「・・・ん」
うっすらと瞳を開けるヒスイ。
裏庭の見慣れた景色。
コハクではない、けれどよく知っている男の匂いに抱かれて。
(あれ?私・・・寝ちゃった・・・の?)
「そうだ!お兄ちゃんっ!!」
ガンッ!!
慌てて立ち上がり、オニキスの顎に頭突きを決める。
「・・・・・・」
「あ・・・おはよう、オニキス」
「・・・おはよう」
オニキスの朝の挨拶を待ってから・・・
「ごめん・・・痛かった・・・よね?」
「・・・・・・」
「痛い」と口にすることはなかったが、顎を撫でる仕草から痛みのほどは推し量れた。
「・・・そろそろ夜が明ける。行ってこい」
「ん!ありがと!」
オニキスに何度も手を振って走り出す。
“いちばん大切なものを、いちばん大切にする”
(私にはそれしかできないから)
「お兄ちゃんっ!!」
モルダバイト城下町の閑静な住宅街。
庭とテラスが付いた二階建てのコンドミニアム。
「505号室・・・ここね」
(何でこんなところに・・・)
数々の疑問はあれど、そんなものは後回しで。
ピンポーン。
「・・・・・・」
チャイムを押して待つ・・・が、返事がない。
ピンポーン。ピンポーン。
「・・・おかしいわね・・・」
室内のコハク。
ピンポーン。
(かまってられるか)
「一刻も早く編み上げて、家へ帰るんだ」
もうクリスマスまで待てない。
とにかく口実があればいいのだ。
思い立ったその日に大量の毛糸を購入し、不眠不休で編んでいた。
ピンポーン。ピンポーン。
「・・・うるさいなぁ・・・今それどころじゃない・・・」
(待っててね、ヒスイ。もうすぐ帰るよ)
屋外のヒスイ。
「ここで間違いないハズなのに・・・」
逸る気持ちを抑え、様子見に裏手へ回る。そこで・・・
「あ・・・」
窓ガラス一枚隔てた先に、最愛の夫の姿。
「お兄ちゃんっ!!」
庭に面していたのは客間だった。
家具も一通り揃っていて、なかなか快適そうな部屋である。
そこに、ベランダからヒスイが転がり込んだ。
「ヒ・・・スイ?」
コハクの傍らには毛糸玉がゴロゴロと転がっていた。
驚きで、手に持っていた編み棒をポトリと落とす。
「お・・・おにぃ・・・ちゃ・・・」
「・・・もうすぐクリスマスでしょ?全部編み上がったら帰ろうと思ってたんだけど・・・」
困った様に笑って、ヒスイを見つめる。
「そんな顔しなくても、トパーズの分だってちゃんと・・・」
(ファンシー柄の腹巻きだけど)
「おにいちゃんっ!!」
コハクの言葉を最後まで聞かずに、飛びつくヒスイ。
「ヒスイ・・・っ!!」
愛しい塊を強く、強く、抱きしめて。
「キツイこと言ってごめんね」
すかざす謝る。
ヒスイの髪に顔を埋め、深く・・・香りを吸い込んで。
ぶんぶんとヒスイが頭を振った。
開口一番、謝ろうと決めていたのに、涙が溢れて。
“お兄ちゃん”以外口から出てこない。
「ひっ・・・く」
ヒスイは涙と鼻水の啜り泣き状態だった。
「・・・好きなんだ」
コハクの告白。
「いつも言ってるけどね」
腕の中でこくこくとヒスイが頷いた。
「う゛〜・・・っ・・・おにいちゃぁ・・・」
「よしよし・・・大丈夫だよ」
甘い声でヒスイをあやす。
「・・・ヒスイがトパーズを想う気持ちも全部まとめて愛すから」
一息に告げる・・・愛の言葉。
一緒に生きていこう。
これからも、ずっと。
もう離すまい、離れるまいと、抱きしめる腕に力を込める。
「お・・・にいちゃ・・・ごめ・・・なさ・・・」
ふっ・・・うぇぇえん!!
