「・・・・・・」
リビングの絨毯の上、ヒスイは今日もコハクのシャツ一枚で転がっている。
すぅすぅと寝息を立てるヒスイに近付くのは――マーキュリーだ。
「・・・・・・」
これは夢だと、わかっていた。

欲望を満たすための、夢。

マーキュリーはヒスイの口元へ布を持っていき、それを食ませ、結びつけた。猿ぐつわだ。
「!?」
口を塞がれたヒスイは驚き、目を覚ましたが。
「あぅうっ〜・・・!!」
声は出るものの、言葉は話せない。
“犯される”ことを予感したのか、猿ぐつわをしたまま逃げようとするヒスイを押し倒し、片脚を抱え上げるマーキュリー。
空いている方の手でベルトを外しジッパーを下ろすと、飢えたペニスがヒスイを獲物と認識し、より硬く尖り出た。
「っ!!」
それを見たヒスイが表情を強張らせるも。


「こうして“穴”を開けられるのは、慣れているでしょう?お母さん」


マーキュリーはにっこり微笑み、勃起ペニスをヒスイの膣内へと捻じ込んだ。
「――!!んふッ!!んー!!!」
ヒスイは嫌がり、泣きながら、両手でマーキュリーの体を押し戻そうとした。が、無視する。
マーキュリーもまた、夢の中の凌辱行為に慣れていた。
「・・・・・・」
すでに使用済のヒスイの膣にはまだ快感の種火が残っていたようで。
ズチュズチュ、マーキュリーが何度かペニスで擦り上げると。
ヒスイは、ひくっ、としゃくり上げ。抵抗が弱まった。
「んッ・・・ん・・・ぅ」
不本意に甦った快感から、両脚に力が入らないらしく。
「ん・・・」
かぱっと開いて、そのままマーキュリーを受け入れる。
「んぅ・・・っう・・・」
表情を歪め、震えながらも。
肉襞の間にとろみのある愛液を沸き立たせ、レイプペニスを濡らした。
そこで一気に抽送を加速させるマーキュリー。
「んんッ!!んッ!!ふぅ・・・ッ!!」
ヒスイの奥を突く度、そこから“先客”の精液が出てくる。
「・・・・・・」
全部吐かせてやるつもりで、突いて、突いて、突き上げて。
マーキュリーはヒスイの子宮を激しく揺さぶった。
「!!んぐッ!!う゛ぅぅ・・・ッ!!あ!!!!あぁ・・・ッ!!!!」
息子に子宮を責められるのは堪えるらしく、ヒスイが声を張り上げる。
シャツが透けるほど汗をかき、涙を溢しながら、両脚を閉じることもできずに、マーキュリーの下で悶えている。
「・・・・・・」
もっと醜く乱れればいい――と、思うのに。
どんなになってもヒスイは美しく・・・苛立ちを煽る。
そんな中。
「っ・・・」
失った分を取り戻そうとするかのように、子宮口の方から亀頭に吸い付いてきて。
若く敏感な鈴口を刺激した。
「は・・・」
熱く溶かされた腰をヒスイの股間に叩き込むマーキュリー。
シャツ越しにヒスイの乳房の僅かな膨らみを握り上げ、熟した先端を口に含み。
軽く噛んで、それと同時に射精した――





「・・・・・・」(またか・・・)
目覚めたマーキュリーが体を起こす。
前髪を掻き上げ、溜息。
時の流れが違う空間で修業をするようになってから、毎晩のようにヒスイを夢で犯し続けて、精神的疲労が溜まっていた。
あまり眠った気がしない。
この時はまだ淫らな悪夢から逃れる術を知らなかった。
「早く行かないと・・・」
体は怠いが、休んでもいられない。
身だしなみを整え、マーキュリーは部屋を出た。


別室で朝食を済ませ、師であるセレの元へ赴く。
「おはようございます」
礼儀正しく、朝の挨拶をする一方で・・・気付く。
セレの他に、もうひとり・・・
「コクヨウ義兄さん?」※人型※
祖母の弟にして、姉アクアの夫であり、純血の“銀”の吸血鬼の最後の生き残りだ。
「彼にも協力してもらうことにしたよ」と、セレ。
「そうですか、よろしくお願いします」
マーキュリーは軽く頭を下げた。
「・・・・・・」
黙ってマーキュリーを見るコクヨウ。
(誰かの修業に付き合うなんざ、まっぴら御免・・・)だが。
相手がマーキュリーなら、話は別だ。
「・・・・・・」
姉サンゴに良く似ているのだ。
優しげな顔立ち。少し癖のある銀の髪。
穏やかな立ち振る舞いも、どこか愁いを帯びたその表情も。
妻アクアもサンゴに似ている部分はあるが、あくまで“アクア”として愛しているため、以前ほどサンゴの面影を見なくなった。
その分――アクアの弟であるマーキュリーに面影を重ねるようになっていた。
天敵コハクの手前、思うような交流もできずにいたが、修業相手としてお呼びがかかり、密かに心躍らせていた。
「で、何すりゃいいんだよ」と、コクヨウ。←デレ隠し中。
すると、セレが言った。


「“ヴァルプルギスの夜”というのを知っているかね?」


「いえ・・・」
ヴァルプルギスの夜・・・マーキュリーは初めて聞く言葉だった。
コクヨウは知っているのかいないのか、セレの問いかけには答えなかった。
「モルダバイトでは、この言い方はしないからね」
知らないのも無理はない、と、セレ。
続くセレの説明によると、ヴァルプルギスの夜とは・・・
一年で最もこの世とあの世の境目が曖昧になる夜のことで。
死者があの世から迷い出ることも多々あるとか。
それらを寄せ付けないために、火を焚き、お祭り騒ぎをするらしい。
「観光のようなものだがね、後学のために見ておくといい。コクヨウ、君もね」
「・・・・・・」
ヴァルプルギスの夜の話が出てから、コクヨウの機嫌は悪く。
セレの勧めに、舌打ちで答えた。







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