人間界で暮らす吸血鬼の間で、摩訶不思議な病が流行った。
内臓機能が、人間そのものになる病。
命に関わるものではなく、特に治療は必要としない。
数日で元に戻るが、中には稀に、人間女性特有の出血・・・生理の症状が現れることがあるという。
モルダバイト王妃のヒスイも、この病に感染していた。
『オニキスに避けられてるみたい』
「・・・と、ヒスイ様が拗ねてます」
メイド長ローズが、王オニキスにそう報告する。
「どうしたんですか?オニキス様らしくない」
ヒスイが発症して3日・・・仕事を理由に、同じベッドで眠ることを避けていたのだ。
「大昔じゃあるまいし、不浄のものだなんて思ってないですよね?」
「・・・逆だ」
オニキスが短く返答する。
公にはしていないが、オニキスも吸血鬼だ。
血の匂いにはことさら敏感であり、ヒスイの隣で息をするだけで欲情してしまうのだ。
労わるべき時期だというのに。愛しい妻が流す神秘の血は、オニキスにとって魅力的すぎて、理性を保つ自信がない。
それが、ヒスイを避ける理由なのだが。
「こういう時、遠ざけられると女は傷つきますよ」
「・・・・・・」(尤もだな)
ローズの進言を聞き入れ、オニキスが離宮に足を運ぶと。
天蓋付きのベッドの上、ヒスイは本を広げたまま、眠っていた。
銀の髪を撫でてから、頬にそっとキスを落とすつもりで、顔を寄せるオニキス・・・だが。
「・・・なに?」
そこでヒスイが目を開き、口づけを拒んだ。かなり機嫌が悪そうだ。
「・・・・・・」(隠しきれんか)
オニキスは溜息の後・・・
「忘れたか?オレは吸血鬼だ」
血に臆することはない。こんな時でさえ、抱きたいと思ってしまう。そう告げた。
「うん、それで?」
「・・・・・・」
ヒスイは瞬きをするばかりで、それ以上話が進まない。
オニキスはベッドに腰掛け、ヒスイの手を取ると、スラックスの股間部分を触らせた。
そこは熱を帯び、すでに変形している・・・つまり、勃起だ。
「これでわかったか」
「え〜と・・・したいの?」
「ああ。だがこれは聞き流せ」
勝手な男の都合だ、と、オニキス。一方、ヒスイの答えは。
「いいよ。しても」
「忘れたの?私も吸血鬼だよ?」
ヒスイもまた血を介する行為に抵抗がないという。
「それにね、生理中って、エッチな気分になることあるんだって。ローズが言ってた」
「お前も・・・そうだと?」
「うん。そうみたい」
ヒスイはオニキスに抱きついた。
その仕草は無邪気で幼く、セックスをねだっているようには思えない。
「ヒスイ」
「ん?」
オニキスは両手でヒスイの頬を包んで言った。
「よく考えろ」
吸血鬼と、生理中にセックスをするということは。
膣口から、直接経血を飲まれるということ。
いざその時になって嫌がっても、止められない――と。
「それでも・・・いいのか?」
「うん、いいよ」
同意をより確かなものにするため、2人は長い口づけを交わした。そして。
「ナプキンしてるから、今日は自分で脱ぐ」と、ヒスイ。
「いいよ、って言うまで、あっち向いてて。あっ!オニキスもちゃんと服脱いでねっ!!」
「ああ」拳を口にあて、オニキスが笑う。
ヒスイといると妙に心がくすぐったくなる瞬間があるのだ。
それを愛と呼ぶことは、ずっと前から知っている。
オニキスは先に服を脱ぎ、ヒスイを待った。
「いいよ」
その声で振り向き、素肌の美しさに息を呑む。
ヒスイは後ろ向きで立っていた。
「・・・・・・」
うなじ、背中、お尻・・・オニキスの視線が流れる。
ヒスイは手で膣口を覆うようにしていたが、出血は続いていて。指の間から血が滲んでいた。