不完全な謝罪の言葉を精一杯吐き出して。
泣きじゃくるヒスイの温もりに。
「好きだよ、ヒスイ」
キスをして・・・もうムラムラと。
13日間大人しくぶら下がっていたものが、収まる場所を思い出して、元気良く勃ち上がった。
「・・・いい?」
コクリ。
早速服を脱がせにかかる。
仲直りの仕上げはやっぱり、愛情確認SEXで。
ベッドの上。裸で向き合い、唇を舐め合って、キスをする。
お互いの存在を確かめるようにギュウギュウと舌を絡め、いつもの唾液交換。
(ああ・・・ヒスイの味・・・)
(ああ・・・おにいちゃんの味・・・)
そして、二人の味。
与えて、与えられて。飲んで、飲まれて。
「んっ・・・」
「ヒスイ・・・」
「おに・・・ちゃん・・・」
二人ともキスだけでイキそうになっている。
触れ合う肌の心地良さ。
これぞ至上の悦びと、寄り添って――
シーツの上に広がる銀髪。
「・・・ずっとね、何て言えばいいのか考えてた」
ヒスイの唇を指でなぞって・・・そこにキス。
「・・・嫌なんだ。この唇に、僕以外が触れるの」
たとえそれが息子でも。
“まとめて愛す”宣言をしたばかりだが、ソレとコレとは話が別なのだ。
「・・・うん。ごめんね、おにいちゃん」
ヒスイの瞳からは、ボロボロと涙。
コハクと再会してから、ずっと泣きっぱなしだった。
「わたしだって・・・おにいちゃんがほかのヒトとキスしたらイヤだもん」
「するわけないよ。僕の“世界”にはヒスイしかいない」
熱くなった唇同士を何度も重ね合わせて・・・
「今回だけ・・・アト残してもいい?」
ヒスイの肌は軽く吸うだけですぐ赤くなる。
「この唇にも、肌にも・・・触れていいのは僕だけ・・・」
独占欲、大爆発。
ヒスイに引かれては困るので普段は堪えているのだが、今回ばかりは我慢できない。
ヒスイは“僕のもの”であると、再認識させてこそ意味があるのだ。
「あ・・・おにいちゃ・・・ん・・・」
首筋、胸元、腕、腹、腿、足の甲まで。
ほとんど間隔を空けず、順番に吸っていく。
「んっ・・・そこは・・・や・・・あぅ・・・」
ジュルッ。
しっとりと濡れて息づく場所もしっかり吸って。
(一滴の愛液だって、他の奴にくれてやるもんか)
「ヒスイは・・・僕のものだ」
「うん・・・わたし・・・は・・・おにいちゃんの・・・もの」
ビクン、ビクンと体を震わせて、ヒスイが熱っぽく繰り返す。
「あっ・・・あぁ・・・んっ!!!」
久しぶりなので、とにかくヒスイの顔が見たい、キスをしたい。
・・・と、いうことで正常位。
斜め上から腰を振って膣口の上下を強く擦る。
「んっ、ぅ、んっ、あ、あっ、あぅっ!」
ヒスイの太股を大きく開いて身を乗り出し、ペニスを奥深くまで。
「!!あ・・・ああ・・・おにいちゃ・・・」
従順に受け入れるヒスイ。
そこ加える、愛動。
恥骨を押し付け、ヒスイの過敏な小粒、花ビラ・・・全て、円を描くようにしてグリグリ捏ねる。
「あん!あ!はっ!あ・・・!!」
ヒスイが美しく仰け反って。
「・・・綺麗だよ・・・もっと見せて・・・ヒスイ」
コハクは軽く腰を引いて、ヒスイの入口付近を小刻みに素早く擦り始めた。
「んっ!あ、ああんっ!おに・・・えっ・・・ぅ」
「ヒスイ?」
泣きっぱなしのヒスイがさらに涙の量を増やしたので、ぎょっとして。
「痛いの?」
動きを止めて覗き込む。
「おに・・・ちゃ・・・羽根、見せて・・・」
「羽根?うん」
ヒスイのリクエストに応えて、コハクが熾天使の羽根を広げる。
バサッ・・・
抜け落ち、降り注ぐ、金色の羽根。
ヒスイは黙って瞼を閉じた。
目をつぶっていても、感じる、光。
お兄ちゃんのいない“世界”は寒くて真っ暗だから。
私には、この光が必要なんだ。
お兄ちゃんの腕の中。
きっと私は、ここでしか生きられない。
「ヒ・・・スイ?」
両手を伸ばしてコハクの頬を包む。
「おにいちゃん・・・好き」
「ヒスイ・・・」
コハクの頬がほんのり赤く染まった。
ヒスイからの告白は、それこそ泣きそうなくらいに嬉しくて。
「・・・も・・・いなくなっちゃ・・・や・・・」
「ごめんね・・・もう・・・どこにもいかないから」
上から覆い被さって、再び強く抱きしめる。
「好きだよ、ヒスイ。大好きだ」
「くす・・・おにいちゃん、今日何回も言ってるよ」
ヒスイは泣きながら笑った。
「うん・・・でも・・・何回言ったっていいよね?」
「好きだよ」と、コハクがキス。
「わたしも、すき」と、ヒスイがキス。
「好きで好きでどうしようもない」
コハクがまたキスをして。
「愛してるよ、ヒスイ」
「わたしも、あ・・・」
照れ屋なヒスイの口からは滅多に出ない愛の言葉。
一旦詰まるが、意を決して。
「愛してるっ!」
(かっ・・・可愛いぃぃぃ!!!コレだよ!コレ!!)
