サルファーは一時口を尖らせたが、またすぐいつもの顔に戻った。
ふん、軽く鼻を鳴らす。
「僕だって、もう子供じゃないからな」
今日に限ってのことではないのだ。これまで幾度となく繰り返されてきた。
「だけど、どうしたって・・・父さんのこと嫌いにはなれないんだ」
コハクに対する思い入れが強いため、ヒスイばかりが憎くなる。
こればかりはしょうがない。とはいえ、子供の頃に比べれば、随分客観的でいられるようになった。
コハクをヒスイに奪われても、少し脱力するぐらいで済む。
そして、サルファーは気だるそうに瞳を伏せた。長い睫毛の影が落ちる。
「・・・つまんないの」
しんとした室内で、ポツリ愚痴った、その時。


「サルファー!!わたくしが参りましたわ!!」


男性用ホテルの部屋にタンジェが飛び込んできた。
雪交じりの冷たい風も一緒に吹き込む。
コハクが去った後の、がらんとした空間に、入れ替わりで現れたタンジェ。
大吹雪の中、わざわざサルファーに会いにきたのだ。
コハクがヒスイに会いに行ったのと同じように。
それはまさに、愛の成せる技だ。
「・・・・・・」
サルファーは声もなく。瞬きをしてタンジェを見ていた。
「サルファー?どうしましたの?」
タンジェは窓を閉め、髪についた雪を払いながら言った。するとサルファーは。
「・・・馬鹿じゃねーの。なんで来たんだよ」
「あの・・・コハクさんが部屋にいらして・・・アマデウスがとても喜んでらしたので・・・」
段々恥ずかしくなってきたのか、タンジェは赤い顔で俯き。
「同じことをしたら・・・その・・・サルファーも喜んでくださるかと思いましたの」
「・・・あっそ」と、サルファー。正直、悪い気はしない。

タンジェはいそいそとサルファーのいるベッドに乗り・・・奉仕活動を開始した。
ズボンのチャックを下ろし、中からペニスを引っ張り出すと、それはすぐに硬くなり。
タンジェは悦んで口に含んだ。


「便利な女だな、お前って」


・・・と、サルファーが見下ろす。これは、サルファー的褒め言葉だ。
「ええ・・・ええ・・・」
フェラチオに夢中のタンジェ。
障害を乗り越えてやってきたからか、いつもよりドキドキ度が高い。
舌を絡めれば絡めるほど、サルファーのペニスが甘く感じた。
「アァ・・・サルファー・・・素敵ですわ・・・」
軽く亀頭を摘み、舐めやすいよう固定して。
生え際からじっくり舌を這わせる。
金色の茂みに指を忍ばせると、タンジェの性的興奮は一段と増した。
「ハ・・・ハァ・・・」
フェラチオを続けながら、躊躇いもなく、自身の指を膣奥まで入れる。
チロチロ、舌を動かし。
クチクチ、指を動かし。
ユラユラ、腰を揺らす。
興奮は留まることを知らず。
「ハァハァハァ・・・!!!」
タンジェは荒々しく、シルクのパジャマを脱ぎ捨てた。
裸体をサルファーに見せつける一方で、自身の指では満足できなくなくなり、後方に視線を流す。
目を付けたのは、サルファーの爪先。そう・・・足の指だ。
タンジェは四つん這いのまま後退し、サルファーの足首を掴むと。
上向きの指先に跨り、グリグリと膣口を押しつけた。
「足の指でも・・・構いませんわ・・・入れてくださいませんこと?」
サルファーの爪先に、タンジェの愛液が伝う・・・異様な光景だ。
「・・・お前って、結構Mっ気あるよな」
そう言って、サルファーは足の指を曲げた。
グチャッ・・・潰れるような音がタンジェの股間に響く。
「いいぜ、やってやるよ」
「アッアッア・・・!!!サルファァ・・・」
被虐的快感。ぞんざいに扱われ・・・濡れる。真性ドM。
いつもは乙女なタンジェだが、セックス中は豹変する。
サルファーしか知らない一面だった。
「ハ・・・そこ・・・メチャクチャに・・・ハァハァ・・・」
両脚を開いて座り、膣口を足の指で愛撫されながら。
自ら乳房を揉みしだき、先をビンビンに尖らせる。
「もっと・・・ァ・・・グルゥ・・・」
猫っぽく喉を鳴らし、感じるタンジェ。


