モルダバイト城下。こちら、コハク。
「雨・・・か」
オニキスに半分押し付け、休む間もなく働いても、依頼はなかなか減らなかった。
「でも、今日中に買い出ししとかないと・・・」
買い出しとは、コスプレ用の布地や糸・・・諸々だ。明日は店の休業日なのだ。
予定を詰めて、モルダバイト城下に寄ったところで、雨に降られた。
「ヒスイとジストに傘持たせるの忘れちゃったな・・・」
夕立ちなので、すぐに止むのはわかっていたが・・・
「届けに行っちゃおうかな〜・・・学校での様子も気になるし」
傘を届けに。会う口実にはもってこいだ。
「よしっ!」
即決。さすがに行動が早い。
手芸店ではなく、雨具を扱う店で折り畳みの傘を2本購入。
激しいスコールの中、コハクは愛するヒスイの元へ向かった。
傘差し飛行・・・そして。
たまたま降り立った場所が、体育倉庫の前で。
すぐに、ヒスイがそこにいると気付いた。
「ヒスイ」「お兄ちゃん!!」
扉を開けると、奥のマットにヒスイが座っていて。
「傘、届けにきたよ」「うんっ!!」
コハクに駆け寄り、しっかりと抱きつく・・・いつもより若干甘えっ子度が高い。
「おにいちゃん〜・・・のどかわいた」
血を与えれば、エッチは当然の流れだ。
「こういうところでするのもいいね」
「あ・・・ん・・・」
マットの上。キスをしながら、ブラのホックが外され、できた隙間にコハクの右手が入ってきた。
「んぅっ・・・」
乳首を優しく弄られ、じわんじわん・・・膣口が熱くなる。黒のパンツに濃い染みができた。
「おにいちゃ・・・あ・・・のね」と、ヒスイ。
「ん?」
「さっき・・・ジストが・・・いっぱい“すき”っていってくれた」
揉まれる快感、その一方で純粋に顔を綻ばせるヒスイ。
「・・・そう、良かったね」
コハクは微笑み、ヒスイの乳首を軽く捻った。
「あっ・・・ん・・・いくつになっても・・・そういってくれるのって・・・なんか・・・うれしいね・・・はぁ・・・ん・・・ぅ・・・」
ヒスイの口を塞ぐキス。そのまま舌を押し込むコハク・・・
「・・・・・・」
(その“好き”は、ヒスイとこういうことがしたいっていう“好き”なんだってこと、教えるべきなのかな・・・ジストは望んでないと思うけど・・・)
「ん・・・お・・・にい」
ヒスイの唇がキスに抗う。コハクのシャツを引っ張り・・・怒っている。
大概のことに鈍感なヒスイだが、キスに関しては敏感で。
集中力に欠けたキスは見抜かれてしまうのだ。
「ごめん、ごめん」
コハクはキスをしなおして。
「・・・中、ごしごし、しようか?」
こくこく。ヒスイが頷く。
ヒスイにとって、ペニスの挿入は、大好物のおやつを貰うのと同じような感覚なのだ。
与えられれば、与えられただけ、食してしまう。
しかも吸血直後なので、一段と膣が飢えていた。
「あ・・・」
パンツを脱がされ、高まる期待。
小陰唇が左右に美しく開き、その奥に蜜を湛え・・・ペニスを呼び込もうとしている。
「じゃあ・・・挿れるね」
「んっ!んん・・・っ!!」
ぷちゅ・・・ぐちゅっ・・・ちゅっ・・・ぐちゅちゅちゅ・・・
亀頭が蜜を吸いながら、深く潜り込んできた。
「んあっ・・・!!」
子宮口にキスを受けたあと、開脚中の両脚をしっかりと押さえられ。
希望通り、膣内をごしごしと擦られる。
「あ・・・あぁ・・・あぁん・・・」
「ごしごし、ごしこし・・・」
声をかけながら、小刻みに腰を動かすコハク。
「あ・・・あぁ・・・」
にゅるにゅる・・・にちゅにちゅ・・・にちゃにちゃ・・・
「あ・・・あ・・・あ、ふぁ・・・」
言葉通りの刺激だった。「ごしごし」という、コハクの掛け声にまで興奮し。
「んぅ・・・ぁ・・・あぁ・・・ん」
ペニスに磨かれた膣壁は・・・ヌルヌルだ。
「あっ、あ・・・!!」
ぴくんぴくん、快感の震えが止まらない。
ヒスイはマットの上であることも忘れ、口から唾液を、膣から愛液を溢れさせた。
「あ・・・は・・・おに・・・ちゃ・・・」
「よしよし・・・」と、乱れたヒスイをあやすコハク。
ヒスイが両腕を伸ばしてきたので、背中に腕が回せるよう上体を屈め。
「おにいちゃ・・・」
「ん?」耳を傾け、ヒスイの声を聞く。
「も・・・い・・・」と、ヒスイ。
「ヒスイのココは、満足した?」
ズボズボ・・・ペニスを出し入れしながらコハクが尋ねると。
「んっ!!んん・・・!!」
こくこく。ヒスイは強く頷いた。
「それじゃあ・・・」
「あっ!あっ!あぁ・・・っ!!!あっ!あっ!あ・・・!!」
巧みな腰使いで、ヒスイを絶頂へと導く最中・・・
「ヒスイ・・・愛してるよ」
コハクは、ジストとは別の言葉で愛を伝えた。
(ヒスイに横恋慕する男は、いたぶるに限る・・・んだけど)
コハクが本当の父親ではないことを知ったあとも、ジストは変わらず“父ちゃん”と慕い。
夫婦の愛とセックスを応援してくれた。
(正直すぎるっていうか・・・ジストはどうも恋敵とは思えないんだよなぁ・・・)
そんなジストが懸命に残したであろう言葉を、この場で上塗りするのも大人気ないと考える・・・コハクにしては珍しく寛容だ。
愛を告げたのが、トパーズやオニキスなら、こうはいかない。
