「ヒスイ」
名前を呼んで、ふっくらと丸味を帯びた下唇を舐めるコハク。
「っ〜・・・!!!」
キスを拒むつもりはないが、ヒスイの唇は開きそうで開かない。
ただもう・・・苦しかった。
「息して、ヒスイ」
口元で、コハクにそう囁かれ。呼吸をしようとしたことで、やっと弛みが生じる。
そこで・・・つるり。
「!!」
口の中にコハクの舌が入ってきた瞬間、ヒスイの腰がビクンと震えた。
時として、口は性器と繋がる・・・ヒスイは膣でもコハクを感じているのだ。
金色の睫毛を伏せ、キスを深めるコハク。
甲斐甲斐しく舌の裏筋を舐めてやるうちに、ヒスイの舌も段々と動くようになってきた。
懸命にコハクの舌戯に応え。
「んッ・・・んッ・・・」
少しでも距離を縮めようと、コハクの背中に両腕を回す。
舌と舌を絡め、気持ちが昂れば昂るほど、膣が同調してくる・・・
いつしかヒスイは、コハクの舌でペニスを連想するようになっていた。
「んッ・・・あ・・・おにいちゃ・・・」
口の中同様に、膣の中も濡れている。
ヒスイは両手でコハクの毛束を掴んで引っ張り、先をねだった。
高校生ごっこはもう、お終いだ。
壁を滑り落ちて・・・床へ。
早くも仰向けになるヒスイ・・・だが。恥じらいはまだ残っていて、コハクから顔を背けた。
「くすっ。こっち向いてくれないの?」
柔らかな笑い声とともに、襟元のリボンが解かれる・・・
ゆっくりと外れてゆく、シャツのボタン。
ひんやりとした空気が胸元に入ってくる一方で、コハクの熱い舌が鎖骨を這う。
「っ〜・・・!!!」
じわじわと愛されて。ヒスイの恥ずかしさは増すばかりだ。
コハクはまずヒスイの靴を脱がせた。それからパンツ。
趣向により、ソックスは穿かせたまま、スカートを捲る。
ヒスイは服従のポーズで性器を晒し。
「うん、今日も綺麗だね」と、コハクはそこに視線を注いだ。
貝殻に例えられることもある女性器は、そっと指を入れて開くと艶かしい汁がこぼれた。
「んッ・・・!!」
唇を噛み、恥ずかしそうに目を細めるヒスイ。
「この中に、真珠でもあるんじゃないかって思っちゃうよ」
コハクはそう言って、ヒスイの膣肉に触れると、真珠を探すふりをした。
「あ・・・んんッ・・・!!」
ぬるり。恥骨の裏側をコハクの指が滑る。
性感帯のひとつでもあるGスポットを、真珠になぞらえているのだ。
「あ!!おにいちゃ・・・や・・・そこ・・・びゅってしちゃう・・・よう・・・」
「うん。して欲しいんだ」
ヒスイが何を言おうと、笑顔で強制潮吹きだ。
「あ・・・やぁ・・・ッ!!!」
感じて堪らない部分を、中指の腹で優しく刺激されるヒスイ。
「あ・・・うぅぅッ・・・!!!」
すぐさま尿道に異変が起こる。おしっことは違う無色透明の体液が染み出し。
ぴゅーッ!と。尿道口から“潮”として吹き出した。それがコハクの手ひらに命中する。
「これ・・・や・・・」
恥ずかしくて、泣きたくなる。けれど。
「あ・・・あああッ!!!!」
頭の中が沸き立つような。
この快感は一体何なのかと思う。自分の体のことなのに、いまだに把握できない。
「あッ・・・あんッ!ああんッ!」
続けてGスポットを責められ、ヒスイは羞恥の涙を浮かべながら潮を飛ばした。
ぴッ!ぴッ!ぴゅッ!ぴちゃッ!
