「・・・・・・」
ヒスイの体重は、それこそg単位で管理している。
人間ではないためか、インスタント食品を摂取した際、肉体に現れる変化が顕著だった。
やってくれたな、という目でトパーズを睨むコハク。
一方トパーズは、“こうなるのがわかっていてやった”確信犯的笑みを浮かべている。
不穏な空気・・・だが、ヒスイは構わず。
コハクの腕の中、得意顔でインスタント食品の感想を述べた。
「・・・お兄ちゃん?聞いてる?」
「・・・ああ、うん」
ヒスイのお腹が、インスタント食品で膨れていることに只ならぬ不快感を覚える。
コハクは生返事をしてから、ヒスイごと身を翻した。
「え!?お兄ちゃん!?どこ行くの!?」
「ホテルの部屋」




そして――

到着したのは、一階層の一角。
真っ白な壁に囲まれた、プール付きのコンドミニアム。
ヤシの木は勿論のこと、屋外にサマーベッドが設置されている、お洒落な南国風だ。
「一棟貸切にしたんだ」と、コハク。
室内のベッドにヒスイを寝かせ。
「・・・・・・」(本当は・・・)
プールで遊ぶ予定だった。ヒスイに似合う水着も浮き輪も用意していた。
(けど、やめだ)


「おにぃ・・・ちゃ・・・?」


下から見上げるヒスイの手首を掴み、空いている方の手をトップスに滑り込ませる。
「ひぁ・・・」
驚き、声をあげるヒスイの唇をキスで塞ぎ。
「ん・・・ぁ・・・」
舌を入れ、ヒスイの口内を濡らしながら、服を脱がせてゆく・・・
オフショルダーのブラウスと裾フリルのショートパンツ。
ブラトップも。ショーツも。着せたのは自分なので、手順に迷うこともない。



「あッ・・・んッ!」
ヒスイの膣を二本の指で愛撫するコハク。
にちゃっにちゅにちゅっぬちゅっ
巧みな指使いで愛液を練り上げる傍ら、ヒスイの肌に唇を寄せ、至るところを甘く吸う。
「あ・・・ふ・・・」
幸せに濡れた襞が、コハクの指の動きに合わせて波打っている。
「は・・・ぁ・・・」
揺らめく快感に、ヒスイは目を細めうっとりしていたが。
「あッ・・・あ!!」
ぐちゃぐちゃと、激しい波を起こされた途端、大きく目を見開いた。
「あッ!あ!!おにいっ・・・!!」
うねる膣肉。奥から子宮が流れ出しそうだ。
ヒスイは喘ぎ、コハクに抱き付いた。
「そろそろ欲しい?じゃあ――」
「あ!!う゛ぁ・・・」
コハクは、最後に指をこれでもかと深く入れ。
愛液を指に絡め取ると、そのままゆっくり引き抜いた。
「はぁはぁ・・・あ・・・」(ねばねばしたの・・・そとに・・・でて・・・)
膣口とコハクの指先が愛液の糸で繋がっている。
見なくても、感覚でわかってしまう。
「っ〜・・・!!」
ヒスイの頬が真紅に染まる。
糸引く指先・・・コハクはそれを口に咥え。ヒスイを見た。
視線を遣りながら、艶めかしい舌使いで、美味しそうに舐める。そして一言。
「挿れるね」



「あッあッ!あぁ・・・ッ!!」
ヒスイの手を握り、その指先にキスをしながら、コハクが腰を振る。
「これ、好きでしょ?」
男の蜜を滴らせながら、突き込んで。
「あッあぁ・・・あッあはぁ・・・ん
ヒスイの口から悦びの声が溢れた。
「んはッんふぅ
膣内で体積を増していくペニス。
押し上げられ、歪んだ小穴が、度々潮を吹いた。
「んぁ・・・ぁ・・・」(きもち・・・よすぎ・・・て・・・)
膣肉だけでなく、全身の肉が蕩けて、シーツに染み込んでいくような気がした。
そんな中、腰を引き寄せられ。
「は・・・
湿った子宮口が亀頭に沿って捲れてゆく・・・
唇には唇が与えられ。
「ん・・・ふ・・・
最高級の快感に、ヒスイがすべてを委ねた――その時。


「――ふぇっ!?」


コハクがペニスを抜いた。
それからヒスイの顎を掴み、その口元に先端を突き付ける。


「飲んで、ヒスイ」


ヒスイは、訳が分からないという顔をしながらも、言われた通り、ペニスを口に含み。
次の瞬間、精液が注ぎ込まれた。
「んん・・・ッ!!」
優しく喉を撫でられ、飲めると思った。
ところが、思うように飲み込めず。
ヒスイは精液を吐き戻し、むせた。
「えふッ・・・げほッ・・・」
「飲めない、でしょ?」


