「サルファー!!タンジェが大変なんだよっ!!」
雪原に降り立つサルファーに、ジストが詰め寄る。
「・・・あいつ、こんなところで何やってるんだよ」と、サルファー。
外出したタンジェがいつまでも戻らないため、城へ行ってみたところ。
タンジェによる戦闘の形跡が残っていたため、不審に思い、捜索していたのだ。
「近くの村で、偶然会ってね」
ジストに対し、コハクが事情を説明した。
トパーズ同様、北の魔物の手口と考え、スノーマンと人間が暮らす雪国の村を目指した。
公にはされていない村だが、コハクはその村への地図を持っていたのだ。
そこでばったりサルファーに出会った。
サルファーは総帥セレナイトからヒントを得たという。
それから村で、アイスパレスの話を聞き、二人はここまで来たのだ。
「ジストは?トパーズのお使いかな?」
続けてコハクに問われ、ドキッとする。
「あっ・・・うんっ!でもちょっと位置がズレちゃったみたいで・・・ヒスイ見つけたら、連絡するように言われてたんだけど・・・」
嘘のつけないジストは、洗いざらい喋ってしまった。
「成程ね」(確かに一番手っ取り早いな)
コハクは苦笑いで相槌を打ってから言った。
「とにかく急ごう」
「うんっ!!」
「あとは、わたくしからお話します」
操られていた間の記憶はぼぼないというタンジェが、意を決したように申し出た。
そこに至るまでの経緯を打ち明けるつもりなのだ。
それは――事件前日の話。
更にその前日は、三つ子の誕生日パーティが催されたばかりだった。
三つ子の誕生日は一族で祝うのが常だが。
サルファー個人の、サルファーのためだけの誕生日パーティをしてはどうかと閃いた。
自我の強いサルファーのことだ。
喜んでくれる筈だと、タンジェは確信していた。
ただ、そこでひとつ、ミスを犯した。
サプライズにするため、サルファーに詳細を伝えなかったのだ。
「明日は、できるだけ早く帰ってきてくださいませんこと?」そう話しただけで。
サルファーは・・・生返事だった。
そして翌日=事件前日の話となるが。
ご馳走と二度目のプレゼントを用意して、サルファーの帰りを待つも。
サルファーは親友のプラズマと出掛けたっきり、帰ってこない。
ご馳走が冷めきった頃、帰宅したが、そのまま口喧嘩に発展し。
“わたくしばかりが、好きみたい”
愛に温度差を感じて。そんな気持ちになった。
ありきたりな男女の光景といえば、そうなのかもしれないが・・・
感情に任せて寮を飛び出し、城に里帰りした際。
スノークイーンとの対決で、あっさり敗北を帰したのは、心が弱っていたせいもあった。
「わたくしに落ち度があったことは、承知しておりますわ」
けれども・・・
思うように、想いが通じなかった。
それが、無性に悲しい。
乙女モード全開で、溜息を洩らすタンジェ。
『自分の一番は自分』と、豪語するサルファーが好きだった。
こうなることは、目に見えていた筈なのに。
想いが深くなればなるほど、欲張りになる。
知らず知らずのうちに、相手に求めるものが多くなって。
「愛が等しく正しいわけではないのですわね」
「でもぉ〜、そういうものなんじゃないの〜?愛ってぇ」と、アクア。
「・・・・・・」
シトリンは思うところがあるようで、口を結んでいる。
「・・・・・・」
ヒスイはいまいちわかっていないみたいだったが・・・
「どんなものでも、愛は愛だよ」と、言った。
それからしばらくして。
「・・・女心を平然と踏みにじるとは、我が弟ながら、許せんな!」と、シトリン。
「サルファーだもん、しょうがないよ」と、ヒスイ。
「誰に似たんだろ〜ね」と、アクア。
「酷い話だ。フッ・・・」
ちゃっかり、スノークイーンも参加している。随分タンジェに同情的だ。
「そういえばぁ〜」
続けてアクアが、素朴な質問をした。
「なんで、アレ、オ○ン○ンのカタチしてたのぉ?」
フッ、しつこく笑って、スノークイーンが答える。
「彼女の深層心理が反映された結果さ」
「!!そ・・・それは・・・」
タンジェが両手で顔を隠す。色素が戻った今、真っ赤になっているのがわかる。
「あー・・・欲求不満か?」
不憫そうに、母シトリンが娘の肩に手をかける。
「へ〜、そ〜だったんだぁ〜」
アクアはニヤニヤ。
「・・・・・・」
ヒスイは複雑な面持ちだ。
(じゃあ、アレってサルファーの・・・最悪だわ・・・)
「サルファーには一度灸を据えてやらねばなるまい!」
改めて、シトリンが言った。
「面白そ〜♪」と、アクア。
「・・・まあ、いいんじゃない?」と、ヒスイ。
「フッ・・・私も力を貸そうではないか」と、スノークイーン。
いつの間にか、女子メンバーに馴染んでいる。違和感は、ない。
「!?お母様!!何をおっしゃって・・・わたくしはそんなつもりでお話した訳ではありませんことよ!?」
「タンジェよ!お前は見ているだけでいい!あとは我々に任せろ!!」
こうして・・・
シトリンをリーダーに、『サルファーにお仕置きし隊』が結成された。
「女の怖さ、思い知らせてやるぞ!!」
『サルファーにお仕置きし隊』、いざ参る!!
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