「・・・・・・」
妊娠より、ポテトサラダ。
野菜に、エンジェライトに、負けた気がする。
この様子では、情事の相手について一切話してはいないだろう。
これ以上、ヒスイを野放しにはできないと考えたトパーズは、ヒスイの腕を掴み、思いっきり引っ張った。
下駄箱とは、逆の方向へ。
「トパ?どこいくの???」
「決まってる。保健室だ」



そしてここ、保健室では。

「ヒスイさんと・・・主任!?」
慌てて席を立つエンジェライト。
(もしかして、主任にバレて・・・退学なんて話が出るんじゃ・・・)
深刻に、勘違いし続けている。
「あの・・・」
ヒスイを擁護すべく、エンジェライトは口を開いた。しかしそこで。


「こいつの相手はオレだ」


トパーズが、堂々宣言。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
許容範囲を超えた驚きに直面すると、心身が硬直してしまうものなのか・・・
エンジェライトはしばらくの間、石化状態だったが。
「主任・・・今なんて・・・」
やっとそう聞き返した。すると・・・トパーズは、2度は言わず。
エンジェライトの目の前でヒスイに襲い掛かった。
「!!ちょっ・・・トパ・・・!?」
「説明するより早い」
片手でヒスイの手首を掴み、軽く吊るし上げるようにして壁に押し付ける。
「!!なにす・・・」
「見せてやれ。お前が・・・オレでイクところを、な」
トパーズはもう一方の手をヒスイのスカートの中へ入れた。
「!!あ・・・ッ!!」
「早く濡らせ」
中指に人差し指を添え、膣口に引っ掛け、抉じ開け。強引に押し込む。
「んぐ・・・ッ!!!」
拡張のショックから、ヒスイは喉を反らし、頭部を壁に擦り付けた。
「どうした、開きが悪いぞ?」
唇をヒスイの耳元に寄せ、意地悪に囁くトパーズ。
「っ・・・たりまえ・・・でしょ・・・っ!!エン先生がみて・・・っあッ!!んッ・・・んーッ!!!」
泣こうが喚こうが、トパーズの指は止まらない。
「あひ・・・ッ!!んぅ・・・ッ!!」
埋没の快感が喉の奥から溢れ、舌の根元が痺れてくる。
「あ・・・あ・・・」
苦しくなって大きく口を開けると、端から唾液が垂れ、エロティックな表情が出来上がった。



「ヒスイさん・・・」
あるまじき光景に卒倒しそう・・・なのに、ヒスイから目が離せないエンジェライト。
どうすればいいのかわからないまま、ヒスイに向け手を伸ばす。
ヒスイは薄目を開け、その手を見た。
「エ・・・エン・・・せんせ・・・」
「黙れ」と、トパーズ。
ヒスイの耳の後ろから首筋にかけて唇を滑らせ・・・

