本当は、学校に忘れものなどしていないが、家に帰るに帰れず。
ジストは再び中央広場まで戻った。
空いているベンチに腰掛け、ぼんやり・・・
「・・・・・・」
恋の病・・・とよく言うけれど。
こんなにも進行が早いものなのか。
何を求めるでもなく。穏やかに。のんびり恋をしていたかったのに。
「何だよ・・・これ・・・」
ヒスイへの恋心は緩やかな上り坂。今まではそうだった。
それが、一緒に学校へ行くようになってから、急斜面を一気に駆け上ったように。
胸が・・・苦しい。
と、その時。頭の上に重い鞄をのせられた。
「何してる」
「兄ちゃん!!」
ベンチの後ろにトパーズが立っていた。
「兄ちゃん・・・」
なぜか・・・ホッとする。
「兄ちゃんも今帰り?」
教材が詰まったトパーズの鞄をジストが抱えて歩く。
「なんか二人で歩くの久しぶりっ!兄ちゃん、いつも仕事忙しそうだもんな」
トパーズの隣で他愛のないお喋りをしながら、段々とジストが元気を取り戻す。
トパーズが一緒なら、家に帰るのも怖くない気がした。ところが。
「オレもさっ!今ヒスイと一緒に仕事してて・・・」
ジストがそう口にした途端、トパーズが足を止めた。
「・・・もういっぺん言ってみろ」
「?だから、ヒスイと一緒に仕事・・・兄ちゃん?」
“ヒスイと一緒に仕事”二度聞いたトパーズは身を翻し。


「行くところができた。お前は先帰ってろ」




エクソシスト教会。司令部。

そこには総帥セレナイトと向き合うトパーズの姿があった。
「ヒスイとジストを同じ任務に就かせるとは、どういう了見だ?タヌキオヤジ」
冷静な態度ながらも、セレに喰ってかかるトパーズ。すると・・・
「君はヒスイの息子だが、ヒスイのことが好きだろう」
「・・・・・・」
「ジストもヒスイの息子だが、少なからずヒスイを想っている」
「・・・・・・」
「君は、それに気付いているから、ここへ来た。違うかね?」
「・・・・・・」
トパーズの無言は主に肯定の意味で用いられる。
セレもそれを知った上で話を進めていた。
「カーネリアンも心配していることだし、君に“土産”を持たせてやろうと思ってね」
「“土産”?誰が頼んだ?余計なお世話だ」と、トパーズが突っ撥ねる。
それからセレを見据え、言った。
「オレは・・・」


ヒスイを連れていく。




赤い屋根の屋敷。

「おにい・・・ちゃん?」
部屋に明かりはついていた。ついていたが、コハクの姿もメノウの姿もない。
屋敷にヒスイひとりだ。
「誰もいないの?」
キッチンのテーブルには夕食が並べられている。ヒスイとジストの分だ。
火を使わずそのまま食べられる、冷製パスタ、有機野菜のサラダ、じゃがいものスープ、デザート諸々・・・と、もうひとつ。コハクの置き手紙。


今夜は遅くなります。


任務を早く片付けたいから〜云々、理解を求める文章と、もちろん愛の言葉もしっかりと綴られていた。
「お兄ちゃん・・・」
手紙を胸にあて、コハクを想う。
「仕事だもん、仕方ないよね」
わかっていても、寂しい。コハクと離れることに慣れていないのだ。
「学校であったこと、色々話したかったのにな・・・」




それから数時間後・・・


「ただいま〜」


小さな声で呟きながら、コハクが帰宅した。
(ヒスイはもう寝てるよね?)
物音をたてないように、裏口からそっと入ると・・・
「ヒスイ!?」
キッチンの椅子に腰掛けたまま、ヒスイは眠っていた。
現代用語辞典を開き、その上に突っ伏している。
(現代用語辞典?学校で困ったことでもあったかな?)
不思議に思いながらも、とにかくベッドに運ぼうと、コハクがヒスイの肩に手をかける・・・と。
「んぁ?お兄ちゃ〜・・・おかえり〜」ヒスイが目を覚ました。
「お兄ちゃんに話したいこと、たくさんあって・・・だから、待ってた」
眠い目を擦りながら話す。
「ヒスイ・・・」(僕と話をするために待っててくれたなんて・・・っ!!)
嬉しくて顔が崩れる・・・ところを引き締める。
ヒスイの前ではいい顔を見せたい。ここで気を抜く訳にはいかなかった。
「ごめんね、遅くなって」「ん・・・」
まずはヒスイと唇を合わせ。
「・・・今、紅茶淹れるね」
「うんっ!」


