「くっくっく・・・お前の言うとおりだ」
笑い声と共に、調教師が目元の仮面を外す。
現れたのは、オニキスの顔。
髪の分け目を整え、ヒスイを見ると。
「では、そうするとしよう」
「オニキスの・・・そっくりさん???」
未来の夫に対し、あまりの言い草だが、ヒスイはまだ信じていないようで。
「・・・本物だ」
オニキスは溜息ひとつ。それから、ヒスイの顎を掴み、唇を重ねた。
いささか強引に舌を割り込ませ、しっかりと味を確かめさせて。
「・・・わかったか?」
「うんっ!」



清楚なドレスを着せられていたが、オニキスの手で脱がされる。
“調教”を焚き付けたのは自分なので、ヒスイは大人しくしていた。
「ヒスイ ――」
一糸纏わぬ姿となったヒスイを抱擁するオニキス。
そのままベッドへ横たわらせ、ヒスイの上に乗った。
「お前は何もしなくていい」
そう言ったあと、オニキスの手が乳房を包み。
「あ・・・」
(わたしの・・・おっぱい・・・ちいさいのに・・・)
揉まれることで、柔らかさを知る。
僅かな脂肪を、大きな手で、優しく捏ね回されているうちに。
乳悦とでもいうのだろうか・・・ひとつ目の快感に目覚める。
次第にそれが先端の乳首へと集まり。
力を入れているわけでもないのに、膨らんでくる。
「あ・・・オニ・・・」
背中へと回された両手に、薄い体を持ち上げられ。
桜色の尖りがオニキスの口の中へ入っていった。
「ふぁ・・・」
温かい粘膜に包まれる・・・乳輪までたっぷりと。
「ん・・・ふぅ・・・」
少し長めの前髪が鎖骨をくすぐり。
恥かしい行為なのに、なぜか安心する。
陰唇は自然と綻んで、膣口には愛液が浮き出ていた。

つぷ・・・ッ。

そこにオニキスの人差し指が半分ほど挿入される。
「あッ ――」
驚きもあったが、それ以上に。
ふたつ目の快感と呼べる痺れが、脚の付け根にまで広がって。
「不快ではないか?」というオニキスの質問に、首を横に振って答える。
オニキスは、ヒスイの膣口が自力で呼吸しはじめるまで、浅瀬でゆっくりと人差し指を往復させた。
「あ・・・ぁ・・・」(なんだろ・・・これ・・・きもちいい・・・かも)
オニキスの指は、ぬるぬるとした感触で・・・ぬちゅッ!ぬちゅッ!
塞がりがちな肉の中を何度も何度も貫通した。しばらくそれが続き・・・


「あ・・・んんッ・・・はぁ・・・」


指を抜いても、刺激を欲して、ヒクヒク、動くようになると。
オニキスは指の腹で、くちゅくちゅ、そこを撫で回した。
「ん・・・ぁ・・・」
膣口が引き攣れる・・・
すると、お腹の底から甘い声が迫り上がってきて。
「あ・・・あぁぁん・・・ッ!!」
淫らな喘ぎとなって、ヒスイの口から溢れだした。
「あぁ・・・ッ!!あ!!!」
二本に増やされた指が、膣内で動き出す。
オニキスの愛撫には微塵の痛みもなく、ただひたすら、気持ちいい。
「あッ・・・あッ・・・」
ヒスイは仰向けのまま、両手で枕を握り締め、感じていた。
ねちゃねちゃ・・・
濡らせば濡らすほど、鳴らせば鳴らすほど、オニキスの指が激しく動く。
それが嬉しくて。
「あッ・・・オニ・・・キスぅ・・・」
ヒスイが両脚を拡げる・・・中心部から、更にいやらしい音が漏れ。
「あッ・・・んんッ!!!」
耳でも快感を覚えてしまう。
「あッ!あ!!あッ・・・あぁんッ!! 」



「あッ!!んん・・・ッ!!」
オニキスの指は、処女膜の手前で必ず引き返す。
そのもどかしさに眉を寄せるヒスイだったが。
「あぁ・・・ッ・・・!!!」
挿入されると、悦びで喉を逸らしてしまう。
「あ・・・はぁ・・・」
いつしか、下半身の感覚がなくなっていた。
ビクン!ビクン!と快感に跳ねるばかりで。
開ききった膣口から、愛液が止まらなくなっていることさえ、わからない。
「はぁはぁ・・・」(わたし・・・どうなっちゃったの・・・?)
下を向いて確かめようとするも。
「まだ知らなくていい」
オニキスの手で上を向かされ、口づけされる。
「んふ・・・ぅ・・・ッ!!!!」
同時に、指の抜き差しが激しさを増し。
下腹部に、怒涛の快感が押し寄せた。
「あッ・・・あぁ・・・ッ!!い・・・・・・んはぁッ!!」
オニキスのシャツを掴み、腰を揺するヒスイ。
ぴちゃぴちゃと、愛液を撒き散らしながら、無我夢中で、快感を膣奥に溜め込む。
本能で、オーガズムに突入しようとしているのだ。
「あ・・・あぁんッ!!ふ・・・」
(もうちょっとで・・・なんか・・・)
快感が、別のものに昇華される気がした。

ところがそこで。

「ふぁ・・・ッ!?」
オニキスの指が膣穴から撤退した。
「はぁはぁ・・・な・・・んで・・・?」
唖然とした様子で、ヒスイが尋ねると。


「この先は、結婚してからだ」


「・・・けち」口を尖らせ、ヒスイが呟く。
体を横向きにすると、白く濁った愛液が、どぷりと太腿を伝った。
オニキスはヒスイの頭を撫で、頬にキスを落として言った。
「結婚前に逃げられては困るからな」
「!!にっ、逃げないわよっ!!」


「・・・たぶん」



一方こちら・・・本殿入口では。

腕組みしたローズが立っていた。かれこれ1時間になるが・・・
離れの宮殿から、シンジュが戻ってくるのを待っていたのだ。
そして、すれ違いざま。
「全部嘘よ」
ローズの発言に、シンジュが無言で足を止める。
「・・・・・・」
オニキスらしき調教師が、姿を見せた時点で、薄々気付いてはいたが。決定打だ。
「・・・嘘は嫌いです」と、シンジュ。
「悪かったわ。ごめんなさい」
「・・・オニキスは、あなたがこうして自白すると信じていたのでしょう」
だからこそ、あの場で口にしなかった。
(私も借りができてしまったことですし)
「・・・今回だけは見逃します」
「シンジュ・・・!!」
途端に、ローズらしい笑顔が戻る。
ジンジュは慌てて。


「いいですか!今回だけですからね!!」




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