「おにぃ・・・ちゃ・・・?」

一方で、ヒスイの声がした。珍しく、目を覚ましている。
アイボリーは慌ててソファーの裏に隠れた。
ヒスイはどうやら甘え足りないらしく。
エッチな気分を持続させたまま、ぽーっとした表情で、コハクを見上げている。


コハク=快感をくれるひと


そう認識するよう、仕込んであるのだ。
「も・・・おわり?」と、訊かれたら。
「まだ終わりじゃないよ」と、答える責任がある。

“ちょっと待ってて”

口だけ動かし、アイボリーに告げると。OKのサインが返ってきた。



「おにいちゃん・・・」
コハクの首に両腕を回し、そのまま抱きつくヒスイ。
その小さな体を、コハクが、ソファーから絨毯へと移し。
仰向けで横たわらせ、ベルトを外す。
ヒスイは両膝を立て、おとなしく挿入を待っていた。
「挿れるね」
「ん・・・」
精液を漏らしてはなるまいと、懸命に閉じていた穴だが・・・亀頭が傍に寄るとぴくぴく反応し。
間もなく、ちゅぽ!と、嬉しそうに開いた。
「あ・・・」
ヒスイが仄かに顔を赤らめる。
精液で、白く濁った膣内に新たな愛液が浮き出していた。
物欲しそうに垂れる寸前のところで、そっと亀頭を差し込まれ。
「ひッ・・・あ!!!あああ!!!」
挿入の最中、ヒスイは顎を上向きにして、ビクビク震えていた。
「んッ・・・んんッ・・・んはぁッ!!」
膣が柔らかいままなので、逆にペニスの硬さが際立っているのだ。
「はぁはぁ・・・」
ディルドのような感触に、ヒスイはパニックになり。
コハクの茂みに指を入れ、必死に繋がりを探した。
「あ・・・あぁ・・・おにぃ・・・」
しきりに結合部をいじって、本物であることを確かめる。
「くすっ、僕のだよ。ほら・・・わかるよね?」
ヒスイのお尻を両手で掴んで持ち上げ。
ずぷッ!ずぷッ!ペニスで膣を型抜きするコハク。
「ふ・・・くぅぅぅんッ・・・」
何度も繰り返される、それがとても気持ちいい。
膣はもうすっかりペニスに馴染んでいた。
「あッ!!あッあッあッ!!」
激しいピストンが、膣壁ごしに腸を刺激し。官能の熱を孕ませる。
「あッ!あッ!あ!あぁ〜・・・」
尻肉がほころび・・・コハクの指の間から、こぼれ落ちそうだ。
「お・・・おにぃちゃぁ〜・・・」
とろける笑顔を見せるヒスイに、コハクが口づけた。
「ん・・・んふ・・・」
ヒスイがうっとり睫毛を伏せていると。



「このままキスでイかせてあげる」



耳にコハクの息がかかる。
まさか、とは思ったが。その囁きだけで、頭の中が沸き立った。
「あ・・・」
ふたたび触れた唇が、みるみる密着してゆく・・・
舌の裏筋を舐め上げられ、喉の奥が甘く痺れる。
「ふ・・・はぁ・・・」
息継ぎをする間もなく、そのまま舌を吸われ。
コハクの歯に軽く挟まれる、と。
「ふぁッ・・・!?」
びくぅんッ!!快感の微弱電流が腰まで流れ、膣の収縮が始まった。
「あ・・・あ・・・」
(うそ・・・わ・・・たし・・・ホントにキスでイッちゃっ・・・た?)
潤んだ瞳に映るのは、コハクの微笑み。
「っ〜!!!!!」
ヒスイの頬が、極限まで赤くなる。


「こっち、動かすね」と、コハク。
オーガズム真っ只中の膣内で、ピストンが再開された。
「ひゃふッ・・・うぅぅんッ!!」
数多の精子が潜んでいる襞を擦り上げられ。体と一緒に、解放された舌が跳ねる。
ヒスイは、あどけなくも淫らに口のまわりを濡らして。
「あッ!あッ!あッ・・・ふ!!!!!」
ぐちゅッ!ぐちゅッ!ぐちゃぐちゃぐちゃ・・・ッ!!
「ひッ・・・は・・・!!!あくッ!!」
抽送の勢いが増すほどに、射精の気配が濃くなっていく。
「・・・あッ!!!」(くる・・・ッ!!)
ヒスイは胸を高鳴らせ、両目を閉じて来たるべき時に備えた。そして。


