コハク、ヒスイ、トパーズ。

3人は砂浜から港町へと移動した。
そこでまず、宿を取る。
観光地なので宿泊施設は充実していた。
部屋は2つ。コハク&ヒスイとトパーズに分かれた。



一室の窓辺で。

「ヒスイ・・・会いたかったよ」
「おにいちゃん・・・」
向かい合い、両手を繋いでキス。
ヒスイは思いきり背伸びをし、コハクは屈んで、キス、キス、キス。
7日分の甘いキス。
「・・・で、これが昨日の夜の分。これが今朝の分・・・」
コハクが笑いながら、ヒスイの唇へキスを繰り返す。
「・・・で、ここから先は」
体で再会を確かめる・・・そのための、キス。
「・・・お風呂、入ろうか」
「うんっ!」


宿は、景観と浴室の広さを重視して選んだ。
無論、セックスする事を前提として、だ。
入浴の為、コハクはヒスイの髪を結い上げた。すると。
「・・・・・・」
白い背中に、覚えのないキスマーク。
トパーズが残したものに違いなかった。
(あいつ・・・後でシメる!!)
「おにいちゃん?どうかした?」
「何でもないよ」
その事で、もう二度とヒスイを疑ったりしないと心に決めている。
決めたら迷わないのがコハクだ。
(トパーズの単独犯という事で!)
あらかた寝ている時にでも付けられたのだろう。と、納得。
「ヒスイはそういうの鈍いからなぁ・・・」
苦笑いで、こっそり呟く。
(そうだ、今日は・・・)
ふと、閃いて。
ヒスイの体を丁寧に洗って流す。
ここまではいつも通りだったが・・・
「じゃあ、次は私が洗うね!」
コハクの体を洗うべく、スポンジを手に取り張り切るヒスイ。
「いいよ、今日は」
ヒスイの申し出をやんわりと断り、自分で手早く済ませる。
(あれっ?)
ヒスイは為す術もなく。首を傾げた。
いつもなら仲良く体を洗いっこする。
泡だらけになった性器を弄り合ったりしていいムードなのだ。
(えっちしないのかな?)
困惑したまま、湯船へ。
お湯の中、コハクの勃起が見える。
しかし、コハクの手はヒスイの髪や頬を撫でるばかりで一向に性器へ伸びてこない。
「あの・・・おにい・・・ちゃん?」上目遣いのヒスイ。
「ん?何かな?ヒスイ」にっこり微笑むコハク。
「ん〜と・・・」


(えっち・・・したいのにな)


恥ずかしくて、言葉に詰まる。
(いつもなら言わなくてもわかってくれるのに・・・あ)
コハクの企みに気付く。
(今日はちゃんと言いなさい、ってこと?)
「・・・・・・」
ヒスイは照れ屋な性格から、気持ちを言葉にする事を怠りがちだ。
自分でもそれはわかっていた。


えっちする?


(いつもお兄ちゃんが言ってくれるから、私はそれに頷くばかりで・・・)
日頃いかに依存しているか痛感する。
何もかも、コハク任せなのだ。
(言えばいいんでしょ!えっちしよ・・・えっちしよ・・・えっち・・・やっぱり言えないっ!!)
その一言を待っていられるのかと思うと、余計に恥ずかしいのだ。


湯上がり、タオルドライの時間。
「・・・・・・」
ヒスイはまだ言えずにいた。
一カ所だけ、拭いても拭いても湿っている場所にコハクは気付かないフリで。
このままではいつまでたってもセックスに至れない。
「さて、じゃあ・・・」
「やっ・・・!!」
着替えを取ろうと背を向けたコハクに抱き付くヒスイ。


「え・・・えっちしよっ!!」


(言っちゃったぁぁぁ!!)
カーッ・・・真っ赤になったヒスイの頬をコハクは両手で包んだ。
「はい、よく言えましたぁ」
唇に、ご褒美のキス。


『今日はね、ヒスイから誘って欲しかったんだ』


「これって、意地悪?」
「意地悪っ!!」
ごめん、ごめん、と謝りながらコハクが腰に巻いたタオルと取ると・・・
頼もしい勃起。
コハクの優しげな顔立ちとは裏腹に、それは飢えた獣の如く、先端からダラダラと涎を垂らしていた。
「はは、我慢しすぎたみたいだ。先がこんなに濡れちゃった」
「もう、おにいちゃんはぁ・・・」
ひょいと、ヒスイをお姫様だっこ。
「じゃあ、そろそろ・・・えっちする?」
「うんっ!!」



