「!!ひぁッ!?」
ヒスイの膣内で振動していたローターに、突然回転が加わった。
楕円のローターが膣道の中腹あたりで、縦横斜め、予測不可能な動きをする。
「な・・・んッ・・・!!」
呼んでも来ないコハクを探しに、よろよろと歩き始めたところだったが、驚き、ふらつき、カーテンに掴まる。
「はぁっ・・・はぁっ・・・あ・・・なん・・・で?」
膣が濡れている。頼りなく立つ両脚の間から、ジュクジュクと湿った音がして。
間もなく、膣口から愛液が漏れ出した。それもかなりの量だ。
太腿を伝うだけでは済まず、ぽたぽた、床の上に雫が落ちる。
まるでコハクに愛撫をされている時のようだった。
「っ!!」(なにが起きてる・・・の?)
得体の知れないものなのに、なぜかコハクを彷彿とさせる・・・
愛する男のフェロモンを、体が正しく認識しているだけなのだが。
事情を知らないヒスイは混乱するばかりだ。
「ん・・・はぁ・・・あッ・・・」
今もなお、不規則に回転し続けるローター。
ヌルついた膣襞の間から、容赦なく快感を掻き出す。
「あッ・・・んッ・・・!!」(だめ・・・なのに・・・)
フェロモンにより、否応なく発情させられ。快感に、染まる頬。
「はっ・・・はっ・・・」(えっちになっちゃう病気とか・・・あるのかな・・・)
息遣いもすっかり色めいて。
「あッ・・・あ、あ、はうん・・・ッ!!」
膣の中で快感が弾ける度、火照った肌の表面でも快感が弾ける。
「あ・・・おにぃ・・・ちゃぁ〜・・・」
段々、コハクとセックスをしている気分になって。
「んんッ・・・ふ・・・!!」
カーテンを握り締め、感じる。その時。
「・・・ん?」
ローターの回転が止まったかと思うと、いきなりそれが直進してきた。


「――!!!!」


子宮口にすっぽり嵌り、そこで一気に振動が強まる。
「ひぁ・・・!!」
両目を見開くヒスイ。カーテンから手を離し、お腹を抱えて再び蹲る。
「やっ・・・あ!!そこ・・・ゆらさ・・・な・・・いで・・・」
コハクの精液を溜め込んでいる子宮は、いつにも増して敏感で。刺激に弱くなっていた。
「あぁッ!!あぁぁぁ・・・ッ!!!」
抗う間もなく、絶頂の波に攫われる。
子宮と共に全身が痙攣し。床いっぱいに愛液が流れ出た。
「あ・・・ふ・・・」(おにい・・・ちゃ・・・)
思うように声も出ない。
「はぁ・・・はぁ・・・はふ・・・」(きもちいい・・・けど・・・)

それが、怖い。

(このまま・・・しんじゃったり・・・しないよね?)←大まじめ。





赤い屋根の屋敷、裏庭にて。

リモコンを手にしていたのは――オニキスだった。
と、言っても、リモコンを囲むように、ジスト、スピネル、メノウもいる。
最初にリモコンを拾ったのは、ジストだった。

以下、回想。

「ラジコンのリモコンかなんかかな?」と、ジスト。
手のひらに軽く収まるサイズだが、ボタンの数が多い。
四方向に▲印がついたものや、ぐるぐる回せるロールオンタイプのもの、等々が配置されている。
「双子のかもしれないね」と、スピネルが覗き込む。
ジストと一緒に来ていたのだ。
「電源はこれみたいだね」
何気なくスイッチを入れたのは、スピネル。
「なんも起きない?」
ジストもまた、何気なくボタンを長押し。
本体と思われるものの反応がなく、不思議に思っていた。
そこに・・・
「よっ!何してんの?」
「じいちゃん!」
これなんだけど〜と、二人はリモコンをメノウに渡した。
「へ〜・・・手作りっぽいけど、かなりよく出来てる」
メノウは、これが“何のリモコンか”よりも、“誰が作ったリモコンか”に興味があるようだった。
機能を確かめるように、片っ端から弄り回す・・・と、そこに。
「こんなところで何をしている」
オニキスが合流した。
「これ見てみろよ、なかなかのモンだろ?」
リモコンは、メノウからオニキスに手渡され、現在に至る――


「ところで、ヒスイは?」と、オニキス。
到着して、真っ先に想うのは、何年経っても変わらない。
リモコンを持ったまま、一路、リビングの窓辺へと向かう。
いつもなら、そこで幸せそうに眠っているヒスイを見ることができる。
ところが。


「あ・・・んぅ・・・」


弱々しくも、淫らなヒスイの声。
「・・・・・・」
コハクとセックスをしているのかと思い、手前で立ち止まる。
オニキスは無意識に手の中のリモコンを握り締めた。
その瞬間――


「あ゛・・・ッ!!」


ヒスイが鈍く喘いだ。
「・・・・・・」(まさかとは思うが・・・)
リモコンのボタンを軽く押してみる、と。
「あう゛・・・ッ!!あ!!」
同時にヒスイが切羽詰った声を出す。
「・・・・・・」
本体の正体を察し。外側からリビングの窓を開けるオニキス。
するとそこには・・・
「ヒスイ!!」
ヒスイがひとり床の上で、小さな体を丸め、震えていた。
「ん・・・ぁ・・・オニ・・・キス?」
「一体何があった?」
ヒスイを抱き起こすオニキスに。
「わ・・・かんな・・・」
膣口からトロトロ愛液を垂らしながら、腰から下の感覚がないと訴えるヒスイ。
「わ・・・たし・・・びょうきかもしれな・・・」
「落ち着け、ヒスイ」
オニキスが耳元で告げる。
それは病気ではなく。遠隔操作型のローターなのだと。
「・・・・・・え?そうなの???」
泣き濡れた睫毛で瞬きをして、ヒスイが見上げる。
「・・・そうだ。恐らく」
「っ〜・・・!!」
これまでの快感に、勘違いの恥ずかしさがプラスされ、ヒスイの顔が益々赤くなる。
誰の仕業かなど、今は考える余裕もない。
「びょ・・・病気じゃなかったら大丈夫だからっ!」
お兄ちゃんを呼んできて――と、ヒスイ。
「オニキス?聞いてる?」
「・・・ああ」
発情したヒスイの姿に、オニキス自身も発情しそうになっていた。
「待っていろ、すぐに――」
ヒスイの声で我に返り。
この場を離れる前にリモコンの電源を切ろうとした・・・までは良かったのだが。
その際、手から落としてしまう。
男として追い詰められた、このシチュエーションならではのミスだった。
ちょうどそこに。


「ヒスイぃぃ〜!!」


コハク、突入。そして、バキッ。何かを踏んだ。
「・・・・・・」(何でこんなところにリモコンが・・・)
コハクの足の下には、粉々になったリモコン。
「ちょっ・・・どうするの!?まだなかに入ってるのにぃっ!!」と、ヒスイが叫ぶ。
思わぬ連携をしてしまったオニキスとコハクは・・・謝るしかない。



「・・・すまん」「ごめん・・・」







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