「ただいま〜」
「おかえり。ヒスイ」

ちゅっ。

深い森の奥の屋敷でヒスイの帰りを待っていたのは、金髪の超美形・・・
シトリンと寸分違わぬ菫色の瞳をした男だった。
一見ツンとした感じの美人であるヒスイとはまた違い、優しい顔立ちをしている。はっきり言って女顔だ。
そして、左手の薬指にヒスイとお揃いの指輪をしていた。
「クッキー焼いたから手を洗っておいで」
「うんっ!」



「わ・・・チョコチップだぁ」

午後3時のティータイム。

ヒスイは喜んで、焼きたてのクッキーを次々口へと放り込んだ。
「お兄ちゃんの作るお菓子は絶品!」
ヒスイに“お兄ちゃん”と呼ばれた男の名前はコハク。
二人は血が繋がっていない兄妹の夫婦だ。
産まれた時から今日までずっと一緒にいる。
お互いに身も心も知り尽くした仲だ。
コハクは穏やかな笑顔でティーカップにミルクティーを注いだ。
ヒスイは紅茶が大好きなのだ。中でもミルクティーが一番。
「お城はどうだった?」
「うん、やっぱりシトリンはオニキスのことが好きみたい」
「それは良かった」
「ここまでは思った通りだね」
コハクとヒスイは頷き合った。
「シトリンはお兄ちゃんにそっくりだよ、ホント。あまりにも似てたから驚いちゃった」
「女の子は父親に似るっていうからねぇ」
ほのぼのとした空気が流れる。
「・・・ところで、ヒスイ」
「うん?」
「服、どうしたの?朝と違うね?」
「げふっ!?」
急に話を振られてクッキーを喉に詰まらせるヒスイ。
にこにこと微笑んでいるコハクの目が怖い。
「ちょっと汚れちゃって・・・お城で借りたの・・・」
「へぇ・・・そう」
「別に何も・・・あっ!」
やましいことは何もしていない。が、美しく整った顔で穴が空くほど見つめられると落ち着かない。
ヒスイはソワソワして紅茶を溢してしまった。
体にかかっても、もう熱くはなかった。
「洗ってくるっ!」
視線から逃げるように洗面所へ向かう。
「・・・洗濯するから全部脱いじゃって」
コハクが後ろから声を掛ける。
洗濯、掃除、炊事などの家事全般は昔からコハクがやっていた。
そのスタイルは今も変わらない。


ヒスイは言われた通り服を全部脱いだ。
「・・・いい子だね」
コハクがヒスイを抱き上げる。
そして、洗面台のふちに乗せた。
「お兄ちゃん?」
「・・・落ちないようにしっかり掴んでてね」
「え?」
柔らかな笑顔のコハクが両手でヒスイの足を開いた。
「あっ・・・や・・・」
その先に顔を埋める。
まずは舌先でくまなく愛撫。
ぴちゃぴちゃと洗面所に違和感のない音が響く。
「んっ・・・朝・・・したばっかり・・・でしょっ!」
そう諫めるヒスイも滴るほど濡れている。
「そうなんだけど・・・なんかまたしたくなっちゃった・・・だめ?」
コハクが甘えた声を出す。
「あっ・・・や・・・ん」
皮の包みを指で開き、中の粒を舌で転がすと、ヒスイは悩ましげな声を洩らした。
「ああ・・・んっ・・・」
背中を逸らせて快感に浸る。
「お・・・にいちゃん・・・」
「ヒスイ・・・」
「おにいちゃん・・・口のまわり・・・べたべただよ」
くすりと笑ってヒスイがコハクの口元を舐める。
舐めて、キスをして、舌を絡めて・・・
「・・・ヒスイ・・・そろそろ入れていい?」
「うん。いいよ・・・」
ヒスイのお尻はまだ洗面台に乗っている。
「ここだと・・・ほら、いい感じに入るかな〜と・・・」
「う゛・・・っ・・・おにいちゃ・・・」
「どう?気持ち・・・いい?」
コハクが優しく髪を撫でる。
「う・・・ん・・・はぁ・・・っ」
「・・・じゃあこれはどうかな?」
ひょいとコハクがヒスイを抱き上げた。
ヒスイの体は洗面台からも地面からも離れた。
一部コハクと繋がっているだけだ。
「おにい・・・ちゃんっ・・・!」
ヒスイはコハクの体にしがみついた。
両手を首に両足を腰に強く絡ませる。
体を持ち上げられると、股の間にどっしりと自分の体重がかかった。
コハクのペニスが更に深く突き刺さる。
「うぅ・・・ん・・・あっ・・・あぁ・・・んっ!」
「もっと・・・ぎゅっとして、ヒスイ」
「わ・・・たし・・・これ・・・だめ・・・すぐ・・・イッちゃ・・・!!」
ヒスイが頭を振って激しく喘いだ。
「あ・・・ん・・・あはぁ・・・ん」
「・・・いいよ。何回でも・・・イッて」