その勢いは強かったり弱かったり、チョロチョロと流れるものだったり。なんにせよ、淫らだ。
コハクはその様子を愛おしげに見つめ。
「嫌じゃないよね?気持ち良さそうな顔、してる」
片手でヒスイの頬を撫で、目尻の涙を吸ったあと、ちゅっ。唇に軽くキスをした。
「っ〜・・・!!!」
否定できないGスポット快感。ヒスイは真っ赤な顔で牙を剥き。
「しゅうちししたら、おにいちゃんのせいなんだからっ!!」
「羞恥死?」(ヒスイがまた面白いことを・・・)
可愛いなぁ、と、コハクは笑って。
「だったらこれで、恥ずかしくなくなるんじゃないかな」
中指をヒスイの膣に入れたまま、フードを被っているクリトリスを親指で押し上げた。
「!!!んくッ!!!」
ヒスイの腰が浮いて、揺れる。
「あー・・・・・・!!!!!」
息継ぎのない長い喘ぎが、いかに快感であるかを物語っていた。
コハクの言った通り・・・恥ずかしい、より、断然気持ちがいい。
「あひ・・・ッ・・・あ・・・ひぁ」
呂律が回らなくなり。もう自分がどこにいるのかさえわからない。
ヒスイは見事に果て、セックス特有の浮遊感に見舞われていた・・・が、そこで。
ベルトを外す音が聞こえて。
収縮している膣に、コハクの滾ったペニスが挿入された。
「っひッ!!!!」
虚ろになっていたヒスイの両目が大きく見開く。
ずくずくずく、と。根元まで収まったかと思うと、即、射精だ。
「ん・・・んぁ・・・おにぃ・・・」
「ちょっと遅れちゃったけど、一緒にイカせてね」
「ふぁ・・・あ・・・」
収縮に任せてペニスを絞り、充分な精液を得る。
しかし、ヒスイの膣内では、まだコハクのペニスが動き続けていた。
射精を終え、微かに緩くなったように思えたペニスは、浅いところを往復しているうちに、再び硬く尖り。
それがヒスイの膣奥を貫く。
「!!んひッ・・・あ!!!!」
子宮口に先端が突き立ち。
ぐりッ!ぐりッ!ぐりぐりぐり・・・ッ!!
深く激しく、長々と抉られる。
「あッあッ・・・あぅんッ!!」
棒を使った原始的な方法で火をおこすのだとしたら、たぶんこんな摩擦だ。
「あうッ!!あ・・・!!!おにいちゃ・・・おにいちゃぁん・・・っ!!!」
Gスポット、クリトリス、そしてポルチオ。
誰もない教室で、ヒスイは、快感という快感を貪った。
「奥、ちょっと痛いでしょ」
いつもより強く擦ったから〜と、コハク。確かに、言われてみればそうだ。
「わざと?」
ヒスイが瞬きする。
「うん、わざと」
コハクはにっこり笑って言った。
「そこがヒリヒリしてると――」
「いっぱい愛されたんだな〜って、思うでしょ?」
「そ・・・だけど」
言われた方が赤面してしまう。
コハクに羞恥の心はないのか・・・今更疑問に思うヒスイだった。
午後2時。
コハクと別れ、ヒスイはひとり、賑わう校舎へと戻った。しかし。
「お兄ちゃんもいないし・・・もう帰ろうかな」
拗ねて、口を尖らせること1分。
「・・・あ!そうだ!あーくんとまーくんがいたっけ!」
やっと、息子の存在を思い出す。
「友達の手伝いって言ってたけど・・・」
学園内にいるのは確かだが、詳しいことは何も聞いていない。
あてもなく、ヒスイが廊下をキョロキョロしていると。
どこからか伸びてきた腕に捕獲された。
「え・・・?トパーズっ!?」
その登場よりも、その格好に驚く。
教師であるトパーズは本来スーツであるが、生徒の目を欺くために変装をしていた・・・眼鏡を外し、高等部の制服を着ている。
コハクの予定を調べ上げ、ヒスイがフリーになる時間帯を狙っていたのだ。
「クク・・・丁度いい」
運命的なヒスイのコスプレを、トパーズは大いに気に入った様子だ。
「・・・・・・」
(お兄ちゃんとトパーズって、考えてること一緒なことあるんだよね)
そうなのだ・・・コハクとトパーズは、時折、発想がモロにカブる。※番外編『妄想ロマンス』参照。
とにかくこれで、高校生ごっこ再開となった。
「行くぞ」と、ヒスイの手首を掴むトパーズ。
「行く?どこへ?」
“お化け屋敷”
「!!やだっ!!」
聞いた途端逃げ出そうとするヒスイだったが、トパーズに無理矢理連れ込まれ。
間もなく・・・紐で吊られたコンニャクがヒスイの顔に張り付ついた。
「ひっ!!ぎやぁぁぁぁ!!」
思惑通りの大悲鳴。
「クク・・・」
トパーズは笑いが止まらない。
お化け嫌いのヒスイは、トパーズに抱きつくこと数知れず。
うち何回かキスをされたが、構っている余裕はなかった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
トパーズと握り合った手と手の間がひどく湿っているのは、ヒスイの汗のせいだ。
「あ!」
擬似墓地を抜け、やっと出口らしき扉が見えた。
そこを開ければ、光溢れる世界・・・である筈なのだが。
「ちょ・・・何これっ!?」
教室の外、廊下の窓から見えるコスモクロアの空は、完全なる闇に覆われていた。
学園の生徒や来客者達は一様に不安気な表情で見上げている。
その時――トパーズの携帯が鳴った。
相手はエクソシスト総帥、セレナイトだった。
「少々困ったことになってね」
「・・・何だ?早く言え」
セレナイトの声は落ち付いているが、雑音が凄い。背後の混乱が伝わってくる。
恐らく、良くない知らせだ。トパーズの予感は的中し、セレナイトは言った。
「君の、末弟くん達が召喚したと思われる悪魔が・・・天使を喰っている」
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