ヒスイと父ちゃんは今夜もえっちしてる。

騎上位というやつで。
大抵いつもヒスイが上。

そうじゃないと、父ちゃんがスピネルに吹き飛ばされちゃうから。
何で父ちゃんの邪魔をするのか。
理由をいくら聞いてもスピネルは答えてくれないし。
兄弟なのに、素っ気なくて、ちょっと寂しい。



ふあぁ~・・・っ。



ジストの大あくび。
両親のえっちを覗くと完全に寝不足。
わかっていても、やめられない。
(だってヒスイ、全然違うんだもん)



昼のヒスイと夜のヒスイ。



昼間は子供達と変わらない生活をしているヒスイも、夜はしっかり女の役目を果たしている。
そのギャップにワクワクしてしまうのだ。


反って乱れる銀の髪。

月光に透ける白い肌。

喘ぐ声も息づかいも。

すごく綺麗で。ドキドキする。


“変態”の血は、可愛らしい姿をした少年にもしっかりと受け継がれていた。



三日月が輝く夜。

イキ疲れて、眠ってしまったヒスイの傍ら。
コハクが髪を撫でて、額にキスを繰り返す。
当然、ジストが覗いていることは知っている。
見慣れた菫色の瞳が微かなドアの隙間からチラチラ・・・


「!?」


(やばっ!今、父ちゃんと目が合っちゃった・・・ような)
同じ菫色の瞳がこっちを見ている。
とにかく退散。逃げるのみ。ジストはソロソロと後ろに下がった。
「ジスト」
コハクに名前を呼ばれて、跳ね上がる心臓。
(うわぁっ!怒られるっ!!)
「おいで」
ベッドの上から、コハクが笑顔で手招き。
しかしコハクの場合、笑っているから怒っていないという訳ではない。
むしろ怒っている時のほうが笑顔・・・その恐ろしさはよく知っている。
(あぁ~・・・おしおきされちゃうよぅ~)
ジストは、恐る恐る夫婦の寝室へ足を踏み入れた。


・・・が。


「あれ?怒んないの?」
コハクは笑顔のまま、ベッド脇に立つジストを見つめていた。
「・・・ヒスイ、綺麗でしょ?」
「うんっ!照れてる顔が最高に綺麗で、可愛いっ!」
勢いに任せて滑りまくる口。
「将来が楽しみだ」
素直で正直なジスト。そして、確実にエロ。
コハクから笑い声が洩れる。
「?父ちゃん??」
「くすっ。こっち来る?」
「えっ!?いいの!?」
コハクの許しを得て、ダブルベッドにジストが潜り込む。
(あ・・・ヒスイと父ちゃんの匂いがする・・・)
安心感が満たされる、大好きな両親の匂い。
コハクとヒスイの間で、有頂天。夢心地。


右を見ればコハクの笑顔。

左を見ればヒスイの寝顔。


どっちも見ていたくて、ソワソワと落ち着かない。
「もっとヒスイにくっついてもいいよ」
「でも、怒られないかな・・・」
「大丈夫だよ。した後は起きないから」
「うんっ!」
ピタッ。コハク公認のスキンシップ。
ヒスイの素肌に触れると、温もりが直に伝わってきた。
懐かしい鼓動に眠気が誘われる。
「・・・君のお母さんだよ」
更にコハクが頭を撫でて夢の世界へ送り出す。
「オレ・・・ヒスイだいすきだけど、父ちゃんもだいす・・・き」

くぅ~・・・。

ジストは幸せいっぱいの笑顔で眠りに落ちた。
「・・・ありがとう」
(ホントは“父ちゃん”じゃなくて“じいちゃん”なんだけど)




いつか、真実を知る時が来るだろう。




それでも君は、変わらず僕を“父ちゃん”と呼んでくれるかな。





翌朝。

「ん~・・・おにいちゃん~・・・」
目を擦りながらヒスイが起き上がる。

すぴ~っ・・・

「・・・え?ジスト?」
ベッドにコハクの姿はなく、代わりに銀髪の少年が眠っている。
「むにゃぁ~・・・ヒスイ~・・・」
ジストはまだ夢現。
裸体のヒスイに抱きついて、頬をスリスリ。胸をモミモミ。
「な・・・」
途端にヒスイが怒り出す。
「なんでここにジストがいるのよっ!!」


“18歳未満立入禁止!!”


寝室のドアには、ヒスイの字で書かれたプレートが高々と掲げられることになったのだった。






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