サファイアの視線が向く先は、混乱中のジョール。
くじ引きで三番手に決定していた。
「さあ、話せ!遠慮はいらん!」と、他でもないシトリンに背中を叩かれ。
立場上・・・断れない。
「・・・・・・」(でもこれで良かったのかもしれないわ)
ジョールにもまた、悩みがあった。
以下、回想と告白。
「あっ、あっ・・・イズさ・・・あ・・・っ、あっ」
ジョールの上で、腰を振り続けるイズ。
「あっ、あっ、あっ・・・けほっ、けほっ」
その間、喘ぎ続けていたジョールが咳き込む。
「ジョール・・・だいじょう・・・ぶ?」
「平気です、イズさん・・・」
そう答えたジョールの声は、少し枯れていて。かなり息も切れている。
イズが心配そうに覗き込む・・・それもいつものことだった。
「続けて・・・ください」
イズの頬に触れ、ジョールが淡く微笑む。
「ジョール・・・気持ち・・・いい?」
「はい、気持ちいいです。ですから、どうか、やめないで・・・」
ジョールの願いに応えるように、イズの腰が動き出した。
「あっ・・・あっあっ・・・あ・・・イズさ・・・けほっ」
「――という訳でして」
ジョールは、赤く染まった顔を両手で隠し。
「なかなかその・・・お出しにならなくて」
「あー・・・」と、シトリン。
イズが遅漏気味であることを察するが、それ以上に、タンジェが強い反応を示した。
いきなりジョールの手を握り。
「大丈夫ですわ!わたくしにお任せなさい!」
「タ・・・タンジェ様?」
サルファーとのセックスに苦労してきただけのことはある。
性の知識はかなり豊富で、しかも先進的だった。
タンジェは、早漏でも遅漏でも問題ないと力強く言い切り。
「方法はいくらでもありますわ」
「タンジェ様・・・」
早漏、遅漏の意味はなんとなく理解できた。
ジョールはタンジェの手を握り返し、続く言葉に真摯に耳を傾けた。
「前戯は男性がするものと思いがちですけれど、そうではないのですわ。先程もお話した通り、女性から、というものありですの」
それから改めて、フェラチオについて、更にはパイズリについて説明する。
「挿入以外の行為で、お相手の興奮を高めて差し上げれば良いのですわ」
それは、男性側にも言えることだが、あえて省略し。
「ええ、ええ、わかりました。タンジェ様、ありがとうございます」
ジョール、ここでも感動。
(ジョールさん・・・良かった・・・)
我が事のように、胸を撫で下ろすルチルの傍ら、サファイアが3本目のキャンドルを吹き消した。
四番手は、タンジェだ。
タンジェはこれまでの勢いのまま。
「わたくし、アナルセックスに興味があるのですけれど」と、恥かしがりながらも言った。
「どなたカ、ご経験のアル方――」と、サファイアが切り出した、その瞬間。
「「!!」」
ヒスイとシトリンが硬直した。そして・・・
「は・・・母上を見るなぁぁぁ!!」
突如叫んだシトリンが、ヒスイを抱き隠す。
シトリンは知っていた。というか、実際に見たことがある。
ヒスイがアナルセックスをしているところを。
「っ〜・・・!!」
ヒスイは、シトリンの腕の中で真っ赤になっていた。
シトリンは周囲に“見るな”と言ったが、見るに決まっている。
シトリンのその行動こそが、ヒスイが経験者であることを露骨に裏付けているのだ。
サファイアはそれが面白くて仕方がないらしく、「いつカラですカ?」と、尋ねた。
「私の番はもう終わってるでしょ!?」
正論を口にしたヒスイだったが・・・
1本目のキャンドルに再び着火されそうになり、慌てて答えた。
「子供産む前からしてたわよっ!!」
「そ・・・そうなのか?」
これにはシトリンも驚く。
「まあ、あいつなら、やりそうではあるが・・・」
最近はどうなんだ?と。
味方であったはずのシトリンまで質問を飛ばしてきた。
「時々してるけど・・・」
「母上・・・それは・・・き、気持ちいいのか?」
・・・どうやら興味があるのは、タンジェだけではないらしい。
結局ヒスイは、皆の視線を一身に浴びることになった。
「では、ヒスイサン、アドバイスヲ、お願いシマスー」
「・・・アクアに伝授したから、興味があるなら聞いてみて」⇒オトナのストセラ『S系セックス』参照。
「――だ、そうデス」
サファイアがまとめ、タンジェの、4本目のキャンドルを吹き消した。
これで残るはあと2本・・・だが。
五番手――シトリン。
「最近めっきりご無沙汰だからな!ネタが何もない!」
なぜか堂々と、自ら火を吹き消し。
六番手のサファイアは・・・
「ワタシは、処女ですのデー」と、話した。
大人の色気漂うサファイアの、意外な発言に、皆、目を丸くする。
「え?あれ?アレキは?」と、ヒスイ。
この場合、大人ver.のことを指している。
「残念ながラ」
「そっか、じゃあ、もうすぐだね」
「だと、イイんですケドネー。まだまだコドモなのデ」
アレキは三つ子兄弟と同じ歳だが、種族故の定めで、成長が非常に遅いのだ。
サファイアは苦笑いで、最後のキャンドルを吹き消した。
「!?」×5←サファイアを除く5名。
室内は一瞬真っ暗になったが、すぐに照明の灯りが戻った。すると。
「わ!?お兄ちゃん!?」
ヒスイが歓喜の声を上げる。
「ラリマー!?」
「イズさん!?」
「サルファー・・・」
「おお!ジン!」
それぞれのパートナーが隣に立っていた。
「ご協力、感謝します」
サファイアに向け、コハクが言った。
「イエイエ、コチラも楽しませて貰いマシタ♪」
今日は、3月14日。ホワイトデー。
男性陣がサプライズプレゼントの準備をしている間、サファイアが女性陣を引き受けたのだ。
男性陣のサプライズプレゼント・・・それは、手作りのアクセサリー。
合同で、二週間前から、工房を借りていた。
各自のこだわりが強いあまり、当日までズレ込んでしまったが、全員何とか間に合った。
「バレンタインのお礼、受け取ってくれる?」
「ありがと!お兄ちゃん!」
ヒスイをはじめ、大喜びしている女性陣を、サファイアが笑顔で見守る。
「ママ!」
そこに、アレキが駆けてきた。
「ぼくも、サルファーと一緒に作ったんだ!」
そう言って、木彫りのブレスレットを差し出す。
「あまり難しいのはできなかったけど・・・ママ?」
「・・・・・・」
まだまだ子供と思っていたアレキから、こんなに素敵なプレゼントが貰えるとは予想もしていなかった。
「・・・アリガトウゴザイマス」
嬉しそうに、瞳を伏せるサファイア。
低く屈んで、アレキを抱き締める・・・と。
「ママ、大好きだよ」
耳元で、幼いアレキの声がした。
「・・・・・・」(大好き、の意味が違うのでしょうガ・・・」
(私にとってハ――)
これもひとつの、恋物語。
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