セックスの・・・嵐のような時間が過ぎ。


「ふ・・・っ・・・は・・・」
ヒスイの荒れた息づかい。股間も大荒れの状態だった。
中出しに次ぐ中出し。潮吹き。そして、愛液。
グッショリ。ベトベト。ドロドロ。すべて快感の跡だ。
口で血液を吸い、膣で精液を吸い。
興奮しきった女体は、なかなか鎮まらなかった。
そんな中、コハクはセックスのアフターケアに取り掛かった。
草の上に仰向けで横たわり、ぐったりとしているヒスイ。
コハクは、その脱力した両脚を開き、ケアの必要な股間を露わにした。
「あっ・・・おにいちゃ・・・!?」
ヒスイの膣口に指の腹をあて、優しく撫でる。
「あっ・・・!ふぁ・・・んっ!おにいちゃ・・・」
くちゅ。くちゅ。そこに残っていた体液を使って。
激しい運動の後のマッサージ・・・のようなものだ。
「あっ・・・んっ!!!」
(だめ・・・感じちゃ・・・)
膣口の表面でヌルヌルと動くコハクの指。
アフターケアをしているだけで、期待すべきものではないのに。
自分だけその気になってしまうのが恥ずかしい。と、その時。

ぐちっ・・・

「あ・・・ッ!!」
入ってこないと思っていた指が、不意に入ってきて。
「あぁ・・・んッ」
羞恥心とは裏腹に、感じてしまう。
「ヒスイが歩いてる時に、中から出てきちゃうと困るでしょ?」と、コハク。
ヒスイの膣容量をオーバーして、中出ししまくったのだ。当然、漏れる。
「だから、今のうちに出しておこうね」
そう言って、指を曲げ。コハクは、ヒスイの膣内から精液を掻き出し始めた。
「あッ!!!うぅぅんッ!!」
ぬるっ。ずぽ。ぬるっ。すぽ。
膣壁にべっとり張り付いていたものが、少しずつ膣外へと排出されてゆく・・・
「ぅ・・・おにぃちゃ・・・」
「ん?痛いかな?」作業を中断し、コハクが上から覗き込む。
するとヒスイは頭を左右に振り。


「や・・・ぜんぶ・・・だしちゃ・・・」


「・・・・・・」
(か、可愛いぃぃぃ!!)
心の中で、萌え叫ぶ、コハク。
膣内に精液を残して欲しいと懇願される・・・中出しした側としては、嬉しいことこの上ない。
(ヒスイぃぃぃ!!!愛してる!!!)
今日もまた、頭のネジが何本か飛んだ。
「大丈夫だよ、ちゃんと残すから」
「んぁ・・・んッ!!」
コハクは平静を装い、優美な笑顔で作業を続行した。しかし。
「も・・・いい・・・」
ヒスイは精液除去作業を嫌がり。更に、男殺しの一言。


「せっかくもらったのに・・・すてるの・・・やだ」


「・・・・・・」
愛のビックウェーブ。第2波がきた。
(ダメだ・・・可愛すぎる・・・)
あまりの愛しさに眩暈がする。萌死しそうだ。
思わず、指を奥まで入れてしまう。
「あく・・・っ!!」
膣内で、発情する指先。
「あッ・・・あぁんッ・・・」
たちまち感応し、生温かな愛液が分泌される。
肉襞がにゅぐにゅぐと鳴った。
「それじゃあ、もう掻き出すのはやめるから」と、コハク。


「このままイッちゃおうね?」
「ん・・・」


ヒスイは素直に指での愛撫を受け。
「んッ・・・ん・・・ッ!」
ちゅぽちゅぽ。コハクが指を出し入れする度、両脚を広げていった。
「んッ、んッ・・・あ・・・」
懸命に膣を開放しているのだ。
「ああッ!おにいちゃ・・・おにいちゃ・・・」
草を掴んで喉を反らせ。コハクの指をもっと感じたい・・・その一心で、腰を前に突き出すヒスイ。
何とも淫らな格好だ。
「あッ・・・あんッ・・・!!」
「うん。もっと欲しいよね」
と、コハクは指を追加挿入し。ヒスイの膣奥をまさぐった。
あんあんと、ヒスイは感じまくり。
膣口から泡を吐きながら、髪を振り乱した。
「あッ、あッ、あッ、はぁ・・・んッ!!」


