「え?目隠し?」
「うん。久しぶりにやってみない?」
一応疑問形でお伺いを立てるが、もとより返事を待つ気はない。
コハクは目隠し用の布をヒスイの目元に巻きつけた。
んふふ・・・
アヤシイ含み笑いが止まらない。
慣れた手つきで服を脱がせ、ベッドで脚を開かせる。
コハクも服を脱いでヒスイの股の間に体を入れた。
「ヒ〜ス〜イちゃん」
ツツツ・・・と指先で胸の谷間から臍までなぞる。
「あんっ・・・!!」
次はどこを触られるのかわからない。
コハクは少し強めにヒスイの乳首を摘んだ。
「やぁ・・・んっ!」
抗う術のない興奮に愛液がどっと溢れ出す。
「・・・綺麗だよ。もっと見せて」
「あっ・・・やっ・・・」
恥じらうヒスイが脚を閉じようとしても、許さない。
ヒスイの両脚を手で押さえて無理矢理中まで覗き込む。
「ああ、よく見える。もうぐちゃぐちゃになってるよ、ヒスイのココ」
言葉で攻めながら割れ目に息を吹きかける。
「あぁ・・・ぅっ!」
ヒスイは体を仰け反らせた。
「じゃあ、次はこうしちゃおうかな〜」
コハクは楽しそうにクスクスと笑ってヒスイの細い足首を掴んだ。
「!?おにいちゃ・・・あんっ!」
指を舐める。丁寧に丹念に。付け根から爪の先まで。
「こうされると感じちゃうんだよね、ヒスイは」
足の裏に舌を這わせてニヤリ。とにかく顔がエロい。
「あぅ・・・ん・・・」
「ほら、気持ちいいでしょ?いっぱい出てきた」
「や・・・そんなにみないで・・・あ・・・」
割れ目に指先が埋め込まれ。
「あぁ・・・っ!!」
ヒスイの中へ――コハクの指がツルリと滑り込んできた。
「んっ!んん・・・っ」
ちゅくっ。にゅるっ。
「ヒスイ。ココに何が入っているか言ってごらん?」
コハクが耳元で囁く。
「はぁっ・・・おにいちゃんの・・・なかゆびと・・・ひとさしゆび」
「そうそう。いい子だね」
髪を撫でられると、ヒスイは照れながらも嬉しそうに笑った。
「次はお待ちかねのコレね」
ズズッ・・・と、いつもの場所にいつものモノが差し込まれる。
「はぁ・・・ん」
視覚を遮断されているためか触覚に神経が集中する。
「うぅ・・・っ!!あ!!」
ヒスイは淫らに喘いで合体を悦んだ。
「ご褒美・・・いっぱいあげる」
コハクが腰を激しく動かしてきた。
「あっ!はぁっ!うっ!うぅんっ!!」
コハクのリズムに合わせてヒスイ自ら腰を振って応える。
膨らむ快感。弾ける寸前。ヒスイが甘えた声を出す。
「あぁ・・・ん・・・おにい・・・ちゃ・・・きもち・・・い」
その瞬間に・・・ガブリ。
首筋を噛まれた。
「!!?」
覚えのある痛みに体が硬直。快感も途切れた。
(このパターンはまさか・・・)
「くくく・・・馬鹿め」
聞こえるのは、トパーズの声。
「誰が“お兄ちゃん”だ?目隠し外してみろ」
(嘘っ!お兄ちゃんのアレと間違えるはずが・・・)
ヒスイは恐る恐る目隠しを外した。
眩しい視界に入ってきたのは冷笑を浮かべる銀髪の少年。
「ト・・・トパーズ!!!?」
がばっ!!
