「ん・・・」
夜明けと共に、ヒスイが目を覚ました。
「・・・・・・」
そのまま言葉を失う。初夜の記憶が――ない。
(どうなったの???確かローズの部屋でヤケ飲みして・・・)
ほんの少し、お酒の力を借りて“好き”と、言ってしまおうかと思った。
が、そうそう上手くいく筈もなく・・・ワインの香りが部屋中に漂っている。
(たぶんこれ、大失敗だわ・・・)
ベッドの中、恐る恐る向きを変える・・・オニキスと目が合った。
片肘をつき、ヒスイが起きるのを待っていたのだ。
「お・・・おはよ」
気まずそうに挨拶するヒスイ。
「おはよう」
オニキスはいつもと変わらない様子だった。
「えーと・・・あの・・・私、夕べのことよく覚えてないんだけど・・・えっち、したの?」
「確かめてみるか?」
オニキスが笑う。
「え・・・でも・・・」(ちゃんと“好き”って言えてないし・・・)
酔った勢いで言っても意味がないことぐらい、本当はわかっていた。
ところがそこで、オニキスの口から思わぬ言葉が出た。
「その件はオレも反省している」
「え?」
「無理はしなくていい。今は、頷いてくれるだけで充分だ。ヒスイ――」


好きだ。


ヒスイの頬を撫で、そう告げたあと、唇を重ねる。
愛しさが、もう、抑えきれない。
昨晩は、クンニリングス以外一切しなかった。
「お前のすべてを愛し尽くしたい」
唇を離し、今度はそう述べる。
ヒスイは頬を染めて笑い。
「うん、いいよ」と、答えた。




オニキスが上、ヒスイが下で、重なる体。

「ヒスイ」「オニキス」

互いに名前を呼び合い、口づけを交わす。
「ふぁ・・・」(した・・・とける・・・)
熱いオニキスの舌に搦め取られ、自身の舌の感覚がなくなってゆく・・・
それに伴い、頭の奥とお腹の奥がじんと熱を持って。
「はぁはぁ・・・」
女としての本能がヒスイの体に様々な変化をもたらしていた。
濡れる膣。乳首もクリトリスも朱に色づき。男の視線を誘う。

オニキスはヒスイの首筋を強く吸いながら、小振りの乳房を手にした。
「んっ!!あ・・・はぁ・・・」(なんか・・・あつい・・・)
吐息を漏らし、瞳を伏せるヒスイ。
揉まれて。全身から汗が絞り出される。
乳首にキスを受けたあと、そのままオニキスの口内へ吸い込まれ。
「あっ・・・!!」
そこに舌が絡みつく。
「ふぁ・・・あ・・・」
オニキスの温度は知っているつもりだったが、はるかに熱く。
乳首まで溶かされてしまいそうだ。
「はぁ・・・あ・・・」
オニキスの下、ヒスイが身をくねらせる。
膣に生じた疼きを誤魔化そうと、両膝を擦り合わせていると。
脚の付け根の隙間に、オニキスの手が差し込まれた。
すぐに膣口を見つけ、指先が入り込んでくる。
「あぁっ・・・ん!!はぁはぁ・・・」
肉と肉の間に張り巡った愛液を紐解かれ。
浅いところを優しくまさぐられているうちに、ヒスイの脚は自然と開き。
「ああっ!!!」
処女膜にオニキスの指先が触れた瞬間。激しく喘いだ。
昨晩の快感がフラッシュバックしたのだ。
「あ・・・オ・・・ニキ・・・ス・・・」
ヒスイは途切れ途切れに、オニキスの名前を呼んだ。
「どうした?」
愛撫の手を止め、オニキスが耳を寄せる。
「そこ・・・きのう・・・たくさん・・・あいして・・・くれたでしょ?」
ごくごく断片的な記憶だが。心にはちゃんと残っている。




「だからもう・・・いいよ?」



「ヒスイ・・・」
その言葉に胸が熱く締め付けられる。
汗で湿った銀の前髪。
照れの混じった、ヒスイ本来の微笑み。
何もかもが愛おしい。
「ヒスイ――」
もう一度、名前を呼び。
ヒスイの左手を握るオニキス。
そこに輝く結婚指輪にキスをして、永久の愛を誓う。
それから、自身の屹立したペニスをヒスイの膣口に寄せた。
「あ・・・んんっ!!」
張り詰めた亀頭で押された膣口から、とろとろ、愛液が溢れ出す。
「!!っあ・・・あ・・・!!」
オニキスはヒスイの腰を宥め撫でながら、膣底に錨を下ろすように、ゆっくりとペニスを沈ませていった。
ずぷずぷずぷ・・・途中でぷつん・・・切れる音がして。
ヒスイが微かに眉を寄せた。
「痛むか?」
「へいき・・・だよ・・・」


「これが・・・ほしかったん・・・だもん・・・」


「ヒスイ・・・」
ここでもまた、感情を揺さぶられる。
ヒスイの頬に手を添え、口づけるオニキス。
「欲しかったのは、オレも同じだ」
それから少しずつ、ヒスイの中のペニスを揺り動かした。
「あっ!ん!!オニキス・・・っ!!」


「オレを覚えてくれ、ヒスイ」


出血する膣穴にペニスを送り込む。
ぐぢゅっぐぢゅっ・・・
「ふぁっ・・・あ!!!」
膣肉の中をペニスが通ったあと、少し遅れて快感が生じる。けれども。
「あっ・・・ん・・・ん・・・っ!!」
何度も通過するうちに、時差がなくなり、ペニスの動きに合わせて快感を得るようになった。
「あぁ・・・ん!!」
オニキスの背中に両手で掴まり、嬌声を上げるヒスイ。
次第に、愛液が破瓜の血を薄めていった。

そして訪れる、エクスタシー。

「あぁぁっ!!」
ヒスイの体が跳ね、膣が締まる。
続けてオニキスが息を漏らした。
ヒスイの中に精を放ったのだ。
「ひぁ・・・あ!!!」
膣奥でそれを受け止めながら、オニキスと唇を合わせ。
「ん・・・」
射精の脈動が治まっても、なお、ひとつに溶け合っていた――





お騒がせの初夜から数日後。

「オニキス、これ」
ヒスイが差し出したのは、空色の封筒。
同じ色の便箋には・・・


好き。オニキスが、好き。


・・・そう綴られていた。
「悪くないでしょ?」と、ヒスイ。
「言葉と違って、ずっと残るものだし」
ヒスイが告白の手段として選んだのは、ラブレター・・・文字だった。
それでも、よっぽど恥ずかしかったのか、若干文字が歪んでいる。
「声に出して言えるようになるまで、とりあえずそれで・・・ちょっ・・・オニキス!?」
堪らず、ヒスイを抱きしめるオニキス。
自分でも驚くほど、喜んでいる自分がいる。
「・・・オニキスも書いて。ラブレター」
小さな体でオニキスを抱きしめ返し、ヒスイが言った。
「そうだな、書くとするか」




言葉でも、文字でもいい。
いくらでも伝えよう。





それはとても貴重な愛だから――







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