かぷッ。

「あ」

そのひと噛みで、ヒスイは大人しくなり。
エンジェライトの視線を浴びながら、トパーズの手で淫乱に変貌を遂げていった。
トパーズは2本の指でヒスイの膣を占拠し、直接命令を下した。
チュクチュクチュクチュクチュクッ!!
「あッ!あんッ・・・あッあッあッあ・・・」
膣内を激しく擦られ、潤ってくると、じっとしていられなくなって。
ヒスイは、フラダンスでも踊っているかのように、しきりに腰をくねらせた。
「ひく・・・ッ!!あ・・・」
膣奥を触られている時は、踊りをやめ、じっと快感に酔い痴れて。
それが済めば、また、踊り出す。
「あ・・・ふぁんッ・・・トパ・・・」
トパーズはヒスイの膣から指を抜き、その指で今度はクリトリスをまさぐった。
「んッ!!そこ・・・だめ・・・っ・・・」
ぬるっとした感覚・・・続いて、ぷちゅっ!
「ッあ〜・・・!!!」
突起が潰れるのと引き換えに、鮮烈な快感を得るヒスイ。
膣が、狂ったように疼き出す。
「ふぁッ・・・あ!!あぁッ!!」
壁際でどんなに髪を振り乱しても、快感が抜けることはなく。
恐ろしい勢いで、体の芯に滲み込んでくる・・・
「はぁはぁ・・・あ・・・んんッ・・・」
トパーズが拘束していた手首を離すと、ヒスイはすぐシャツを掴んで。
ペニスを求める、甘えた声を出した。
「あ・・・トパぁ〜・・・」
ヒスイのクリトリスを気ままに弄りながら、片手でベルトを外し、チャックを下ろすトパーズ。
そして・・・
正面から、ペニスが差し込まれた。
「!!?」(な・・・なに!?)
恥骨の下を通り、溝に沿って、お尻側へと抜ける。
「あ・・・・・・ッ!!」
膣への挿入はなく、何度もそれが繰り返された。
“素股”という、いつもと違う性器の交流に、ヒスイが戸惑ったのは最初だけで。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
(なにこれ・・・きもち・・・い〜・・・)
ペニスを縦に感じることはあっても、横に感じることは少ない。
まさに今、その瞬間で。トパーズの逞しい幹に跨っていることに悦びを覚える。
「はぁ・・・はぁ・・・あ・・・ん・・・」
(すご・・・にゅるにゅるしてる・・・)
両手をトパーズの肩に乗せ、下を向いて、動く茂みを見ていると。
愛液が、膣の中から蔓のように伸びて、どんどんペニスに巻き付いてゆく・・・
クチュクチュクチュクチュ・・・男と女が擦れ合う、甘美で淫靡なひととき。
「は・・・あん・・・」
ヒスイは、膝の裏側まで愛液で濡らし。絶頂スレスレのところを彷徨い出した。


「ヒスイ」


名前を呼ばれて上を向くと。
「んぅ・・・ッ!!!」
唇に唇を被せられ、震える舌を引っ張り出される。
ぬるりと絡め取られて、強く吸い上げられた途端・・・


「んひ・・・んッ・・・!!」


挿入なしで、昇り詰めるヒスイ。
「は・・・ふぁ・・・」
イキ果て。背中で壁を滑り落ちる・・・するとすぐ。
トパーズがヒスイの顎を掴み、口を開かせ、そこにペニスを潜らせた。
「んむッ・・・」
ヒスイの舌にペニスが乗っかる。
「そのまま口開けてろ」
ヒスイの顔を両手で挟み、トパーズが腰を振り出した。
亀頭でヒスイの喉を突く・・・フェラチオの更に上をいく、イマラチオだ。
「んぐ・・・ッ」
口を膣同様に扱われ。グチュグチュと音が鳴る。
愛液の代わりに唾液が溢れ、ヒスイの顎を伝った。
「んんん・・・」
口の中で、ピクンッ!トパーズのペニスが跳ね。
(あ・・・トパ・・・でそう・・・)と、息を殺すヒスイ。
トパーズはヒスイの顔を引き寄せ。次の瞬間・・・
「んー・・・!!!」
ヒスイの・・・喉の奥で射精した。
飲ませ上手で、咽させることなく、ヒスイの食道に精液を流し込む・・・
「んん・・・」
喉元を指先で優しく撫でられ、目を閉じるヒスイ。
(おなか・・・あつい・・・)
胃の中に精液を入れられても、嫌じゃない。
そう、嫌じゃなくなるまで、トパーズにみっちり仕込まれたのだ。