「ヒスイ・・・」
愛しくて堪らないその小さな体を、後ろから衝動的に抱きしめて。
「わ!?オニキス?」
股間からヒスイの手首を抜き、口元に持ってゆくオニキス・・・
手のひらに付着した経血を舐め取り、改めてそこに口づけた。
「おいしい?」と、ヒスイ。
「ああ・・・最高だ」
もっと欲しい――オニキスが耳元で囁くと。ヒスイは頬を染めて頷いた。
ベッドに乗り、互いに逆向きのシックスナイン。
ヒスイが上。めずらしくオニキスが下になる。
経血を飲むことを前提としているため、やむなくこの体位となった。
「お前は何もしなくていい」
オニキスは自身の顔にヒスイの割れ目を乗せ、出血する穴を舌で塞いだ。
「んぅ・・・ッ!!」
7cm近くある舌の挿入で膣が詰まり、息も詰まる。
肉と肉の間、想像を上回る粘着感に戦慄くヒスイ。
「あ・・・ッ!!!うそ・・・や・・・」
ついそう口走った。
子宮から血の塊が排出される度、オニキスの舌が回収していく・・・
巧みな動きで、膣内の血液を掻き集め、持ち去るのだ。
「ん・・・ッ!!!!!」
抜けては入り、入ってはまた抜けて。
度々そこに、唇で愛しむキスが与えられた、が。
ごくり、ごくり、立て続けに飲み下す音が、やたらと耳について、落ち着かない。
「う・・・あぁ・・・オニ・・・」
「動くな。じっとしていろ」
ヒスイの太股に添えられた指先に力が入った。
痛みを感じるほどではないが、警告通り“止めない”意志が伝わってくる。
オニキスの舌は休むことなく、経血を求めて動き続けた。
ぬるりとした薄膜に包まれてはいるが、舌表面の微繊毛が、ヒスイの膣壁を刺激する。
「あ・・・ふぁ・・・ぁ・・・」
当然、愛撫を兼ねるものなので、快感は膣内部に留まらず。
舌先で上側を擦られるとアナルが弛み、下側を擦られるとクリトリスが膨らんだ。
それぞれ熱を孕んで、疼く・・・が。
「いッ・・・あ・・・あぁッ!!」
自分では処理の仕方がわからず、どうにかして!と叫びたくなる。
「あぁッ・・・オニ・・・キス・・・っ!!」
「・・・・・・」
ヒスイの血液を体内に取り込んでいくうちに、オニキスの瞳は銀色に変色していた。
吸血鬼としての能力が、飛躍的に向上しているのだ。美貌にも磨きがかかる。
しかしこれも、吸血鬼の性か。
「あッ・・・あぁぁん・・・ッ!!」
充血したヒスイのクリトリスを舐め回しながら、今にもそこに噛み付きそうになっている自分に気付く。
(いかん・・・これでは・・・)
どうやら性欲にも作用しているようで。
射精前の昂った状態では、何をしでかすかわからない。
経血飲みはそろそろ断念するしかなく。
けれども、ちょうどその時、ヒスイが言った。
「も・・・ほしいよぅ・・・」
「挿れるぞ」
「ん・・・」
後背位で、膣口に亀頭を食ませた瞬間、内側がひくんと動き。
「そこ・・・オニキスが思ってるより・・・ずっと・・・えっち・・・だから・・・いっぱい・・・して・・・ね?」
「・・・ああ、わかった」
「あッ・・・」
ヒスイの膣内で、すぐさまペニスの律動が開始された。
闘牛の角と形容するに相応しい尖り。
その突進に、真っ赤な膣肉が捲れて、翻る。
「あッあッあんッ!!ひッ・・・あ!!!」
捌き切れず、何度も真紅のベールを突き破られて。鮮血が滴った。
「うくッ!!!あ!あ!あぁぁん・・・ッ!!」
ヒスイの子宮口にオニキスの亀頭が密着し、愛し合いが始まると、そこから熱風が吹き上がった・・・
気道を遡り、ヒスイの口から官能の息となって洩れ出る。
「はぁ・・・はぁ・・・あ・・・」