「んっ!あ・・・ん・・・い・・・ぁ」
愛を再認識したところで、ヒスイの下半身に感覚が戻った。
ひときわ敏感になって、内側のコハクを感じる・・・
「お・・・にいちゃん・・・もっと・・・」
「うん」
より深い繋がりを求めて。
ヒスイの膝の裏側に両腕を通し、脚を開かせると、腰が浮いて性器が顕に露出した。
「あ、ああん!」
極めて結合の深い体位。コハクのペニスはヒスイの子宮まで容易に達した。
「う゛っ!んっ・・・!はぁ・・・はぁっ!」
牙を剥いてヒスイが喘ぐ。
愛液同様、快感の証だ。
もっと、見て、確かめたい。
ヒスイが、僕のものになっているところを。
「・・・感じる?ヒスイ。繋がってるよ」
「う・・・うん・・・ああんっ!ああ!」
いやらしく腰を動かしながら、結合部分と乱れるヒスイをじっくりと鑑賞する。
「も・・・そんなに・・・がまんできな・・・」
「いいよ。いつイッても。そうしたら僕もイクから」
1回で終わらせる気は毛頭ない。
ご無沙汰だった分までとことん愛し合うつもりだ。
まだまだ・・・鑑賞し足りないのだ。
足首を掴んで、脚を少しずつ持ち上げていくと、ヒスイの全身と割れ目に埋まる自分のペニスが更によく見えた。
ここは我慢のしどころで、激しく突き上げてしまいたいところを、ゆっくり・・・
「あ・・・ん」
深く、浅く、挿入して鑑賞を続ける。
焦らされて更に溢れるヒスイの愛液で、股間からネチャネチャと湿った音が漏れた。
「はぁっ・・・はぁ・・・おにいちゃぁ・・・」
ペニスを深層まで迎え入れたくて、コハクの腰に巻きつけたヒスイの両脚に力が入る。
「お・・・おに・・・ちゃ」
ブシュッ。ブチュッ。ブチュ。チュプッ。
声こそ出さないが、コハクの息づかいも荒く。
「あ、あ、あ、んはっ!!」
ヒスイも膨れる部分はすべて膨れて。
二人、汗まみれになりながら、なりふり構わず擦り合う。
「っ・・・ヒスイ」
ついに先端から迸り、殆ど同時にヒスイの奥が痙攣した。
「お・・・にいちゃ・・・あぁぁぁ!!!」
繋がったまま余韻に浸るひととき。
熱い飛沫をたっぷりと浴び、満足気なヒスイ。
コハクで満たされたカラダは輝きを増し、色気を漂わせていた。
「ね、ヒスイ・・・」
髪を撫でて額にキス。
「こっちも・・・入れていい?」
コハクの指が後ろの穴に伸びる。
「うん・・・いいよ」
ヒスイが嫌がるので、普段はあまり挿入しない。
とはいえ日々のマッサージは欠かさず、その気になればいつでもアナルセックスできるようにしてあった。
開発の度合いは200%。
膣と同じように抽送しても全く問題ないほどに。
幸い天然のローションはたっぷりあった。
股の間に残った愛液を指先で掬い、アナルへ塗りつける。
四つん這いの後背位で、挿入開始。
「ん・・・ぅ」
「いけそう?」
「ん・・・だいじょうぶ・・・」
「痛かったらすぐ言ってね」
「うん」
「うっ・・・あっ・・・あぁ・・・」
難なく亀頭が沈む。
締め付けが強いのは入口付近だけで、その先は割合広くなっているのだ。
「くっ・・・う・・・」
(・・・快感を得たくてしてる訳じゃない)
確かめたいだけ。
(ヒスイがココを僕に許してくれるかどうかが重要で)
「おに・・・ちゃ・・・きもち・・・い?」