ヒスイの耳に残っている、ジストの“好き”を消さないように。
「愛してる」と、もう一度言って、口づける。
それから、マットの上のヒスイに激しく腰を叩きこんだ。
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!雨音と競うようにして、体育倉庫に愛の調べを響かせる。
「っあ・・・!!あ!!!あああ・・・っ!!おにいちゃ・・・ぁっ!!」
その頃・・・ジストは。
雨の中をひた走り、いつの間にかサルファーに追いついていた。
サルファーはちょうどタンジェと合流したところで、一本の赤い傘の下にいた。
ジストを見るなり、「何だよ」と、サルファー。
「泣いたお前が悪いんだからな」ムスッとした顔のまま、そう吐き捨てた。
「泣いた?オレが?え?いつ???」
身に覚えがない。現に今だって、泣いてなどいないというのに。
「バーカ、寝てる時だよ」
サルファーが言うと、タンジェも隣で相槌を打った。
「・・・もしかしてオレ、ヒスイ〜とか、言っちゃってた?」
かぁぁっ・・・赤くなる。ヒスイ似のジストは、同じく寝言も多いのだ。
「お前、無理してるだろ」サルファーが言うと。
「してないよっ!」ジストは反論。
毎回同じようなことで喧嘩になっている。
「いい加減諦めろよ!あの女は、お前を幸せにはしない!僕は絶対認めないからな!!」
「頭冷やせ!」最後にそう吐き捨て、サルファーはタンジェと共に帰っていった。
ジストはひとり、雨空の下。
「・・・・・・」
恋心を、スピネルにもサルファーにも諌められ。さすがに落ち込む。
相手が相手なだけに、二人とも、心配してくれているのだとわかってはいるが。
兄弟に理解してもらえないのは、思った以上に辛かった。
「そんなに悪いことなのかな・・・」
ただ好きでいることが・・・こんなにも難しいなんて。
「・・・・・・」
(オニキスのおっちゃんのトコ、弟子入りしようかな・・・)
詳しくは知らないが、片想いの大先輩であることは間違いない。
(片想いの極意とか、教えてくんないかな・・・)
そんなことを真剣に考えながら、雨に打たれていると。不意に。
落ちてくるはずの雨粒が遮られ。振り向くと、傘を持ったコハクが立っていた。
「父・・・ちゃん」
コハクとの顔合わせ。気まずいことこの上ない。
「傘をね、届けに来たんだ。夕立ちだから、すぐに止むと思うけど、念の為・・・ね」
「あ・・・ありがと」
ジストはコハクと目を合わせずに、折り畳みの傘を受け取った。
「・・・体育倉庫で、ヒスイとエッチしてきたよ」と、コハク。
わざと言ったのだ。ジストの様子を窺い、それから苦笑いで。
「僕のこと、嫌いになった?」
「っ・・・!!そんなことないよっ!!ヒスイのことが好きだからって、父ちゃんのこと嫌いになるなんてないっ!!」
ジストは顔を上げ、否定した。
「そう、それは良かった」
コハクは、ジストの頭にタオルを乗せ。
「拭いた方がいいよ。すいぶん濡れてる」
するとジストは再び俯き・・・
「父ちゃん・・・オレ・・・ヒスイに好きって言っちゃった」
黙っているのは、罪な気がして。正直に打ち明ける。
脳天チョップをくらう覚悟はできていた。ところが。
「うん。ヒスイ、喜んでたよ」
「へっ・・・?」
「嬉しいって言ってた。僕からもお礼を言うよ。ありがとう」
「そ・・・んなこと・・・」
怒られると思っていたのに、お礼まで言われてしまい、困惑するジスト。
「君の本意には、反するかもしれないけど・・・」と、コハクが話を続けた。
「君が口にしたその言葉は、ヒスイを喜ばせるものだ。男としてヒスイを好きになっても、親子として好きな気持ちがなくなった訳じゃないでしょ?」
「うんっ!!」
ひとつの意味にばかり囚われていたが。息子として、ヒスイが好きなのも本当で。
ジストは大きく頷いた。
それを見たコハクは、ジストの頭に手を置き。
「だったら君は胸を張って、ヒスイに好きと言えばいい」
「父ちゃん・・・」
(何度“好き”って言ったって・・・本当の意味は伝わらないし、きっと何も変わらない。でも・・・)
ヒスイが喜んでくれるなら。
それが一番、重要なのだ。
「オレっ・・・!言うよ!ヒスイに、いっぱい好きって!!」
「うん、そうしてあげて」と、コハクが笑う。
「ところで・・・」
周囲には誰もいないというのに、あえて耳打ちするコハク。
「ヒスイのチアガール姿、見たくない?」
「見たいっ!!」即、ジストが食いつく。
二人は、ヒスイ萌えの同志なのだ。こんな時、ことさら盛り上がる。
雨雲と一緒に、暗い気持ちなど吹き飛んでしまう。
「じゃあ、協力してくれる?」
「うんっ!するする!!」
「あ・・・雨やんだ」
こちら、ヒスイ。ジストとの約束を守り、まだ体育倉庫にいた。
雨音が消え、扉の隙間から光が差し込む。
これで外に出られる・・・が。
ヒスイには、ひとつ大きな問題が残っていた。
コッパーの一味に、下着の写真を撮り逃げされているのだ。
「う〜ん・・・どうしよ・・・」
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