「・・・でね、そのコッパーって子に応援団に誘われたんだけど、断ったの」
生徒会長のコッパーは、応援団の団長でもあった。
ヒスイはチアガールとしてスカウトされたのだ。
「チアガールってあれでしょ・・・ポンポン持って飛んだり跳ねたり・・・」
できる訳がないと、ヒスイが拗ねた顔をする。
「チア・・・ガール?」(いいぞ!!それ!!絶対可愛い!!)
盲点だった。コスプレ新境地だ。
コハクのボルテージが急上昇する。
チアガールの衣装を着たヒスイに応援してもらえたら。
きっと、どんなことでも頑張れる。
(まずはポンポン作らないと!!フワフワのやつを!!スカートはうんと短くして。パンツのバックデザインにも凝るぞ!!)
それからそれから・・・
(型紙起こして、生地買いに行って・・・)
その前に任務を片付けなくてはならないが、一層気合いが入る。
(よしっ!やるぞ!!)


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
コハクの妄想露知らず、ヒスイが見上げる。
「んっ?」
「これね、ジストに買って貰ったの!」
「これ?」(りんの玉じゃ・・・)
コハクはもちろん知っている。
「何だかわからないけど、露店で見つけて」と、ヒスイ。
「ああ、そういうこと」くすり、コハクが笑う。
「ヒスイ、これはね・・・」
耳元に口を寄せ、それが性具であることをヒスイに告げた。
「え?」ヒスイは耳から赤くなり。
「使ってみる?」コハクが冗談で言うと。
「うん」と、赤い顔で頷いた。
「折角買って貰ったんだから、一度は使ってみないと・・・」
「・・・そうだね」
セックスで道具を使うのはあまり好きではないのだが。
(注射器で失敗してるしなぁ・・・)
事情が事情なだけに、駄目とは言えない。
「じゃあ、ベッド行こうか」
「うんっ!!」
「っと、先行っててくれる?今準備するから」
「ん!わかったっ!」



寝室にて。

いそいそと服を脱ぎ、ベッドに飛び乗るヒスイ。
すぐにコハクがやってきた。お湯の入った器の底にりんの玉が沈んでいる。
「これはね、温めて使うんだ」
「へ〜・・・」
女性器・・・つまり、膣に入れるものなのだと、コハクはヒスイに説明し。
「こっち、慣らしておこうね」
「ん・・・」
仰向けでヒスイに両脚を開かせてから、お尻の下に枕を入れ、高さをつけた。愛撫し易くするためだ。
片方の手でヒスイの陰唇を摘み、隙間に舌を入れるコハク・・・丁寧に内側の粘膜を舐め出した。
「あ・・・や・・・そんなとこ・・・んぅっ・・・」
舌先で擦られ、次第に辺りがヌメってくる。
「は・・・あぁ、あ・・・」
柔らかく温かいコハクの舌に尽くされ、膣口から愛液が滲み出しているのだ。
コハクは、ヒスイの膣口にキスをしては舌を入れ、少しずつ膣肉をほぐし始めた。
ぐちゅぐちゅ。そして、どろ・・・っ。
コハクの舌戯に応え、膣内から愛液が溢れる。
「うッ・・・ん・・・ッ!!」(やだ・・・たくさんでてきちゃっ・・・)
枕を愛液で汚すのは抵抗があったが、自分で分泌量を調整できるはずもなく、結局は垂れ流す。
「はぁ・・・あッ!おにいちゃ・・・あんッ!!」
コハクはもう片方の手でヒスイのクリトリスを押さえた。
指と舌を同時に使い、ヒスイに更なる愛撫を加える。
「ああ・・・ッ!!あ!!」
クリトリスと膣の間で循環する快感。
「あッ、あッ、あッ・・・」
ヒスイもじっとしていられず、コハクの髪を掴んで腰を揺らした。
「うッ・・・ぅ・・・おにいちゃぁ・・・」
すると今度は舌と指が入れ替わり。クリトリスに舌が被せられた。
繰り返し舐め上げられ、コハクの唾液でクリトリスも濡れてくる。
「ふは・・・ぁ・・・」
コハクは、その先端を吸いながら、ヒスイの膣に親指を向け。
ぷしッ!!開かれた瞬間、ヒスイの膣口が飛沫を上げた。
「ん・・・ッ!!!」
ぐりぐり、ぐりぐり、膣に親指を捻じ込まれ、驚くヒスイ。
「あ・・・!!!」
(ふと・・・いっ・・・!!)
親指の挿入は慣れていないのだ。
(なんかいつもとちが・・・)
「はぁはぁ・・・あ・・・あぁ・・・」
コハクの親指と一緒に、膣口がぐにぐにと動く。
ぬぽッ!コハクが指を引き抜くと。
指先に付いた愛液が伸びて。美しく弧を描いた。そして。
ぐにゅぅッ・・・再び親指を入れた時の音からして、ヒスイの膣肉が充分にほぐれていることがわかった。
「あ・・・ッ!!あッ!!ああッ!!」
(やらしい音するなぁ・・・ヒスイ・・・可愛い・・・)
ぬぽッ!ぐにゅッ!ぬぽッ!ぐにゅッ!
こうして、親指を何度か抜き差ししたあと・・・