「・・・ここか・・・」
シトリンは屋敷の前に立った。
赤い屋根の大きな屋敷・・・横に長く窓が多い家だった。
オニキスから受け取った地図を手に迷わずここまできた。
背中に大鎌・・・戦闘スタイルだ。
シトリンは勇んで扉を叩いた。
「あっ・・・あ・・・おにいちゃん・・・だれか・・・きた・・・よ」
「うん」

トントン!トントン!

せわしなく扉を叩く音が聞こえる。

「はぁ〜い!ちょっと待ってくださ〜い!!」

コハクが大声で返事をした。が、ヒスイを離す気配はない。
体を上下に揺すってヒスイの内側を激しく刺激し続けている。
「・・・もう少し・・・ね・・・」
「はっ・・・ぁ・・・あぁ・・・」

ドンドン!

扉を叩く音が更に大きくなった。

「取り込み中なんで〜もう少し待っててください〜!!」

「あ・・・っ!う・・・っ!」
ヒスイの体がビクンッ!と震え。
「・・・ちゃんとイッた?」
「う・・・ん・・・」
「じゃあ、ちょっと見てくるから・・・」
コハクはヒスイに優しくキスをしてそっと下へ降ろした。
それから急いでズボンを上げる。

ドン!ドン!

「は〜い!只今〜!!」



イライライラ・・・
「一体いつまで待たせるんだ!この家はっ!!」
(取り込み中だと!?ふざけるな!私は気が短いんだ!!)
「強行突破してやる!」

バンッ!!

痺れを切らしたシトリンは玄関扉を蹴破った。
洗面所は玄関をくぐってすぐの場所にある。
「な・・・」

絶句。

真っ先に目についたのは裸で床に座り込んでいるヒスイの姿だった。
(オニキス殿とさっきしていたではないか!!今度は他の男と!?)
「・・・許さん!覚悟しろっ!!」
シトリンが大鎌を振りかざす。

バシィン!!

「・・・いけないなぁ、お母さんに手をあげちゃ」
シトリンの鎌を止めたのはコハクだ。
しかも手に持っているのはモップだった。
(モップで鎌を止めるだと!?)
シトリンは一旦引いた。
(あり得ん!私はこれでも国で指三本に入る腕前と言われているのだぞ!?)
「僕が相手をしよう。かかってきなさ〜い」
コハクがモップを構え、余裕たっぷりに挑発する。
「おちょくっているのか!?」
「君の相手はこれで充分」
コハクの態度はいちいちシトリンの神経に障った。

そして更に・・・

「!!!前っ!チャックを締めろ!!」
「あ・・・失礼。君があまりにも急かすから、閉め忘れちゃったよ」
ははは、と爽やかに笑いながらチャックを上げるコハク。
(何なんだ!?この男は!!)
しかし隙がない。
シトリンはじんわりと汗をかいた。
「いくぞ!」
「ど〜ぞ」

ビュッ!スッ・・・

シトリンの振った鎌を、コハクのモップが受け流す。
何度攻撃を仕掛けてもその繰り返し・・・
(強い!この男・・・デキる!!)
コハクから攻撃を受けることはない。
明らかに手加減されている。
それがまた悔しい。
(それにしても・・・この顔・・・どこかで・・・)
互いの武器を交えながら、シトリンはふとそう思った。
(ひときわ自己主張の激しい金髪・・・メルヘンチックなパープルアイ・・・・・・私だ!!)
「お前が・・・父かっ!!」
コハクは何も言わず静かに微笑んだ。
(なんということだ!!こんな男が私の父とは!!オニキス殿とは正反対ではないか!!)

はぁっ。はぁっ。

「くっ・・・!!覚えていろよ!!」
コハクとの実力の差は歴然だった。全く歯が立たない。
シトリンは唇を噛んで戦いから身を引いた。
(なぜ私が悪役のような捨てゼリフを・・・)
「オニキスによろしく〜」
コハクは愛想良く手を振ってシトリンの後ろ姿を見送った。
(シトリンは血の気の多いところまで僕に似ちゃったなぁ・・・やれやれ)






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