「お腹がいっぱいで」


「あ・・・」
コハクに指摘された通りだった。
胃に落ちるというより、食道に詰まるような。
とにかく、空きスペースがない。明らかに食べ過ぎだ。
「おにいちゃ・・・ごめ・・・」
タオルでヒスイの口元を拭うコハク。
「・・・いいよ。こっちに出すから」
コハクは伏せ目がちに微笑んでから、ヒスイを押し倒し。その股ぐらに腰を沈めた。
「――ッあッ!!おにぃっ・・・!!あぁぁぁ!!!」
ビュッ!ビュルッ!射精の脈動。続けて熱い精液がビュルビュルと送り込まれ、最奥にネットリ張り付く。
「あ・・・あ・・・
コハクはヒスイを抱え直し。体勢を変えながら、何度もヒスイの中に精を放った。



濡れ場の、静寂。

絶頂を重ねたヒスイは沈黙し、動かない。
精液を逆流させている膣穴は一向に閉じる気配がなく。
コハクはヒスイの膝裏を持ち上げ、再びペニスを挿入した。
「・・・愛してるよ、ヒスイ」
下がったままになっている子宮にコハクが亀頭を擦り付けると。
「ひッ・・・!!」
短い悲鳴。ヒスイは一瞬身を強張らせたが、すぐに脱力した。
」「」「」「


快楽の涙が、翡翠色の瞳から輝きを攫っていく一方で、愛の象徴ともいうべきハートの光がそこに刷り込まれていった――


「――――





「ん・・・」


セックス明けの朝――


「おはよう、ヒスイ」
「おはよ、おにい・・・ん?」
コハクが、ミルクティーを運んできた。
ここまでは、いつも通り・・・だが。
「え?」(紙コップ???)
しかも味がいつもと違う。ヒスイが首を傾げていると。
「どうかな?ティーパックを使ってみたんだけど」
便利だよね、と、コハクは笑顔で。
「あ・・・うん」(あれ?なんか・・・おかしいような・・・)





それから数日――赤い屋根の屋敷、夫婦の寝室。


昼近くになってもまだ、コハクとヒスイはベッドの中にいた。
「もう一回する?」
ヒスイの頬にキスをして、コハクが尋ねる。
「ん・・・でも、もうすぐお昼だし。あーくんもまーくんも、お腹空かせてるんじゃ・・・」
「大丈夫だよ。あーくんとまーくんにはカップラーメンがあるから」
「え?今日も?」
その問いに、答えはない。
「・・・・・・」(お兄ちゃんが・・・お兄ちゃんじゃないみたい・・・)
コーパルから帰国して以来、コハクの手料理を一切食べていない。
たっぷりエッチをして、その後は夜までデート。
それはそれで楽しかったが。
ヒスイの食事は主に外食となり。残された子供達はインスタント食品。
「・・・・・・」(まずいわ・・・これは・・・)
流石に、ヒスイも気付く。


(お兄ちゃん、怒ってる!!)


「あーくん!まーくん!」
ヒスイはデートの誘いを断り、走って子供達のもとへ向かった。
「緊急会議よ!!」



――双子の部屋にて。


「あー!!コハクのメシ食いてぇ!!」
金髪を掻き毟るアイボリー。
「今更都合良すぎるよ。あーくん」
マーキュリーはこの状況を冷静に分析していた。

なぜ、こうなったのか。

「・・・そうよね。お兄ちゃんに“いらない”って言ったの、私達だもんね」
ヒスイもいつになく神妙な表情だ。
結局、ヒスイも子供達もコハクに餌付けされていて。
コハクの手料理なしでは生きられないのだ。
「ヒスイ〜・・・何とかしてくれよぉ〜・・・」と、アイボリー。
マーキュリーも弱音こそ吐かないが元気がない。
ヒスイはしばらく考え・・・言った。
「お兄ちゃんに、謝ろう!!」
「あ!そうだ!」続けて、閃く。


「反省文を提出すればいいわ!!」


「書くわよ!あーくん!まーくん!準備して!」
「おう!」「はい!」
双子兄弟が揃って頷く。
「お兄ちゃん!待っててね!!」





――こちら、リビング。

そこには、コハクと・・・メノウの姿があった。
「そろそろ許してやれば?」メノウは苦笑いだ。
「“便利”ってのは、それだけで価値があるモンだろ?」
「まあ、それはわかります。実際、ヒスイと過ごせる時間は増えたし。でも、物足りないんですよね」
真面目に工場見学をして。
インスタント食品が“どういうものか”は理解している。
「だからといって、僕の役目を奪われるのは困るんです」


食を通して、愛を伝えたいから。


「そのために使う時間は惜しまない」と、笑うコハク。
「そろそろヒスイもわかってくれたと思いますし」


時刻は、午後2時。


「さて、と」コハクが立ち上がる。
「メノウ様も食べていきますよね?」
3時のおやつにピサを焼くという。
「時間があったんで、ピザ窯作ったんですよ」
今日からまた腕を振るうぞ、と。エプロンを腰に巻き、心機一転。
そんなコハクをメノウは笑顔で見送った。
娘と孫の健康を心配して来たが、ひと安心だ。
(良かったな、ヒスイ)



待ちに待った、餌付けの時間。



(・・・なんてな)







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