一方、この状況に穏やかでない、エンジェライト。
(あの主任が・・・こんなに酷い男だったなんて)
「それでも・・・教師ですか・・・」
トパーズの背中にそう言い放つ。
「クク・・・人のことが言えるのか?お前も似たようなことをしていただろう。女生徒と」
ベルトを締め、トパーズが振り返る。
「!!!!」
エンジェライトはみるみる青ざめて。
「え?そうなの?エン先生も???」と、ヒスイは割合暢気だ。
エンジェライトは―複数の女生徒と問題を起こし、前の学校を辞めていたのだ。
無論、そんなことは履歴書には書かれていないが、調べればすぐわかる。
「とんだヤリチン教師だ」
トパーズがニヤリと笑う。
「・・・・・・」
黙って俯くエンジェライト。
かつては、極度の八方美人で。誘われると断れず。
次々と関係を持ち・・・結果、多くの女生徒を傷つけ、泣かせることになってしまった。
罪の重さを自覚し、すべてを清算して辞職。
その後、この学校に保健医として再就職し。カウンセリングは、罪滅ぼしのつもりで始めた。
そんな経歴の持ち主だった。
「否定はしませんが、過去形にしてください」
エンジェライトは顔を上げ、強い口調でそう言い返した。
「同じ過ちを犯すつもりはありません」
生徒との恋愛をタブーとし、草食男子として生きる覚悟を告げる、が。
「知ったことじゃない」
肉食男子トパーズは一蹴し。
「が、ここで保健医を続けたければ・・・わかるな?」と、口止め。
エンジェライトは頷くしかない。
「それから――」
トパーズはヒスイの頭を鷲掴みにして言った。


「この女は、お前が相手にしてきた女達とは違う。余計な世話を焼くな」


思いっきり牽制、だ。
「ふたりは・・・どういう・・・」
エンジェライトがもっともな疑問を口にすると。


「夫婦」と、トパーズ。
「親子」と、ヒスイ。


回答が見事に食い違う。
「あ、えっと・・・」
トパーズに睨まれ、慌てて訂正するヒスイ。
「親子で夫婦っていうか・・・」
「・・・・・・」(親子で・・・夫婦・・・)
ヒスイが母親。トパーズが息子。
両想いなのはわかったが、開いた口が塞がらない・・・というか、顎が外れて落ちそうだ。
「ついでに言っとくが、オレ達も人間じゃない」
お構いなしに、トパーズがそう付け加える。
人間ではない、即ち、外見どおりの年齢ではないということ。
確かにそれで合点はいくが・・・
「・・・・・・」
(息子の子供を妊娠して・・・どうして悩まないんだろう・・・ヒスイさん・・・)
実に不思議だ。



「種族詐称は大目に見てやる。ただし――」
トパーズは一枚のメモを机に叩き付けた。そこに記されているのは、自宅の住所。
定期的に野菜を届けることを条件に出し、エンジェライトが応じる。
農家の息子にしてみれば、お安いご用だ。むしろ、需要があって嬉しい。
「さつまいも、好き?」
先日、実家から山のように送られてきた、さつまいも。
エンジェライトがヒスイに尋ねると、すぐに返事が返ってきた。
「好きっ!」
「だったら、早速送るよ」と、エンジェライト。
ヒスイは嬉しそうに笑って、礼を述べ。
「トパーズ!トパーズ!」
笑顔のまま、トパーズのシャツを掴んで、見上げる。そして・・・


「さつまいも貰ったら、スイートポテトも作って!!」



後日。保健室。

「・・・またヒスイさんがいない」
体育の時間。つまり、セックス中だ。
「妊娠しているのに・・・」
また指で机をトントン。心配事が重なり、相変わらずエンジェライトは落ち着かない。
「それにしても・・・」
(どうして体育の時間ばかり・・・)と、校庭を眺めていると。
仲良し同士が二人一組になり、準備体操を始めた。ぴったり15組だ。
「ヒスイさんがいたら、ひとり余ってしまうのか」
何気なく口にして、ハッとする。ヒスイには、二人一組になる友達がいないのだ。
(もしかして・・・体育に出席させないのは・・・)
「準備体操で・・・ヒスイさんをひとりにしないため?」
ひとつ気付くと、色々辻褄が合ってきて・・・エンジェライトの方が恥ずかしくなってくる。
先日の、あの鬼畜エロっぷりには驚いたが。
同じ学び舎で数年間共に過ごし、トパーズが、気配りのできる人物であることは知っている。
エンジェライトは空を仰ぎ。
「主任の、ヒスイさんに対する愛情は、僕が思っていたよりずっと深いのかもしれない」と、笑った。




モルダバイト女子高等学校。

そこは・・・肉食男子と草食男子が共存する、乙女の園である。




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