「もういいだろ。入れさせろよ」


サルファーはタンジェを仰向けに押し倒した。
「サルファ・・・ゴムは・・・」
「いい、めんどくさい」
ペニスにコンドームを被せている余裕もなかった。
なんとなく今夜はタンジェの中に出してみようという気になったのだ。
早漏のサルファーは、ペニス挿入後、即射精し。
「!!」
タンジェが両目を見開く。
生射精を受けると、ぐあっと奥が熱くなった。
膣に注がれた、精液。心身ともに震えが沸き起こり。
「ヒッ・・・ゥ・・・!!!」
次の瞬間、タンジェの猫耳と尻尾がだらんとした。
「・・・・・・・・・」
瞬きもせず、口を半開きにして、天井を見つめているタンジェ。
尋常ではないエクスタシーがその体に訪れていた。


「おい・・・死んでないよな」と、サルファー。
「ええ・・・死んでませんわ」と、タンジェ。


そう答えたものの、ウットリ、ボンヤリ、だ。
(来て・・・良かったですわ・・・)
行動を起こせば、それに見合った結果が出る・・・こともある。
そして今、最高にハッピーな気分だ。
(幸せは・・・もしかしたら、自分次第なのかもしれませんわね)



一方、こちら。女性用ホテル。バスルーム。

「88、89、90・・・」
湯船の中でヒスイの体を抱きしめ、数を数えるコハク。
ヒスイの体が芯から温まるのを待っているのだ。
「おにいちゃ・・・も・・・でたい〜・・・」
「熱い、逆上せそう」と、ヒスイが訴える。が、ヒスイの体のことは、コハクの方がよく知っている。
「もう少し温まろうね?」
背後から回した両腕でしっかりとヒスイの体を包み込み、お湯から逃さない。
「あといくつ?」と、ヒスイ。
「30、くらいかな」
「うぅ〜・・・」
「女の子は、体冷やしちゃだめでしょ。だから、我慢、ね?」
コハクは、ヒスイにそう言い聞かせ。
「ん・・・」
後ろから、赤く火照ったヒスイの頬に、ちゅっ、とキス。
うなじに、ちゅっ。肩にも、ちゅっ。
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。キスをし出すと止まらない。
(うん、でも・・・)←コハク、心の声。

エッチをするとき。しないとき。

一応、けじめはつけるようにしている。※グダグダになってしまうことも多々有り。
しないときは、しない。
そうでないと、ヒスイが落ち着かず、そわそわしてしまうのだ。
(今日はもうしないぞ、うん)
ちなみに明日の朝は・・・する予定だ。


「は〜い。よく我慢できました」


入浴後、ヒスイの頭にタオルを被せ、ご褒美のキス。
舌を入れないよう注意しながら、ほんの少しだけ、濃度を上げる。
「ん・・・おにいちゃ・・・」
するとヒスイは照れて、とろんとした顔になり。
(可愛いなぁ・・・)
それを見たコハクが微笑む。
(こういう時間も大切にしないとね)
「ヒスイ、お腹の中、もう痒くない?」
「ん、平気」
シャワーとコハクの指で、洗浄中、何度もイッてしまったが、今はだいぶ沈静化ている。
「ね、お兄ちゃん」
ヒスイは甘えっ子全開でコハクに抱きついた。
「うん?」
「サルファー置いてきちゃって・・・怒ってないかな」
「大丈夫だよ。僕と入れ替わりでタンジェが向かったから」
「え?そうなの?」(そういえば・・・タンジェがいないような・・・)
今になってやっとタンジェの不在に気付くヒスイ。
「お兄ちゃん、はじめからそのつもりでこっちに来たの?」
「うん。こうして過ごす方が彼等にとっても良いと思ったからね」
「今頃えっちしてるかな?」と、ヒスイ。コハクは笑って。
「うん。してると思うよ」


それぞれ、一番好きな相手と。
甘く幸せな夜を過ごす。



しかし、あくまで任務中・・・不測の事件が起きても不思議ではない。

それは、夜明け間近のこと。
「んぅ・・・さむ・・・」
寒がったヒスイが、コハクの懐でモゾモゾ動き。
「ヒスイ?」コハクが目を覚ます。そして――
「・・・なんだ、これ?」
窓も、カーテンも、床も。目に付くもの全てが、凍っている。
ベッドの上は辛うじて無事だったが、すぐそこまで凍結が迫っていた。
「ヒスイ、起きられる?」
キスを与え、ヒスイを目覚めさせるコハク。
「んぁ〜・・・おにいちゃ〜・・・ぁ?」
ヒスイは寝惚け眼を擦り、起き上った。
「どうしたの???」
「うん、ちょっとね」
コハクはヒスイの肩を抱き、「見て」と部屋の中を指差した。


「・・・え!?なにこれっ!!」




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