「ヒスイ、どこ行っちゃったんだろ?」
ヒスイを探し、森の中を彷徨うジスト。
今回、魔法の使用は禁止されているため、例の特技も使えない。
「――ジスト?」
「スピネルっ!?」
木漏れ日の下、出会った二人。
敵同士ではあるが、お互い銃を構えることはせず。
「ママを探してるんだ」と、スピネル。
「ちょっと伝えたいことがあって」
「伝えたいこと?」
「うん、もしかしたらの話なんだけど――このゲーム、アクアの結婚が賭けられてるんじゃないかと思うんだ」
「!!そういえば・・・」
メノウ主催のイベントにつきものの、賞品の話が一切出ていない。
そもそも、コクヨウが積極的に参加している時点で不自然だ。
「皆、薄々気付いてるんじゃないかな」
気付いていないのは、ヒスイとサルファーくらいで。
恐らく今、その二人がムキになって点数を稼いでいる。
「だったら早く止めないとっ!」
「そうだね」
二人は銃声を頼りに、森の奥へと走っていった。
一方、こちら、森の広場では。
コハクとコクヨウ、リーダー同士の対決となっていた。
「手加減はしないでおくよ」
コハクの発言に。
「チッ!!死ぬ気でやってやらぁ!!」
そう言い返したものの・・・
両手に拳銃を持ち微笑む姿に、圧され気味のコクヨウ。
「久々だね、こうして闘り合うのは」
「一方的だろーが!!この極悪天使!!」
「でも、その娘が欲しいんでしょ?君は」
「そーだよ!!文句あっか!!」
「文句?ないよ。君がこの勝負に勝てば、ね」
「じゃあ、始めようか」
剣を銃に持ち変えても、コハクの動きが鈍ることはなかった。
無駄撃ちはせず、一発、二発と、恐ろしいほど正確にコクヨウを撃ち抜く。
ペイント弾のため、当たったところで怪我をする訳ではないのだが、なぜか寿命が縮む気がする。
「クソ・・・っ!!」
コクヨウは茂みに身を隠し、別れ際、メノウが言っていたことを思い出した。
『コハクとまともに闘り合ったって、勝てるワケないじゃん。とにかく時間さえ稼いどきゃ何とかなるから、死ぬ気で逃げろ』
メノウ曰く、これが必勝法らしいが・・・
「畜生!!騙されたとしか思えねぇ!!」
場面は代わり。森の高台――そこにはトパーズがいた。
片手で構えた銃の先にはコクヨウがいる。
敵軍のリーダーであることは容易に推測できた。
けれども、トパーズがトリガーを引くことはなかった。
そこに・・・
「よっ!」
「ジジイ、何の用だ」
微動だにせず、横目で睨むトパーズ。
「撃たないの?」
「・・・・・・」
「何、お前も結婚賛成派なワケ?」
「・・・・・・」
横を向いたまま、トパーズが黙っていると。
頭の後ろで両手を組み、メノウが言った。
「“銀”の男ってさ、何だかんだで情が深いよな」
「知るか」
そう吐き捨て、トパーズが銃を下ろす。
「――に、しても、コハクの奴、荒れてんなぁ・・・」
「双子の世話で、ここ数日、ヒスイとヤッてないからな」
いい気味だ、と、トパーズ。
「あー・・・それはマズいわー・・・」
ヒスイロス×日数=コハクの凶暴度
コクヨウの苦戦は必至・・・
「頑張れよー」届かぬ声援を送るメノウ。
広場を見下ろし。
「でも、ま、もうちょいで・・・お、きたきた」
リーダー同士の決闘場に現れたのは――ヒスイだった。
「コクヨウ!!私を撃てばいいわ!!」
「私、副リーダーだから!!配点高いよ!!」
狙撃銃を投げ捨て、広場の中心で両手を広げる。
スピネルとジストから話を聞いたヒスイは、チームAの勝利に協力することにしたのだ。
早く!と、コクヨウを急かす。
「私を撃って――」
「アクアと結婚式挙げて!!」
「撃てるワケねぇだろ!!」
草木の間から、コクヨウの声が返ってくる。
「なによ!お兄ちゃんが、怖いの!?」
「そうじゃねぇよ!!」
「テメーにゃ、もう手ぇ出さねぇ!!絶対に、だ!!」
「え・・・でもこれペイント弾・・・」
「うるせぇ!!」
コクヨウは広場に立ち、「何であろうと同じだ!」と、言い切った。
「はぁ???」
「成程、そういうこと」
ヒスイを抱きしめ、コハクが笑う。
「お兄ちゃん?どういうこと?」
コハクの腕の中、ヒスイはきょとんとしている。
「これを僕に見せたかったんですよね?メノウ様」
「そういうこと」
木陰の魔法陣が光を放ち、メノウが姿を現わす。
「コクヨウの“覚悟”、これでわかったろ?」
「!!ハメやがったな!!」
恥かしさから、真っ赤になったコクヨウが、メノウに掴みかかる中。
「それでどうよ?」と、コハクを見るメノウ。
「まあ、そうですね――合格、かな」
コハクはそう答え、チームBの敗北を宣言した。
勝利をチームAに譲ったのだ。
「お兄ちゃん!」歓喜に沸くヒスイ。
驚き半分、喜び半分で固まっているコクヨウを、メノウが覗き込み、得意気に片目をつぶった。
「言ったろ?コハクは何とかしてやる、って」
サバイバルゲームという名の演目は大団円を迎え。
閉会式――プロポーズタイムがやってきた。
チームメンバーに見守られ。
コクヨウから、アクアへ、一言。
「結婚、すんぞ」
「はぁ〜い
」
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