ついに内臓までもが、性交時特有の熱に侵された。
快感が全身を巡り巡って。火が灯ったように、指先が熱い。
力いっぱい掴んだシーツを焦がしてしまいそうだ。
「んッ!!!あぁぁぁッ!!!」
極まり、絶頂するヒスイ。
脚の付け根から膝にかけて経血が垂れ流しになり・・・破瓜を彷彿とさせる光景だった。
「っ・・・」
オニキスの腰もまた、どうしようもない熱に苛まれていた。
「は・・・」
目を閉じると、本能に抗えず。ペニス先端の噴射口が開く・・・射精の瞬間だ。
「あッ!!うぁ・・・ぁ・・・」
オニキスは、ヒスイを仰け反らせるほどの勢いで、精液を大量発射した。
「オニ・・・キス・・・?なに・・・?」
ペニスを抜いた後、オニキスはヒスイの体を反転させ。
油断していたヒスイの股間に、正面から顔を埋めた。
「ちょっ・・・あッ!!!」
膣口に唇を重ね。膣内で粘ついているものを、思いっきり吸い上げる。
ズッ・・・!!ズズッ・・・!!
「あ・・・ひんっ・・・!!」
驚いたヒスイの腰が浮く。
「・・・・・・」
自身の精液を飲んでいることになるが、ヒスイの経血と愛液が混ざっているため、全く別のもののように思える。
「やっ・・・だめ・・・」
ヒスイは両手でオニキスを押し戻そうとしたが・・・オニキスは退かなかった。
生理中の膣にピストンをして、ペニスがヒスイの経血に染まるのを見ながら、最後はこうすると決めていたのだ。
抜き取りが済むと、オニキスは再びヒスイの膣へと舌を忍ばせた。
(病が去るまで・・・こうして共に・・・)
夜明けを迎えると、ヒスイの出血はぴたりと止まった。無事、元の体に戻ったのだ。
「も・・・飲みすぎっ!」
ちょっと太ったんじゃない!?と、声を荒げるヒスイ・・・照れているだけだ。
「すまんな、以後摂生しよう」
落ち付いた様子でオニキスが答える。するとヒスイは赤い顔のまま横を向き。
「いいよ、別に」
「オニキスがデブでもハゲでも好きだからっ!!」
「安心しろ。禿げない家系だ。恐らく体型も変わらん」
「え?そうなの?」
ヒスイが、ちょっとがっかりしている風なのが可笑しくて。
「くく・・・」
年甲斐もなく、顔が綻んでしまうオニキスだった。
こちら、メイド長ローズ。
「オ・・・オニキス様ぁっ!?」
部屋から出てきたオニキスの姿に、らしからぬ動揺を見せた。
(何があったっていうの!?男前度、更に上がってるんですけどぉ・・・っ!!!)
顔立ちの良さは元々だが、慢性的な疲れが出ていた表情はすっきりとして。血色が良い。
髪が少し伸びたようにも見える。その艶っぽさに、うっかり悩殺されてしまいそうだ。
(生理中のセックスってそんなにいいの!?)
特に唇が・・・濡れているようで、異様にエロい。
「オニキス様、口元が・・・」
ローズが思わずそう言いかけると・・・オニキスは唇の端に親指を置き、静かに微笑んだ。
「ああ、ヒスイの血が滲み込んだのかもしれん」
「!!」(ってそれ口でしたってコトですよね!?しかも生理中に!!)
何気ないオニキスの発言に、ローズはすっかり興奮してしまった。
(大人のオモチャの一件もあるし!!オニキス様って、絶対アブノーマルプレイが好きなのよ!!)※誤解です。
「とにかくこれじゃあ、取り締まりが大変だわ」と、ローズ。
その後、数日間に渡り、オニキスの吸血鬼フェロモンで骨抜きになってしまったメイドが続出したという。
それもまた・・・愛が紡いだ歴史の一幕。
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