赤い屋根の屋敷――夫婦の部屋。


「・・・ん」


ヒスイが静かに目を覚ます。
「あれ?」(家に戻ってる・・・)
きょろきょろと辺りを見回し・・・
(夢???)
軽く首を傾げるが。
「・・・ううん、夢じゃない」
眠気が薄れるにつれ、これまでの出来事が鮮明になってきた。
「どうしよう・・・」(クラスターのこと、お兄ちゃんに話す?話さない?)
選択を迫られ、どくん、ヒスイの胸が鳴る。
焦りと、痛みと・・・様々な感情が交錯し、困惑するヒスイ。
その時。


「ヒスイ」


コハクの声と共に、部屋の扉が開く。
「!!お・・・おにいちゃ・・・」
「遅くなってごめんね」
ベッドで見上げるヒスイに、ちゅっ。ただいまのキスをした。のだが・・・
ヒスイの唇は、明らかに強張っていて。
「・・・ね、ヒスイ。お風呂の前に、もう一回しようか」
「え・・・おにぃ・・・」
「は〜い、万歳して」
コハクの言葉に、反射的に従ってしまうヒスイ。
マーキュリーのパーカーを捲り上げられ、その下に着ていたシャツのボタンを外される・・・
「ちょっ・・・ま・・・」
ベッドの上、抵抗を試みるも。
「!?」
脱がされた服がいつの間にか手首に絡まり、まるで手錠のようにヒスイを拘束していた。
「え・・・あ・・・」
近付くコハクの顔は、いつものように甘く優美なものだったが、どこか切なさを忍ばせていて。
それに気付いた瞬間、キスを受け入れてしまう。
「ん・・・」(おにいちゃ・・・ん・・・)
ちゅっ。ちゅっ。何度か唇を重ねたあと、上唇と下唇の間を、コハクの熱い舌先が抜ける・・・
ヒスイの舌を舐めほぐし、歯列をなぞり、口内のありとあらゆる部分を愛撫する。
「んん・・・」(くちのなか・・・ぜんぶ・・・とけちゃ・・・う)
深く長いキスに委ねた口内・・・そのカタチまで変わってしまいそうだ。
「はぁ・・・ぁ」
コハクと、蕩けた舌を絡め合う度、脳が官能に侵され、思考が奪われてゆく・・・
(どうすれば・・・おにいちゃんをまもれるのか・・・かんがえなきゃ・・・いけない・・・のに・・・)
続きを期待して、ショーツが透けるほど、濡れている。
「はぁっ・・・はぁっ・・・ん・・・」
「まだだよ、ヒスイ」
ちゅくっ、ちゅ、んちゅ・・・
両手で頭を持ち上げられ、終わらないキスをしながら、溢れる涙。
「ん・・・あ・・・」
それが快楽からか、自身への情けなさからか、わからないまま、火照った頬を伝ってゆく・・・
ひとつだけはっきりしているのは。


(私のカラダ・・・気持ちいいこと、覚えすぎた)





「あ・・・はぁ・・・んッ!!おにぃ・・・」
僅かな乳肉を、ふにふにと優しく揉まれ、艶めかしい息を吐くヒスイ。
「あ・・・あんッ!!」
少々強めに摘まれた先端。
そこに触れるか触れないかのところまで舌を伸ばし、コハクが唾液を垂らす、と。
悦び、ぴくぴくとして。一層鮮やかに色付いた。
続けて指先で軽く捩じられ。乳腺に怒涛の快感が流れ込んでくる。
「!?ひぁうん・・・ッ!!」
よほど気持ちが良かったのか、ヒスイは大きく仰け反り。
「あぁぁ・・・ッ!!」
乳首だけ、先に達してしまう。
チェリーレッドの肉粒をビンッ!と勃たせ、弾けて、くたり。
「はっはっ・・・あ・・・ぁ・・・おにいちゃあ・・・」
「くすっ、そんなに気持ち良かった?」
コハクは笑いながら、そこがふたたび勃ち上がるまで、舐め続けた。



「あ゛ッ・・・!う゛ぁッ・・・!」
震えながら尖り立っている左右両方の乳首から、コハクの唾液を滴らせ、ヒスイが喘ぐ。
コハクの愛撫は止んでいたが、乳房には快感が残っていて。
息もできないほど、熱く痺れていた。
「はぁはぁ・・・」
その状態で、するすると脱がされるショーツ。
今度はクリトリスにコハクの唇が触れ。
ちゅ・・・キスのあと、ぬちっ・・・肉芽を押し潰すように舌をあて、包皮から弾き出す。
「――!?んひぃッ!!」
電気ショックに似た快感に、堪らずヒスイが身をよじる、が。
両手が不自由な上、片脚を掴まれているため、逃れることができない。
「あぁッ!!あー・・・!!!」





同じ頃――赤い屋根の屋敷一階では。

双子兄弟が、夕食をとっていた。
先に食べるよう、コハクに言われたのだ。
「コハク・・・帰ってきてから、なんか変じゃね?」と、アイボリー。
「そうかな、いつも通りだと思うけど」
マーキュリーは視線を流し、適当に答えた。
「・・・・・・」←アイボリー。
ヒスイがコハクとセックスをしている時間帯は、決まってマーキュリーの機嫌が悪い。
(もう慣れたけどな)
マーキュリーとの会話を諦め、アイボリーが黙々と食べ始めた、その時。
リビングの窓をノックする音が聞こえた。
「・・・ん?オニキス?」
アイボリーが窓を開ける、と。
「ヒスイは――」
「上」
アイボリーが二階を指差す。それで充分通じるのだ。
「そうか」
「ヒスイに急用とか?」
「いや・・・」
ヒスイに“呼ばれた”気がしたのだ。
「・・・・・・」
幸せなはずの鼓動に、鈍い痛みが混じっている。
ただでさえ、良くない事が起きている最中だ。見過ごす訳にはいかない。
「・・・嫌な予感がしてな」
するとアイボリーも。両腕を組み、言った。
「俺もそー思う。とにかく、あがって待ってろ」
「ああ、そうさせてもらう」







‖目次へ‖‖前へ‖‖次へ‖