「んっ・・・はぁ」
ベッドで交わす、欲情のキス。
ヒスイの体に巻かれたタオルを外し、仰向けに倒す。
まず目につくのは白肌に浮き上がる二つの赤い粒。
コハクが上から指先で押さえる、と。
「あっ・・・ん!」
「くすっ・・・硬くなった」
嬉しい反応だ。
ヒスイの乳首は小さいながらも懸命に尖っていた。
「可愛いね」
当然、口に含む。
「あ・・・おにぃ・・・」
ちゅ・・・ちゅっ・・・
最初の突起を堪能した後、コハクの唇はヒスイの肌を滑り、臍を経由して恥丘に至った。
ヒスイの次なる突起を求め、舌で隠れた場所を掘り起こす。
(ヒスイのクリトリスは・・・)


どんなに舐めてもなくならない飴玉。


包みを剥いて・・・たっぷり舐める。
(これは、僕専用のキャンディー)
幸せに浸りながら、貪って。
「あ、ぅうん・・・」
ヒスイの腰がピクンと動いた。
充血した肉粒に密着させた舌を激しく踊らせ、コハクはヒスイの体へ快感を送り込んだ。
「うぅ・・・っ!おにいちゃ・・・」
久しぶりのせいもあってか、ヒスイはどうしていいかわからないくらい股の間を濡らし。
「はっ・・・あぁ・・・」
シーツに大きなシミを作った。
「ヒスイ・・・僕ね、喉がすごく渇いてるんだ」
専用キャンディーから口を離し、純度100%の愛液を求めるコハク。
興奮から少し乱暴に両脚を開かせ、中央部に間髪入れず顔を埋めた。
「あ!ああんっ!!おにいちゃっ・・・」
ジュルッ!思いきり啜り上げる音が部屋に響く。
口いっぱいに広がるヒスイの味。
これがやたらと後を引くのだ。
(くぅぅっ!!美味い!!)
脳天から痺れる美食。
これで生きているといっても過言ではない程、コハクにとってかけがえのないものだった。
ゴクリ、大きく喉を鳴らして。
「あんっ!はぁ・・・あぁ・・・おにいちゃ・・・」
愛液の摂取に溺れる事・・・数十分。
ヒスイは絶やすことなくコハクを持て成した。



「さて、それじゃあ」
そのまま正常位の結合。
コハクはヒスイの細い腰を持ち上げ、言った。
「こうやって少し腰を浮かせてて。もっと気持ち良くするからね」
「ん・・・」
恍惚とした表情で、ヒスイは頷いた。
そしてコハクは低い位置から突き上げるようにペニス挿入・・・
「んくっ!」
先端が膣壁の上面、ヒスイの下腹部の裏の粘膜にあたった。
「よしよし、いい子だね〜」
コハクは上体を反らしながらペニスの角度を調節し、ヒスイの膣壁を亀頭部分で引っ掻くように撫でた。
「んんっ!あ・・・んっ!」
それは、ゆっくりと丁寧に、ヌルヌルとした膣内で繰り返され。
「う゛っ・・・おに・・・」
ダイレクトな性器同士の刺激にヒスイが何とも言えない声を洩らした。
「あっ!あぁ!うっ!うぅんっ!!」
内側からじわじわと浸透する快感に身悶えるヒスイ。
段々とコハクの腰の動きが速くなり、熱く擦れる・・・それはマッチを擦るようで。
燃え上がる情熱の炎に火傷しそうな程、感じる。