はぁっ。はぁっ。
(私ってば・・・なんて夢を・・・)
ヒスイは額の汗を拭った。
(やっぱりトラウマになってるのかな・・・それにしたってお兄ちゃんと混同するなんて・・・)
夢とはいえ罪悪感を覚えてしまう。
「ヒスイ?どうしたの?あれ?濡れてる?」
コハクはすぐに気付いた。
愛し合った後はいつも裸で抱き合って眠る。
ヒスイの漏れだした愛液はねっとりとコハクの肌を湿らせていた。
かぁぁぁっ・・・
頬が真っ赤に染まる。
「う〜ん・・・どれどれ」
コハクが指で確認。
トロリと柔らかい粘液が指先を包んだ。
「くすっ。えっちな夢みたの?」
かぁっ・・・
図星を指され更に赤面。
「もう一回する?」
「ん・・・」
欲望が真の快感を求める・・・愛液が止まらない。
コハクに助けを乞うしかなかった。
「あぅうん!んっ!はぁ・・・っ!」
コハクの愛撫にヒスイが体をしならせる。
(感度がいいな・・・もうイク寸前なのかも・・・)
どこに触れても過敏に反応する。
「うっ・・・!あぅ・・・っ!」
じたばたと悶える姿も可愛い。
美しく紅潮する上半身とは裏腹に下半身はダラダラと涎を垂らしてコハクを待っているのだ。
何とも愛しいギャップだ。
「ちょっと早いけど、入れようか」
「ん・・・」
ちゅっ。
キスをして挿入開始。
ペニスの先がチョンと軽く入口に触れた。
「!!あんっ・・・!」
コハクの下で、ヒスイの体がビクンと跳ねる・・・
「ん?イッちゃったかな?」
「っ・・・!!はぁはぁ・・・」
ヒスイは涙目だった。
「ごめんね・・・おにいちゃん・・・ぜんぜん・・・なのに・・・」
「いいよ。夜はまだ長いから――」
コハクは優しく微笑んでヒスイの体を抱き締めた。
(ヒスイがここまで興奮するなんて・・・一体どんな夢をみたんだ!?)
「ヒスイ、血」
ずば抜けて高い交渉能力を持つトパーズは特例で単独行動が認められた。
一言で悪魔を祓えると評判になり、今や一番の稼ぎ頭だ。
「おかえり。いいよ、飲んで」
笑顔でヒスイが迎える。
トパーズは眼鏡を外してヒスイに噛みついた。
「美味しい?」
「・・・普通」
毎回同じやりとり。
寮生活も一ヶ月を過ぎた。
ヒスイの血を飲み続けているうちに煙草の本数は減り、今では気が向いた時に吸う程度だ。
「・・・彼女がいるって聞いたけど?そちらから血はいただかないのかな?」
トパーズはヒスイにべったり・・・かなり気にくわない。
コハクは何かにつけて文句を言った。
「アレは単なる情報提供者だ。傍におく女はヒスイだけでいい」
「生憎だけどヒスイは僕のものだから。いつまでも君に貸してはおけない」
「・・・今日こそ引導を渡してやる。アンタの時代は終わりだ」
トパーズが先に喧嘩を売った。
「ははは!悲劇のプリンスなんてベタすぎて笑っちゃうね!君の時代は永久にこない」
売られた喧嘩は当然買う。コハクは大声で笑い飛ばした後、睨みを利かせた。
「・・・表へ出ろ。軽く揉んでやる」
「上等だ」
エクソシスト訓練場。
「おっ!今日もやるみたいだぜ!」
コハクとトパーズの対決の場に人だかりができる。
「今日はどっちに賭ける?」
「トパーズだろ」
「いや、コハクだな」
「絶対トパーズ!」
「コハクが勝つ!」
わいわいがやがやとギャラリーが盛り上がる。
「・・・・・・」
(どうして二人とも目立つことばっかりするのよっ!!恥ずかしいからやめてって言ってるのにっ!!)
ヒスイは物陰から遠巻きに見ていた。
コハクとトパーズの親子喧嘩は寮内でも有名だった。
人目も憚らず喧嘩を繰り返しているうちにいつしか博打のネタにされていた。
「すっかり恒例だね」
「セレ・・・ごめん。二人とも血の気が多くて・・・」
セレ・・・正式名セレナイト。エクソシストの総帥を務める男だ。
大柄の割には優雅な物腰。鼻筋の通った品の良い顔立ちをしているが、額に十字の焼き印がある。
ヒスイとは旧知の仲だった。
「お陰でここもすっかり賑やかになった。寮内も活気に満ちている。良い傾向だ。私は君達を心から歓迎するよ」
深い声が響く。
「ちなみに私はコハクに賭けた」
「ええっ!?セレまでっ!?」
「はは・・・長年の付き合いのよしみでね」
「もうっ・・・」
セレに頭を撫でられながら、ヒスイは懲りない二人を見守った。
そして――
“その時”は、突然やってきた。
お兄ちゃんも私もトパーズの瞳が紅いことを忘れていたわけじゃなかった。
だけど、皆で力を合わせれば、滅びの運命なんてたやすく回避できると信じて疑わなかった。
いつもの調子で暢気に構えすぎたのだと思う。
都合のいいことばかり考えて“最悪の可能性”を無視して。
目の前でトパーズの体が灰になる瞬間まで。
私達は・・・本当に親失格だ。
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