「あれ?メノウ様、起きてたんですか?」
「まーね、皆揃うって珍しいじゃん。盛り上がっちゃってさ」
続けて欠伸を交えながら、メノウが言った。
「ヒスイは?どうせヤッたんだろ?」
「ええ、まあ。今はぐっすり眠ってますよ」
「それにしても――ホント、ヒスイのこと甘やかしてるよな、お前」
「可愛くて可愛くて仕方がないんですよ」
ヒスイのために、常に何かしていないと落ち着かない。
「メノウ様だって――」
生活に欠かせない“水”。
安全で、味が良く、美容にも健康にも良い、最高品質のものをヴィレッジ全域に供給するため、水の精霊の力を借りているのだ。
「ま、娘の幸せほど嬉しいモンはないしさ」
「くすっ、ココアでも淹れましょうか、メノウ様」
「んじゃ、頼むわ。あ、そういやさ、グランドピアノ調律したのお前だろ?最初からトパーズに弾かせるつもりだったワケ?」
「来るのはわかってましたからね」
「お前らさぁ、それぞれ予定チェックしてんだろ?」※トパーズもコハクの予定をチェックしています※
どんだけ仲良いんだよ、と、メノウが笑う。
一方、コハクは苦笑いで。
「お互いを出し抜くために、仕方なく、ですよ」と、答えた。
翌日――
「・・・ん?」と、コハク。
パウダービーズのクッションで休憩をしているヒスイの顔面に、見慣れないものが装着されていた。
・・・アイマスクだ。
「あ、これ?トパーズに貰ったの」
「貰った?いつ?」
「今朝」
皆で朝食を済ませ、解散する直前に受け取ったのだという。
ヒスイ曰く。以前、トパーズが使用しているのを見て、興味を持ったらしい。
「私も欲しいって言ったら、持ってきてくれたんだよ」
「へー・・・そう・・・」
「ね、お兄ちゃん、似合う?」
アイマスク姿のまま、笑顔でコハクを見上げるヒスイ。
「・・・うん、似合うよ」(やられた・・・てっきり手ぶらだと思ったのに・・・)
トパーズは油断できない。
改めて、そんなことを思うそばから。
「ピアノも良かったよね、また聴きたいな」と、ヒスイはご機嫌だ。
「・・・・・・」←無言になるコハク。
愛され姫の優雅で贅沢な一日。
それは、トパーズの株をほんの少し上げた一日でもあった――
おしまい♪
‖目次へ‖‖後編へ‖