引き続き、本の中の監獄。

「・・・・・・」
(どうしようかな)
吸血行為のあと、発情することも知っている。
然るべき処置をしないと、体調を崩してしまうことも。
「・・・・・・」
(ずっと見てきたんだ・・・あーくんが、好きだ好きだと騒ぐから)
どこがそんなにいいのかと、品定めをしているうちに、同じ気持ちになる。
相手が母親だということを除けば、よくある恋の落ち方。
認めたくはないが、全く自覚がない訳でもなかった。
「・・・・・・」



好きでも、好きとは言えない。
母親と思えなくても、“お母さん”と呼ぶしかない。
兄弟はみんな僕を疑っているのに、お父さんは僕を信じようとしてる。



「なんだか・・・疲れる・・・」
そう呟き。マーキュリーが息を吐く。
(これだけ理性を失っていれば、セックスをするのは多分、簡単だ)
キスの続きを求めるように、ヒスイ自ら体を摺り寄せてくるのだ。
(被害者のフリをして、してしまおうか)
狂った感情だとわかっていても、ヒスイの中身を喰ってしまいたいと、内なる獣が騒ぐ。
「・・・貴方が悪いんですよ?」
マーキュリーは、腕を伸ばし、ヒスイの股ぐらに手を入れた。
愛液を絞り出すように、陰唇をひと握りすると。
「ん・・・ふっ・・・おにいちゃ・・・」
理性を失っている筈のヒスイが、感じるまま、コハクの名を口にして。
急激に頭が冷える。
(やめた。こんなことをしても意味がない)
こうして、心を取り戻したマーキュリーだが・・・Sっ気は健在で。
(血はたっぷり飲んだから・・・)
このまま放っておけば、発情したまま、いつものヒスイに戻る。
その時、どんな顔をするのか・・・むしろそっちに興味が湧いた。
「折角なので、見せてもらいますよ、お母さん」




(あれ?わたし・・・)
ベッドの上、ヒスイが目覚める。渇きはすっかり治まっていた、が。
「あれ?あれれ???」
両手が縄で拘束されている。縄・・・それは、マーキュリーの鞭でもあった。
「まーくん?あ・・・」
何とか上体を起こし、マーキュリーを見ると。首筋に、牙のあと。
「!!」(私、やっちゃった!?)
鉄格子にぶつかってからの記憶が全くない。
「あの・・・まーくん」
「何ですか、お母さん」
「私、もしかして、まーくんの血を・・・」
否定も肯定もせず、曖昧に微笑むマーキュリーだったが、聞くまでもない。
「っ・・・ごめんね」
「いえ、大丈夫です」
「それであの・・・手が、動かせないんだけど・・・」
「すみません、急に襲われたので、びっくりしてしまって」
「!!襲っ・・・ちゃったの?私・・・」
性的な意味を含むのか、定かではないが。ヒスイは激しく動揺していた。
「ど・・・どこまで・・・その・・・」
「気にしないでください。ギリギリのところで済んだので」と、マーキュリー。
「ギリギリのところ!?」(って、どこなのよっ!?)
追及しようと、ヒスイが身を乗り出したところで。
「あッ・・・んッ!!」
声が喉に詰まり、再びベッドに倒れ込んでしまう。
「はぁはぁ」
粘膜という粘膜が、灼けるように熱い。
もとより、発情しているカラダだ。
(ああ・・・おにいちゃ・・・)
自立した肉襞が、膣内の精液を拡散し、空きを作ろうとしている。
「や・・・」(なんか、びらびらしたの、でてきちゃっ・・・)
次の注入に備え、ヒスイの陰裂に肉の花が咲いた。
コハクがいない今、自力で鎮めるしかない、が。
(これじゃ、ひとりえっちもできない・・・)
「どうかしましたか?お母さん」
マーキュリーがベッドを覗き込み、言った。
「まーくん・・・そろそろこれ解いて・・・」
両手を使えるようにして欲しいと、ヒスイが懇願するも。
「はい?何か言いましたか?」
王子様スマイルで、完全スルーだ。
「・・・・・・」
(なんかまーくん、イジワル度増してる?気のせい・・・だよね???)




それから数十分が過ぎた。

「ん・・・ふ・・・」
体をうつ伏せにしたヒスイは、枕を噛んで声を殺し。
両手を拘束されたまま、四つん這いに近い体勢でお尻を突き出し、上下に揺らしていた。
コハクのペニスを思い出しているのだ。
甘く匂い立つエロス・・・
毛糸のパンツが、変色するほど濡れている。
「ふぅ・・・ん・・・」
目を閉じて、ヒスイが腰を振る。
「・・・・・・」
マーキュリーは黙ってそれを見ていた。



「うわー、ドS心全開じゃん」



・・・と。何の前触れもなく現れた者がいた。
クマボディの、司書代理だ。
なにせ本の中なので、今更大した驚きもない。
マーキュリーは真顔で。
「ドS?誰がですか?」と、言った。
「自覚ないの?それヤバイって・・・あはは!!」
司書代理は陽気に笑い。
「ヒスイが発情してんの知ってて、拘束するとかさ、お前も相当歪んでるよな」
するとマーキュリーは、すぐにこう切り返した。
「・・・なぜ、母の名を?」
「お?そうくる?」





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