気が付くと、ヒスイの上に乗っていた。
下のヒスイと手のひらを重ね、きつく指を絡めて動きを封じ。
貝のように硬く閉じているヒスイの肉の合わせ目に、オニキスは迷いなく亀頭を捻じ込んだ。
「なにす・・・やめ・・・あ、あぁぁッ!!」
濡れているのは自分の先端だけだが、それを使って、ヒスイの膣を無理矢理こじ開ける。
「やッ・・・!!あくッ・・・!!!」
鋭いペニスでゆっくりと膣肉を裂く・・・
ブチブチブチ・・・ちぎれるような音をたてて拡がる膣。ヒスイは髪を振り乱し。
「ひッ・・・あぁッ・・・!!おにいちゃ・・・たすけ・・・」
「・・・・・・」
ヒスイにとっては拷問だと思う。泣いているのはわかっていた。
「いたいっ・・・い・・・いや・・・いやぁ・・・おにいっ・・・」
足をバタつかせ、抵抗するヒスイ。
蹴られても、どうということはなかった。
ヒスイの体はいつものサイズに戻っていて、何もかもが、小さく。
これだけの体格差があれば、行為の妨げにもならない。
「いやあぁぁ・・・ッ!!」
「・・・・・・」
ヒスイの悲痛な叫びを聞きながら、膣内にペニスを押し進めるオニキス。
「ひぅッ・・・!!あ、あぁッ!!」
グググッ・・・グッグッグッ・・・奥までがやたらと遠く感じた。
ミリ単位の前進にも、ヒスイが悲鳴をあげたからだ。


「うっ、うっ・・・は・・・ぁっ・・・」


ペニスをすべて納めると、ヒスイは幾分おとなしくなった。
膣を完全に占拠され、抗う術をなくしている。
(これがヒスイの・・・)
膣奥にコリコリとした場所を見つけ、オニキスが亀頭で擦る・・・と。
「いやぁ・・・ッ!!おねが・・・やめ・・・ああッ・・・」
ヒスイは激しく嫌がり。泣き叫んだ。
そんなに嫌ならば、と、オニキスは子宮への愛撫をやめ。
ペニスを浅く前後に動かした。
「うッ・・・ふ・・・うぅん・・・!!」
ヌチュ。ヌチュ。ヌチュ。ヒスイの膣壁が濡れてきた。自衛のために、だ。
滑りを良くし、なんとかペニスの摩擦に耐えようとしているのだ。
そのヌメリに、ヒスイの愛はない。
「ひっく・・・ぅぅん・・・っ・・・」
いつしか蹴りも止んで。ヒスイの両脚は開きっ放しになった。
「はッ・・・あッ・・・あッ・・・んく・・・」
ペニスを押し込む度、力なく爪先が跳ね上がる。
「・・・・・・」
(愚かだな・・・)


欲しいのは体ではなく、心。そう、思うのに。
傍にいれば、触れたくなる。


罪だと、知っていても。


「ん・・・うぅぅッ!!」
ヒスイの肉ヒダと絡んだペニスは興奮し、更に大きくなって、ヒスイを苦しめた。
ギチッ、グチッ・・・痛々しく拡がる膣口。
ペニスを動かす度、小陰唇がベロベロ捲れる。
ヒスイは諦めたのか、声も出さなくなって。
結合部からは、愛液がドロドロと垂れてきた。
けれどもそれは、“ヒスイ”としてではなく、雌として。
雄のペニスを受け入れ、対応しているだけのこと。
グチュリ。グチュリ。ズッ、ズッ、ズッ・・・
深い闇の中、愛に狂ったペニスが、膣を蹂躙する音しか聞こえない。
すっかり弛んだ膣が、巨根を難なく飲み込むようになった頃には、ヒスイの瞳も輝きを失い。
何度、唇にキスをしても、無反応だ。
(ついに・・・壊してしまったか)
これが、陵辱の結末なのだと理解する。
穴を提供するだけの愛玩人形・・・ヒスイをそんな風にしたのは自分だ。
「・・・・・・」
夢でも現実でも、どちらでも構わない筈だったのに。
身勝手もいいところだと思いながらも、これが夢であるよう、切に願う。
すると、その時。



「ヒスイ・・・か?」



遙か頭上から聞こえる歌声・・・紛れもなくヒスイのもので。
オニキスは上を向き、その歌声に耳を傾けた。
「ずっと・・・歌っていてくれたのか?」
闇の中で、愛欲に溺れ、淫蕩に耽っている間も、ずっと。



