これは、王と王妃の外泊デートのお話――
モルダバイト初の水族館が城下にオープンすることになり、視察を兼ねて・・・だが。
ヒスイたっての希望で、見学はオニキスと二人きり。
職員の案内もなしだ。
立場上、オニキスとヒスイが本当の意味で二人きりになれる機会は少ない。
離宮で過ごす夜だけが、二人きりの時間といっても良かった。
そのため、ヒスイは浮かれている。オニキスも同じ気持ちだ。
「わ・・・きれい」
巨大な水槽に触れ、視線で魚を追うヒスイ。
青い光に照らされたその姿は、あどけなくも美しい。
「そうだな」
そんなヒスイに見とれそうになるのを自重しつつ、オニキスも水槽に目を向ける。
・・・と。パシャツ!シャッターを切る音。
見ると、ヒスイがポラロイドカメラを持っている。
「・・・オレを撮っても、面白くも何ともないだろう」
「そんなことないよ」
少々悪戯な笑みでヒスイが返す。
「いこっ!」「ああ」
手を繋ぎ、館内を歩く二人。
暗闇に乗じて、時々キスしたりして。
水族館デートを楽しんだ。
「どうする、これから」と、オニキス。
併設されたホテルのスイートルームを取ってあったが、念の為、尋ねる。
するとヒスイは「天文台に行きたい!」と、答えた。
「今夜はそこで一泊しよっ!」
天文台はモルダバイトの誇る研究施設のひとつで、郊外の高台にある。
星が近くに見える、と。ヒスイお気に入りのスポットだった。
ちなみに・・・
天文台近くに、研究者や学生向けの宿泊施設があるが・・・相応の簡素なつくりだ。
星空を堪能した後、屋台で夕食を済ませ、チェックイン。
大きな窓に、ベッドと机、ユニットバス・・・
「本当にいいのか?ここで。何なら城に戻っても――」
「ここでいいよ。不衛生って訳じゃないし」
「こういうところで、現役の学生気分を味わうのも悪くないでしょ?」
見た目や育ちに反し、ヒスイはかなり庶民派で。
“高級”であることに、拘らない。
ビジュー付モスグリーンのチュニックと、ホワイトのショートパンツという本日のファッションも、到底大国の王妃が着るものではないが、ヒスイ本人は良しとしている。
そういうところがまた愛おしいのだ。
「ふ・・・そうだな」オニキスが笑う。
窓を開ければ、星空。
窓辺に立つヒスイの肩を抱き、見つめ合う。
それから、キス。
「ん・・・」
オニキスの唇がヒスイを求め。ヒスイの唇がオニキスを求める。
互いの唇が甘い熱を帯び。
くちくち・・・ぴちゃ・・・くちゅ・・・ちゅっ・・・
触れ合う表面が溶け合い、音がするようになるまで。
「ん・・・ふ・・・」
「・・・シャワー、浴びるか」
ゆっくりと唇を離し、オニキスが言った。
当然、一緒に〜の意味だが。
「あっ!私は・・・」
ヒスイは一歩引き。
「さ・・・先行ってて」
オニキスとは目を合わせず言った。
「・・・・・・」
微妙に態度が怪しいが。
「・・・ならば先に行くぞ」
「ん!」
オニキスがシャワーを済ませ、室内へ戻ると・・・
「あっ」
ベッドに腰掛けていたヒスイが、サッと枕の下に“何か”を隠した。
「・・・・・・」
今回は露骨に怪しい、けれども。
問い詰めるものでもないと思い、視線をヒスイに戻した。
「オニキ・・・ス?」
見上げるヒスイに、オニキスが口づける。
オニキスの次にシャワーを浴びるつもりだったのか、ヒスイは、タオル一枚体に巻いただけだった。
「わたし・・・まだ・・・シャワーしてない・・・よ?」
「構わん」
ベッドに横たわるヒスイの上に乗るオニキス。
大きな手でヒスイの頬を掬い、反対側の頬にキスをする。
ヒスイは嬉しそうに目を細めていたが・・・
「あ!」
ふと何かを思いついたような声を出した。
「口でする!」
唐突にそう言い放ち、オニキスの下、もぞもぞと移動する。
「・・・・・・」
オニキスは溜息ひとつ。
最近ヒスイが覚えた性技、“フェラチオ”。
そのうち飽きるだろうと、付き合ってきた。ただし・・・
「ヒスイ、オレの上に来い」
「ん、わかった」
逆向き・・・お尻を向ける格好で、オニキスに跨るヒスイ。
ヒスイがフェラチオをしたがる時は、この体勢なのだ。
オニキスの対策・・・
自分の上にヒスイを乗せ、ペニスを好きにさせる代わりに、オニキスもヒスイの割れ目を愛する。
いわゆる、シックスナイン。
これで、一方的に奉仕されることを回避していた。
「・・・ん」
両手でオニキスの勃起を包み、先端にキスをするヒスイ。
そのまま唇を密着させると、オニキスの蜜がじんわり染み込んで。
リップクリームを塗ったように、艶めく。
「ん・・・ふ・・・」(オニキスの味・・・する・・・)
それも束の間・・・
「!!あッ・・・オニ・・・っ」
オニキスもまた、ヒスイの膣口にキスをしていた。
両手で陰唇を拡げ、そこにかなり深く口元を埋めている。
「ん・・・ふッ・・・!!」
思わず、ヒスイが喘ぐ。
膣から滾々と湧き出る愛液を吸いながら、器用に舌を入れてくるオニキス。
「ふぁ・・・っ」
舌というのは、とりわけいやらしい感触で。
膣の中で蠢き出すと、内側から力が抜けていく・・・
「はぁはぁ・・・」
フェラチオをしようにも、全く集中できず。
目の前のペニスに熱い息を吹きかけるのが精一杯になっていた。
「あ・・・はふ・・・」
(なんで・・・いつもこうなる・・・の・・・?)
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