「あく・・・っ!っ・・・んぅっ!!はぁっ!」


このままフィニッシュかと思いきや。
コハクの欲望は止まらなかった。
「お・・・おにぃ・・・な・・・あんっ!!」
スポンッ!という恥ずかしい音と共に、引き抜かれたペニス。
セックスの手順を無視した行動と知りつつも、途中の・・・練った愛液も味わいたくなって。
自分のペニスが入っていた場所に、舌を入れるコハク。
「えぅっ!!おにぃちゃ・・・っ!」
コハクの焦らし行為にヒスイは涙目で訴えた。
男性器を受け入れる為に使われた愛液までも献上するのは抵抗があるらしかったが、コハクにとってはすべてがご馳走・・・構わず硬く窄めた舌を差し込み、掻き出したものを飲み込んだ。
「むぐ・・・っ!!」
ヒスイにしてみれば、酷な快感だった。
再会初のエッチはペニスでイキたいのに。
舌でイカされそうになって。
「くっ・・・ぅうんっ!!」
イッてなるものかと歯を食いしばる。
ぎゅぅぅっ!!
強く両手でシーツを握り、顔を背けて目をつぶり、快感を振り切ろうとするが・・・。
ジュッ、ジュルッ、ピチャッ、クチュクチュ・・・
自分の股間で絶えず鳴り続ける音が聴覚を刺激する。
「ふっ・・・うぅ・・・えっ!ぅ!!」
愛液がすべて新しいものに入れ替わるまで、コハクの舌は退かず。
そしてやっと。
舌とペニスが交代した。
「あんっ!おにいちゃぁんっ!!」
胎内へ再び戻ってきたペニスにヒスイが喜んで喘ぐ。
大きく開かれた両脚とは逆に、膣肉は締まり、コハクのペニスに絡まって。
もう離すまいとしているのが、性器を通して伝わってくる。


「ヒスイ・・・愛してるよ」


愛しくて。愛しくて。所構わず叫びたい。
その想いをすべてペニスに込め。
「あっ、あっ、あぁぁっ!!あんっ!あん!あっ、あ!!」
ヒスイの望むまま、射精の為の突きを繰り出し。
凹と凸の集中摩擦。ベッドが軋む。
「おにぃちゃぁ・・・あ・・・ぁっ!!」
心なしかヒスイの喘ぎ声も高音で。
「はっ、はぁ・・・」
戦闘では乱れないコハクの息も、この時だけは違う。
「たくさんご馳走になった分、お返し・・・するね」


「さあ、飲んで」


ヒスイの下腹部に手を乗せ、子宮へ話しかけてから、制御解除。
途端、ヒスイの中はコハクの精液でいっぱいになった。
「あっ・・・んぅ・・・おにいちゃぁ〜・・・」
「好きだよ・・・ヒスイ」



静まる室内。

はぁ。はぁ。
汗ばむ体で抱き合って。キスをして。
ペニスを抜く、コハク。
「今日はこれでお終い・・・ね」
「あ・・・」
脱力したヒスイの両脚を広げ、陰部に残った愛液と精液の混合液を舐めあげて、コハクの渇きも満たされた。
「・・・いいよ、足閉じて」
「ん・・・」
もはや感じる余力もないヒスイは、「明日筋肉痛になりそう」と笑って、両目を閉じた。
「おやすみ、ヒスイ」
皺だらけのシーツ。取り戻した愛妻の寝顔。
コハクは微笑んで、愛し合った部屋の空気を深く吸い込んだ。
「後で一緒にミルクティー飲もうね」



隣人、トパーズ。

「・・・・・・」
手元に残ったのは、ヒスイの牙だけ。
何の汚れもない純白の牙を月光に翳し、口の中へ落とす、が。
さっきまで甘かったヒスイの牙は少し・・・苦くて。
自分のものではないことを思い知らされる。
もっと・・・泣かせておくべきだった。
そんな事を考えながら、愛しくも苦い塊を舐め転がす夜。


「そろそろ情報交換しない?」


背後からコハクの声が響いた。
「幽霊船に纏わる出来事について、互いに今日までの経緯を話そう」という提案にトパーズは応じた。
「あの船はね・・・」
コハクは悪霊から聞き出した船の正体を明かし。
結果はお見通しという口調で尋ねた。
「それで、君の願いは叶った?」
「・・・・・・」
キスマークのささやかな復讐・・・返答がないのはわかっていた。
トパーズの無言を軽く受け流し、コハクは話を続けた。
「一週間って事は、メノウ様達はもう船に戻ってきてる筈だよね」
「乗り遅れなければ・・・だ」
メノウが望む場所には、今は亡き妻サンゴがいるに決まっている。
トパーズは皮肉な笑みを浮かべ、言った。
「アヤシイもんだな」
対してコハクは「大丈夫」と。


「どんなに甘い誘惑があったって、帰ってくるよ、メノウ様は。なにせ・・・」



アクアが、一緒だからね。




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