帰る場所を、見失わないように。



「・・・・・・」
(後悔は後だ。今、ヒスイを守らなくてどうする)
オニキスが、そう、心を決めた瞬間。闇が・・・晴れる。




「オニキス・・・っ!!」
「すまん。遅くなった」
「よ、よかったぁ〜・・・」
ふにゃっと、ヒスイの表情が弛む。が、安心は束の間で。
「ママ!!」
フェナスと奮闘していたスピネルが叫ぶ。
オニキスの生還に喜び、一瞬隙ができたのだ。
フェナスの銃口が再度ヒスイへと向けられ・・・バンッ!!
ヒスイに代わり、二発目もオニキスが受けた。
「オニキス!!」今度はヒスイが叫ぶ。
「・・・心配するな。たいして殺傷力はない」
心術が込められた弾はオニキスの肩に命中したが、オニキスが倒れることはなく。
再生した細胞が、弾丸を体外へ押し出した。
「そんな馬鹿な・・・」
地面に落ちる弾を見て、驚愕するフェナス。
これまで無敗だった心術を二度も破られたのだ。
さすがにショックが大きく、次の動作に移れない。
それを目の当たりにした罪人達の中にも、戦意を喪失する者が出て。
間もなく、形勢は逆転した。


「ところでこのヒト、誰???」


ヒスイが真顔で言った。
あれだけ追い詰められながらも、フェナスの職務に気付いていなかったのだ。
フェナスにとっては屈辱で。顔を上げ、ヒスイを見ると・・・
「ぼくは、ヴァ・・・ふぐッ!!!」
口上半ばで、フェナスの姿が消えた。一陣の風と共に、横っ跳び、だ。
「ふぐ?あっ!!お兄ちゃん・・・っ!?」
次の瞬間、コハクが横切る・・・フェナスに飛び蹴りを入れたのだ。


そのまま、森の茂みで対峙する男二人・・・熾天使コハクvsヴァンパイアハンターフェナス。
「余計なこと、言ってもらっちゃ困るんだよね」と、コハク。
「自分を狩ろうとしている者がいるって、気分良くないでしょ?君がヒスイを狩るというなら、僕が、君達ヴァンパイアハンターを狩る」
見せしめとばかりに。フェナスの目の前で、バラバラとエンブレムを落とす。
その数だけ、狩ってきたということだ。
「天使のくせに・・・!!なんてことすんですか!!」
古来から、ヴァンパイアハンターは天使の代理として吸血鬼と戦ってきた。縁ある関係だ、が。
「天使が皆、君達の味方だと思ったら大間違いだよ」
ヒスイを傷つける者は、何人たりとも許さない。
昔も、今も、これからも、変わらぬコハクの信念だ。


いくらフェナスが才能に恵まれた男だったとしても、戦闘向けの天使であるコハクに敵う筈もなく。
銃を構えた瞬間、それが粉々に砕けた。
「!!?」(何が起こった!?)
大剣を手にしているコハクを見て、あれにやられたんだろうか、と。
それすらも半信半疑で。更に、次の瞬間・・・ブチッ!!
右肩に縫い付けてあったうさぎのぬいぐるみを、コハクに引き剥がされた。
「返せ・・・っ!!!」
逆上したフェナスは声を張り上げ。


「妹から貰った、お守りなんだ!!」


その咆哮で、場のムードが一転した。
「え?妹?じゃあ君、“お兄ちゃん”?」
コハクがそう言ったそばから、「おにいちゃん〜!?どこ〜!?」と、ヒスイの声。
それを聞いたフェナスも。
「え?あなたも、“お兄ちゃん”?」
“兄同士”という共通点が発覚し、いきなり和む二人。もはやそこに戦意はない。
「血は繋がってないんだけどね、母親を早くに亡くして・・・ずっと僕が育ててきたんだ」
コハクの場合は兄であり、夫でもあるが。その言葉はフェナスの心を打って。
(ぼくは、なんて酷いことを・・・)
妹を大切に思う気持ちは、痛いほど、わかる。
ヴァンパイアハンター狩りも、すべて妹を守るためにしたことなら・・・責める気にはなれない。
対するコハクも、うさぎのぬいぐるみをフェナスに返却し。
「妹って・・・可愛いよね」と、いきなりシスコン発言。
「もう可愛くて可愛くて・・・」強く頷きながら、続くフェナス。
出稼ぎで上京を決めた時、「おまもり」と言って、妹が自分の宝物をくれた。そう、話すと。
「それは・・・悪いことをしたね。僕も妹のお守りを持ち歩いているから」
妹から貰ったものがどれだけ大切か、痛いほど、わかる。