「ヒスイ、こっち向いて。キスしよう」


ヒスイと唇を合わせ、仕上げに入るコハク。
「んッ・・・んぅ・・・」
ちゅぅっ。ちゅっ。ちゅっ。
キスをしながら、ヒスイの子宮口を指先で撫で擦る。
「んんん・・・・・・ッ!!!」
疼く場所にぐりぐりと与えられる摩擦の気持ち良さと言ったら。
「あ・・・ッ!!!んん・・・!!あぁッん!!」
とにかく快感に喘ぎたくて。ヒスイはキスどころではなかった。
何とか振り切ろうとする・・・が、コハクが追って唇を塞ぐ。
そして、間もなく。
「んは・・・ッ!!!あ・・・」
「よしよし、イッたね〜・・・」
コハクの指先に膣の収縮が伝わってきた。
精液を求め、きゅうきゅうと指を締め上げてくる。
「あッ・・・ふ・・・」
「ごめんね、あげられなくて」
膣と連動し、震えるヒスイの唇を、コハクは優しく吸った。


快感も、幸せも、絶頂。


「ふはぁ・・・あん」
ヒスイは、コハクの唇と指でイキ果て。うっとりしている。
何しにここにきたか、それさえも忘れてしまいそうだ。
(えっと・・・何だっけ・・・まだやることがあったような・・・)
ほんのりと、アロマの香りがするハンカチで股間を拭われながら、考えるヒスイ。
「は〜い。パンツ穿こうね」
コハクにパンツを穿かされ・・・
「・・・あっ!私、カルセドニーのところに行こうと思ってたんだ」
どこにいるかわからないけど、と、『魔葬』によって一変した戦場を見下ろす。
グロッシュラー兵は撤退し。もうほとんど残っていなかった。
魔葬の影響で、シトリンは猫に戻り、ウィゼのハニーサックルはただのナイフに。
二人は戦いを切り上げ、それぞれ大切な者の元へと向かっていた。
「カルセドニーとちょっと話がしたいから」と、ヒスイ。
「・・・・・・」
その“話”は、ヒスイにとって必要なものであろう。
そう判断したコハクは、ヒスイを引き止めずに。
「気をつけていっておいで。僕はメノウ様のところへ行ってるから」
「うんっ!」




未開発地区の一角にて。

「よっ!」
メノウが声をかけたのは・・・カルセドニーだ。
「・・・・・・」
ショックを受けているのか、カルセドニーの返答はない。
ただ黙って、役者の消えたステージを見ている。
しばらくして。
「何を・・・したのですか?」と、メノウに尋ねた。
「魔力封印ってヤツ」さらりとメノウが答え。
「・・・メノウ、あなたの目的は何なのですか?」


そこに、トパーズが現れた。


「グロッシュラーの軍隊は、本来こんなに弱くない」と、メノウの代わりに話し、煙草の煙を吐く。
グロッシュラーは数々の国を攻め落としてきた、戦争のプロだ。
「それがなぜ、こんなにあっさり破れたか」
授業モードのトパーズが続けて語る。
「敗北の主な原因は、“過信”だ。魔力を得たことで、自分達が優位に立ったと思ったんだろう」
アンデット商会の商品やノウハウを積極的に取り入れ、戦争に用いた。それが敗北を招いた、と。
「今回はまぁ、相手が悪かったっちゃ悪かったけど」
明るい口調のメノウが間に入った。
「グロッシュラーがいつも通りに攻めてきてたら、モルダバイトも苦戦してたかもな」
そうさせないために、魔兵器を売り込んだんだけど。と、メノウの話が続く。
「思ったほどいいモンじゃないって、あいつらもこれでわかっただろ」
前々から、グロッシュラーはモルダバイトを狙っていて。侵略の準備が進められていた。
アンデット商会が介入しようがしまいが、戦争は起きていたのだ。
「グロッシュラーが欲しがってるモンをチラつかせて、戦争をちょっと早めただけでさ」
味方のフリをしてグロッシュラーを煽り、内部から仕掛けた・・・そういうことだ。
「アンデット商会の商品を大量に売り付けたから、財源も底をついたハズだし」
これで、グロッシュラーは当分どこの国とも戦争できない。
メノウによって戦力を削ぎ落とされたのだ。
「・・・では、貴方がたは初めからグロッシュラーを潰すために、入社を希望した、ということですか?」
「・・・・・・」そこでトパーズが口を閉ざす。
トパーズの場合、そんなに大層な目的ではなく。
ヒスイの日記欲しさに・・・あとは成り行きで現在に至っている。
「俺はまあ、半々かな」と、メノウ。それからカルセドニーを見据え、言った。



