちゃん?シトリンと出かけたよ。帰り遅くなるって」
「・・・・・・」
「トパーズ?」
「・・・シトリン・・・初めて役に立ったな・・・」
「え?何か言った?」
「・・・いや。何でもない」
「あ・・・」
トパーズの手に胸を揉まれる。吸血中は大抵そうだった。
(癖なのかな、コレ。彼女がいるんなら別にめずらしくもないだろうけど・・・あの子すごい胸だったし・・・ハッ!まさか!彼女と比べてる!?)
ヒスイらしくそんなことを暢気に考えている瞬間だった。
ガシャン!
(え・・・?ガシャン??)
聞き慣れない音がして手首に違和感。続けてもう一度同じ音がした。
「え・・・?ええっ!?」
手錠だった。
「・・・さて。どうしてやろうか」
唇を血に染めたまま、にやりとトパーズが笑った。
「煮て食うか、焼いて食うか」
「ト・・・パーズ?何言って・・・」
「オレがただ遊びに来ただけだと思うか?」
「え?え?」
「・・・欲しいものがあってな。いただくぞ」
その場でヒスイを押し倒す。
「ちょっとっ!?やめ・・・っ!」
ヒスイは両手を封じられながらも必死で抵抗したが、力でトパーズに敵うはずもなく、あっさり服を脱がされた。そして・・・
ぷすっ!
(え?ぷすっ?)
同時にちくりと痛みが走る。
「ええっ!!?ちょっとぉ〜・・・」
見るとお尻に注射器が刺さっていた。
「何これ・・・体が痺れて・・・」
「痺れる?量を間違えたか・・・まぁ、すぐに気持ちよくなる・・・死ぬほど・・・な」
ずるりとヒスイの体から力が抜けた。
(何でこんなことに・・・前から意地悪なところはあったけど、優しいところだってちゃんと・・・あったのに・・・冗談?本気??)
「何・・・考えてるの・・・?」
「何も考えていない。強いて言うなら・・・犯ることだ」
「!!!!」
全身冷や汗。心底血の引く思いがした。
「私を誰だと思ってるの!?」
「・・・母親とでも言いたいのか?笑わせるな。親子ごっこに付きあってやっただけだ」
ヒスイの耳を噛んでトパーズが冷たく笑う。
「そ・・・んな・・・」
(“母親”だって思ってたのは私だけ・・・なの・・・)
「数える程しか顔を合わせたことのない女を母親と思えるか。馬鹿め。自業自得だ」
(!!自業自得!?自分で育てなかったから?オニキスに預けたこと怒ってるの??その復讐なの??)
自分が置かれている状況も忘れて、ぐるぐると想いが巡る。
そうしている間に乳首は吸われ、思いっきり開脚させられる。
「・・・っ・・・・」
薬が効きすぎて感覚はない。羞恥心だけが高まっていく。
「まっ・・・待ってっ!」
落ち込んでいる暇などないことに気付いたヒスイが待ったをかける。
「くっ・・・口でするんじゃだめ!?」
(私っ!息子に何言ってるのぉ〜!!?)
こんな時でも自分へのツッコミは忘れない。
「上手いよ!私!絶対気持ちいいから!ねっ?」
恥ずかしい売り込み・・・
(とにかくお兄ちゃんが帰ってくるまで時間を稼がないと・・・)
「・・・面白い。やってみろ」
這い蹲って出されたものを口に含む。
ぴちゃ。ぴちゃ。
ヒスイはわざと淫らな音をたてて舐めた。
(これで一回出しちゃえば少しは落ち着くはず・・・頑張らなきゃ・・・)
ぺろり。ちぅ〜っ。
(・・・・・・)
はむ。はむ。ぺろ。ぺろ。
(・・・・・)
はぁっ。
(なんだかもう・・・訳わかんなくなってきた・・・)
しっかりと口に咥えてトパーズを見上げる。
(イカない・・・お兄ちゃんもなかなかだけど・・・それ以上かも・・・しかも何!?その白けた顔!!)
トパーズの視線は窓の外だ。
(お兄ちゃんは、気持ちいいって頭撫でてくれるのに!!)
長年培ってきた自信が揺らぐ。
(思いっきり噛んでやりたいわ・・・でもソレが元で不能になったりしたら将来に支障が・・・)
「うっ・・・んっ・・・」
いよいよ薬の効き目が現れてきた。
奇妙な快感に襲われヒスイの動きが止まる。
「ぅ・・・くっ・・・」
自分の意志とは裏腹に愛液が太股を伝って落ちた。
「オレより先にお前が気持ちよくなってどうする?」
トパーズが上からヒスイのお尻を噛んだ。
必要以上にビクリと体が反応する・・・
「あっ・・・やっ・・・」
「くく・・・いいザマだ」
「や・・・めて」
床に押しつけられる・・・思うように体が動かない。
背中を指でなぞられただけでどうにもならない快感と罪深い液体が体の中心部から湧き出してくる。
(逃げなきゃ・・・動いて・・・私のカラダっ!!)
「もう薬が全身に回ってるはずだ。抵抗するだけ無駄だと思うが?」
らしからぬ一瞬の油断。そこにヒスイの脚が伸びる。
「!?」
反射的に身をかわす・・・が、微妙に反応が遅れ、ヒスイの踵が顔を掠めた。
その結果・・・眼鏡が飛んだ。
「!!!!?」
(紅い・・・瞳!?)
「嘘・・・でしょ・・・?」
トパーズの瞳を見たヒスイの表情が凍結する。
「・・・・・・」
トパーズは何も言わずに瞳を伏せた。
そのまま表情一つ変えず、床で伸びているヒスイの体に覆い被さり。
完全に無抵抗となったヒスイの腰に手をかけ、角度をつけた。
「・・・いいか?これはセックスじゃない。“実験”だ。アイツの顔でも思い浮かべてしっかり付き合ってくれよ?」
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