「吸血鬼にも、家族がいるんなら・・・」
そう言って、フェナスは一旦口を噤み。それから、思い切った発言をした。
「辞めます。ぼくはこの仕事に向いてないみたいだ」
「だったら、代わりの仕事を紹介しよう」と、コハクが斡旋するのは、言わずと知れたエクソシスト教会。
「ここからかなり離れた国の勤務になるけど、その分、お給料はいいから」
「ありがとうございます!」
そこでガッチリ握手を交わす二人。“妹萌え”で、見事和解だ。




その後。ヴァンパイアハンターフェナスを仲介として、村の監視役と、オニキス、コハクで話し合いの場が設けられ、誤解は解けた。
これ以上の戦いはせずに済みそうだ。
ヒスイ、スピネル、カーネリアンが待機する空家に戻るなり、オニキスが言った。
「モルダバイトと繋がっている棺桶だけ壊すということで、話はついた」
つまり、他の棺桶は残すということで・・・カーネリアンが露骨に眉をひそめた。
「吸血鬼との戦いを罪の償いとする・・・あまり感心できる制度ではないが、この村の存在が国の平和を守っているのもまた事実だ」と、オニキスはあくまで冷静な判断を下した。
吸血鬼が人間の血液を主食とする限り、共存は難しい。
モルダバイトでさえ、完全には成し得ていないのだ。
「これ以上は、他国の者が口出しする問題ではない」
「気にくわないねぇ」吸血鬼のカーネリアンが反論する。
同じく吸血鬼のヒスイは・・・隣の席で眠そうに目を擦っていた。
「吸血鬼が、人間の罪滅ぼしの道具にされたんじゃ、たまったもんじゃないよ」
仲間意識の強いカーネリアンらしい解釈だ。が、国というものが簡単に変わるものではないこともわかっていた。
そこで、溜息ひとつ。
「アタシゃ、しばらくここに残るよ。吸血鬼をおかしくすんのは、なにもこの地だけじゃないんだ。“孤独”が、アタシら闇のモンを狂わせるんだよ」
カーネリアンは、残りの棺桶を使って国内を巡り、吸血鬼同士を引き合わせたいと言った。
その左肩には、居眠りするヒスイの頭がのっている。
「ああ、寝ちゃいましたね」
コハクは、カーネリアンの肩に今にもヨダレを垂らしそうなヒスイを引き取り、抱き上げて。
「吸血鬼が集団化すれば、いずれ国に目を付けられますよ?確実に敵は増える」
「それでもさ、ひとりでいるよかずっとマシだよ。一緒に戦える仲間がいるってのはいいもんさ」
吉と出るか、凶と出るか、それはわからない。この国に潜む吸血鬼次第だ。
「やれるだけ、やってみるよ」
「そうですか」カーネリアンの心意気にコハクも笑顔で頷いた。その隣で。
「ならば、オレも残ろう」と、オニキスが名乗りを上げ。
「コハク、しばらくスピネルを頼む」
すると、すかさずスピネルが。
「ボクはひとりで大丈夫だよ。もう子供じゃないんだから」と、笑った。
「本当はボクも残りたいんだけど・・・」
学校を何週間も休むわけにはいかない。
「ごめんね」そう、オニキスとカーネリアンに謝罪する。
「いいんだよ。アタシのはただの自己満足なんだからさ」と、カーネリアン。
「それに付き合うだけだ」と、オニキス。



結果、オニキスとカーネリアンが残り。
コハクとヒスイは空路で帰宅予定。
棺桶はスピネルを転送してすぐ、破壊された。



そして、ホーンブレンドでの別れ際。

「あ、ありがと!」
オニキスへ向け、思い出したようにヒスイが言った。それからコハクに。
「オニキスがね、私の代わりに二回も撃たれちゃったの」と、説明する。
「へぇ・・・それはそれは。ヒスイがお世話になりました」
その後のオニキスの苦悩も、何もかもお見通しという笑みで、コハクは丁寧に頭を下げた。
「いや、こちらの方が救われた」
「救われ?なんで???」ヒスイが不思議そうな顔で聞き返す。
「・・・いい歌だった」
「あ、あれね」
オニキスの好きな曲をほんの少し口ずさんだだけ、と、ヒスイは照れ臭そうに笑って。
「ちゃんと届いて良かった」


「じゃあ、またね!」


コハクの腕の中から手を振るヒスイ。
「ああ、また」オニキスは頷き。二組は別れた。







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