「あぁぁ!!!!!」


期待どおりの脈動。続けて奥が熱くなる。
子宮口に精液をかけられているのだ。それはもう、惜しみなく。
「んふあぁッ!!!」
こんな風に愛されたら、腰を振って悦ぶしかない。
「あっ・・・うぁっ・・・おにいちゃ・・・おにいちゃあぁぁ〜・・・」




ヒスイを夫婦の部屋へと運び、階段を下りてきたコハクと、トイレから出てきたアイボリーが、廊下で合流する。
先程の提案に従い、深夜のキャッチボール。
家からは少し離れた、敷地内の原っぱで、月明かりを頼りに、ボールを投げたり、受けたりして。
「父と息子の語らいって言ったら、キャッチボールじゃんか?」
※アイボリーの個人的イメージです。
(そうなの?)疑問に思わないこともないが。
例の件について、話し合いの機会を作ってくれたのは、正直有難い。


「ヒスイの前では、カッコつけちゃったけど、実は結構、びっくりしてる」と、早速打ち明けるアイボリー。


「だろうね」コハクは苦笑いだ。
「まーと同じってことだろ?俺も、その・・・体質的に?」
「うん」
「そか」
アイボリーは、大きく一度頷いてから。
「髪の色変える薬っての、またくれよ」
こうなってしまった以上、どこまで効果があるかわからないが。
「俺、コハクと同じ金髪、気に入ってんだ!一生、これでいくつもり!」
アイボリーは、迷いのない口調で、金髪を継続すると宣言した。
「あーくん・・・」
ありがとう、を言う前に。まず一言。
「ごめんね」
「あー・・・」
ぼりぼり、頬を掻くアイボリー。
(謝られんの、嫌いだけど・・・ヒスイん時みたいにはいかねぇし)
キスでコハクの唇を塞ぐのは、無理だ。
(男とのキスは、もうこりごりだっての!)
という訳で。
「俺はまぁ、いいよ」軽く流すアイボリー。
会話のペースに合わせ、ゆっくりとボールをやり取りしながら。
「なんとなく思うんだけど」と、話を続ける。



「俺とまー、逆だったらさ。うまくいってたかもしんねぇな」



「・・・そればかりはね。仕方のないことだよ」
コハクは肩を竦め。
(まーくんともちゃんと話をしないとなぁ・・・)
しかし今夜は外泊の連絡を受けている。
「・・・・・・」
しばらくの間、2人は黙ってボールを投げ合っていた。
・・・が。不意にアイボリーがこう口にした。


「心配しなくても、俺はコハクからヒスイを奪おうなんて考えてねぇし」


「あーくん・・・」(もしかして、察してくれたのかな)
そんな感動も束の間。
「あー、でも俺、ヒスイにキスしちゃった」で、場の空気が凍り付く。
「・・・へぇ、どこに?」
一応、確認するコハクだったが。すでに投球ポーズ。
「もちろん、くちび・・・ぶぉはぁっ!!!」
次の瞬間、繰り出された豪速球で、アイボリーの体が吹き飛んだ。
「ははは!ごめん、ごめん、ちょっと力が入っちゃって。大丈夫?」
「げほっ・・・大丈夫じゃ・・・ねぇよ・・・」
衝撃に咽るアイボリー。ど真ん中、ストライク。グローブが焼け焦げている。
「だめだよねぇ?ヒスイにそういうことしちゃ」
お仕置きスマイルで前進してくるコハクに。
「な、なんだよっ!コハクの方がずっとエロいキスしてんじゃんか!俺だってちょっとぐらいいいだろ!」
アイボリーが訴えるも。
「だめ」コハクは即答。
「大人気ねぇっ!!」続く抗議に。
「大人気ない?うん、そうかもしれないね」コハクが開き直る。
(僕は、生まれた時からこの姿だから、はっきりとは言えないけど)
「たぶん・・・」


大人は、子供が思うほど大人ではなく。
子供は、大人が思うほど子供ではない。


「・・・やっぱりまーくんと話してくるよ」と、コハク。
“実験”の被害者は、アイボリーだけではないのだ。
マーキュリーはマーキュリーで、考えがあるはずだ。
キャッチボールはここで終了。
グローブをアイボリーに手渡し、コハクは羽根を広げた。
「ヒスイのこと、よろしくね。くれぐれもイタズラしないように、ね?」







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