「魔女の遺言でさ」



「・・・魔女の・・・遺言・・・」
アンデット商会代表取締役のカルセドニーが知らない訳はなかった。
取り乱すことこそなかったが、カルセドニーは表情を硬くして。メノウの次の言葉を待った。
「お前、まだ10歳だろ?子供の悪戯で、死者が出んのはマズイって、母ちゃんが心配してたぞ〜?」
メノウのノリは相変わらずユルい。
「母は・・・死んだのですか?」
「死んだよ」
「そう・・・ですか」と。
開かない扉の理由を知ったカルセドニーは、不自然なほど落ち着いていた。
「優しい魔女だったよ」
遺言の不成立でメノウが命を落とすことのないよう、その内容は極めて単純なものだったのだ。
今、明かされる、遺言。成立したからこそ、話すことができる。


「これから起こる戦争で、息子の造り出した魔道具が、誰の命も奪わないように、ってさ」


自身の命と引き替えに、そう願っただけ。
「俺がこうして生きてるってことは、死者ゼロ」
もとより死者のアンデット兵はその数に含まれない。
「母は・・・他に何か言っていましたか?」
「人間らしく生きてくれってさ」
「人間らしく?私は人間では・・・」
“エルフの姿をした人間”ではなく。
“人間の能力しか持たない不憫なエルフ”なのだと思っていた。
カルセドニーが反論すると。
「人間だろ。半分は」
メノウはめずらしく厳しい口調でそう言って。
「息子のために命をかけた母親の血を誇りに思えよ」
「・・・・・・」
「できれば、不老不死の研究はやめて欲しいってさ。そうそう改心する性格じゃないから、遺言には加えないでおくけどって。笑ってた」
「・・・あなたはどう思いますか?メノウ」
「ん?俺?そうだなぁ・・・」
カルセドニーの質問に、メノウは少し考えてから。
「この前さ、俺の家族の話したじゃん?」
頷くカルセドニー。ヒスイのことも、この時聞いたのだ。
メノウは頷き返し、ひと呼吸おいてから言った。
「ヒスイが産まれて、サンゴが死んで。そん時思った」



命は・・・いつか失われるものだから、新しく得ることができるんだ、って。



「たとえば、永遠の命を手に入れたとして・・・人間はどうなる?」
教えてくれよ、先生。と、トパーズを肘でつつく。
面倒そうな顔をしつつも、トパーズはバトンを受け取り。
「人間だけではなく、すべての生物に言えることだが・・・」と、話し出した。
「子孫を残す必要がなくなり、生殖機能を失う。生殖機能を失えば、性別の意味もなくなる――以上だ」
「ついでに性欲もなくなるし」そう、メノウが付け加え。
それは困るよなぁ。と、一旦トパーズに話を振ってから、再びカルセドニーに向き直り、言った。
「失わないってことは、得る必要がないってことだからさ」

停滞する世界。

「新しい命が産まれない世界を、人間が望むと思う?」
「・・・・・・」
「不老不死が本当に価値のある“商品”なのか、もうちょい考えてみれば?ま、あとはお前の好きにしなよ」
「・・・わかりました。私はこれで失礼します」
何に対しての“わかりました”なのか、わからないが。
カルセドニーはあくまでも礼儀正しく一礼し、退席した。



それからすぐ。

「メノウ様」
ひょこっと、木の後ろからコハクが顔を出した。
「お?何だよ、立ち聞きか?」
コハクは否定せず。
「いいこと言ってましたよ、メノウ様」
「・・・命ってさ、親から子へ流れてくモンだろ。流れが止まれば、淀む。簡単な話だよな。ま、俺もヒスイが産まれてなきゃ、わかんなかったかもしんないけど」
と、メノウは夜空を仰いだ。そこに月はないが、無数の星が瞬いて。
視線を地上に戻すと、かつての戦場は静かで、祭りのあとのようだった。
「メノウ様」再び、コハクが名を呼ぶ。
「ん?」
「命に永遠はなくても、愛に永遠はあると思いますよ」



サンゴ様はきっと・・・メノウ様を永遠に愛してる。



「・・・何、お前、俺のこと泣かそうとしてんの?」
そう言って、笑うメノウ。コハクも肩を竦めて笑い。
「信じたいんですよ。僕も」



ヒスイに、永遠の愛を残していけるって。







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