「スピネル!頼む!匿ってくれ!!」


国境の家に逃げ込んですぐ、隠れ場所を探し。
双子兄弟は、朝までそこで過ごした。
分身のコハクが、ヒスイに対し『朝までたっぷり可愛がってあげる』と、言っていたが、オリジナルも考えることは同じなのだろう。
ヒスイを連れ、国境の家にコハクが現れたのは、夜が明けてからだった。

一晩中、愛され。

いつものヒスイなら、眠そうに欠伸をしているところだが・・・
「あーくん!どこっ!?」
隠れんぼの末、アイボリーを発見し。
「今日は私がお仕置きするからねっ!」と、言った。
「お兄ちゃんを増やしたの、あーくんなんでしょ?」
いつにない剣幕で迫ってくるヒスイに、若干怯みつつ・・・
「な・・・なんだよ。ヒスイだってよろこんでたじゃんか!」
アイボリーがそう言い返す、と。
「!!よろっ・・・こんで・・・なくはないけど・・・」
じわじわ、ヒスイの顔が赤くなり。
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから・・・」
9歳の子供相手に負けそうになる。
「やーい!ヒスイのエロー!!お仕置きする資格なんてあんのかよ」
調子に乗って、ヒスイをからかうアイボリー。しかしその時。
「いてぇっ!!まー!!なにすん・・・」
「言い過ぎだよ、あーくん」
マーキュリーに、お尻をつねられ。
一方で、コハクが尋ねた。
「僕にお仕置きされるのと、どっちがいい?」


「そんなの!ヒスイに決まってんじゃんか!」


アイボリー、即答。
コハクは、「じゃあ決まりね」と、笑いながら。
「ヒスイ、頑張って」
ヒスイの肩を抱き、耳元で励ます。
その様子からして、ヒスイに“お仕置き”を勧めたのはコハクのようだ。
子育て下手で、躾けらしい躾けなどしたことがないヒスイにとっては、貴重な“親”体験なのだ。
「じゃあ、お尻ペンペンする!」と、意気込むヒスイ。


「――だったら、これを使え」


そう言って、ヒスイに金属バットを持たせたのは・・・トパーズだ。
「トパーズ!?なんでここにいんだよ!?」
アイボリーの声が裏返る。
「仕事の打ち合わせがあって」
トパーズに代わり、スピネルが答え。
「金属は重いから、ママにはこっちの方がいいんじゃない?」
ヒスイに違うバットを持たせた。
「!!」(結局ケツバットかよ!!俺の兄弟S率高すぎねぇ!?)
マーキュリーにつねられたお尻がまだヒリヒリする。
「ヒトのケツ、どんだけいたぶる気だよ・・・」
ボヤくアイボリーに。
「大丈夫、あれはプラスチック製だから」と、スピネルが耳打ちした。
「・・・・・・」
どうあっても、ケツバットからは逃れられない運命らしい。
(コハクの圧力もハンパねーし・・・)
「・・・しゃーねぇ。島流しよりマシだ」
アイボリーは覚悟を決め、ヒスイにお尻を向けた。
「じゃあいくよ!」と、ヒスイ。
「おう!こいや!!」と、アイボリー。

そして・・・

「あーくん!めっ!!」※めっ=だめだよの略。

ヒスイの拙い叱り文句と共に、ぽこんっ!一撃入るが。
(思ったより全然痛くねぇし)
何より、ヒスイの気を引いているという実感が湧いてきて、嬉しいとさえ思う。
(ケツバット、悪くねぇかも・・・)
ついつい表情が緩みがちになるアイボリーを見て。
「・・・・・・」以下、マーキュリーの心の声。
(叩かれてよろこんでる・・・あーくんって・・・)


やっぱり、Mっぽい。


・・・こうして、皆が見守る中。
ヒスイ、初めてのお仕置き。




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