「うん・・・僕はね・・・気持ちいいよ」
だけど、ヒスイはそうじゃない。
(痛みを感じることはなくても、快感もないはずだ)
「すぐ終わるから・・・ちょっとだけ我慢して・・・ね」
「いいよ・・・うっ・・・おにいちゃんが・・・きもち・・・いいなら」
淫らな格好で、シーツに頭を擦りつけ、苦手な違和感に耐えている。
僕のために。
(この気持ちが嬉しいから・・・)
不安になると求めてしまう、愛情確認の場所なのだ。
「ヒスイ・・・好きだよ」
いつも思っていることなので、自然に口から出てしまう。
ちゅくっ・・・
「あ・・・」
コハクの指が割れ目に沿って。
優しく撫で回されるのが嬉しい。
「あ・・・はぁ・・・ん」
ヒスイが悦びに身を震わせて喘ぐ。
「ヒスイはこっちでイッてね」
弾む指先で、くちゅくちゅと掻き乱されて。
快感の極み。
「うっ・・・んはっ・・・おにいっ・・・」
涙が溢れる。
「ほらほら。泣かないの」
「おに・・・ちゃ・・・ごめ・・・んね」
「それはもういいから・・・ね?」
「ん・・・ふっ・・・あ・・・あ」
宥める声。交わる音。
ココロもカラダも溶け合って。
確かめる、愛。
ここはどこだろう。
と、考える余裕ができたのは、朝から晩まで愛し合った後だった。
「おにいちゃん・・・ここって・・・」
「ああ、間借りしてるんだ。誰の家だと思う?」
「全然わかんない」
「くす・・・あとで一緒に挨拶にいこう」
「ん!」
「でもまずは・・・」
顔を見合わせ、声を揃えて。
「「家へ帰ろう」」
赤い屋根の屋敷。
14日ぶりの帰宅。
「おいっ!ジストっ!!起きろっ!!」
乱暴に叩き起こしてくるサルファー。
「むにゃぁ〜・・・何だよぉ〜・・・」
寝坊すけジスト。
トパーズほどではないが朝には弱い。
「父さんが帰ってきた!!」
「ホントっ!?」
眠気ぶっ飛び。ベッドから飛び降り。
「ほらっ!行くぞっ!!早くっ!!」
サルファーが急かす。
その声も表情もはつらつとして。
「おうっ!!」
ジストも元気いっぱい。
ドダドダドダ・・・!!
階段を駆け下り、庭で水撒きをしているコハクの元へ。
「おい!父さんに“理由”聞くなよ!?」
空気を読むのが下手なジストに前もって釘を刺すサルファー。
「“なんでいなくなったのか”とか!“どこいってたのか”とか!」
「え?聞いちゃダメなの?」
「当たり前だろっ!大人の事情ってヤツが色々あるんだよ!!」
「大人の事情??なんだかよくわかんないけど・・・わかったっ!!」
競うように建物を走り出て。
「父さんっ!!」「父ちゃんっ!!」
エプロン姿のコハクに飛び付く兄弟。
ははは!
二人をしっかりと受け止め、いつもと同じコハクの笑い声。
羽根を広げ、子供達を包み込んで。
「ただいま。心配かけてごめんね」
「ううんっ!」
コハクのエプロンに顔を擦りつけ、サルファーは嬉し泣き。
(ああ、やっと・・・帰ってきた。“我が家”へ)
メノウの家であることも忘れ、子供達の熱烈な歓迎に感無量。
「父ちゃんっ!おかえりっ!!」
サルファーの分までジストが。
「おかえり!」「おかえりっ!」「おかえり〜っ!!」
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