「そろそろ・・・入れてみる?」


「う・・・ん」
2個で1組となっているりんの玉。1個は直径1〜2cmほどで。
もう1個は、それより若干小さいつくりになっている。
愛を宿すため、りんの玉に口づけをするコハク。
それから、指を使って順番に玉をヒスイの膣内へ落した。
「・・・少し体動かしてみて?」
「ん・・・あッ・・・!!」
膣内でりんの玉が繊細に震動する。
ひとつは空洞、ひとつは玉の中に玉が入った二重構造で。
その二つがぶつかり合うと、何ともいえない美音を響かせるのだ。が・・・
「あふッ・・・う・・・」
なにぶん初めての経験で・・・異物感と快感が半々だ。
「気持ちいい?」と、コハクが尋ねる。
「よ・・・よくわかんな・・・」ヒスイは涙目で答えた。
「脚開いて、ヒスイ」
「ん・・・」
コハクに言われるがまま、ヒスイが脚を開くと。即、膣口に亀頭をあてがわれ。
ジュボッ・・・!!勢い良くペニスが追加挿入された。
「おにいッ・・・!?あく・・・ッ!!!」
「りんの玉はね、こうやって使うんだよ」
膣内で、ペニスと一緒に動く、りんの玉。
「ひッ・・・ぁ・・・!!」
ペニスに弾かれた玉が膣粘膜を滑り。時には膣壁に食い込み。
また、時には子宮口にあたり、裏の方まで丸い玉が回り込んだ。
「うッ・・・うぅぅんッ!!!」
極太ペニスがジュボジュボと膣内を往復する中、縦横無尽にりんの玉も転がる。
「あん!あん!あ・・・んぐ・・・ッ!!」
亀頭と子宮口の間に玉が挟まり・・・そのまま押し上げられ。
「ひぐ・・・ッ!!」
強い刺激を受けたヒスイが大股開きで泣き喘ぐ。
「あ・・・はぁ・・・ッ!!!」
反らした喉元に、すかさずコハクが唇を寄せた。
そこに何度もキスを落とし、痕が残らない程度に吸って。
「あ・・・ッ!!ん〜・・・!!!」
指を絡め、上からヒスイと唇を重ねる。
「・・・・・・」
(ヒスイ、気持ち良さそうだな)
りんの玉は女を悦ばせる性具として有名だ。
ヒスイは今、りんの玉とペニスと、どちらに感じているのか。
なんとなく釈然としないまま、コハクは腰を振り続けた、が。
「あッ!あぁ・・・!!!おにいちゃ・・・ん・・・む」
喘ぐヒスイをキスで黙らせ、考える。
「・・・・・・」
昔から、道具を使うのはあまり好きではなかった。
(何でかなぁ〜と、思ったら。ああ・・・そうか、僕は・・・)


道具にまで、嫉妬するんだ。


自分以外の物が、ヒスイを喘がせる。それが嫌なのだ。
ピタリと、コハクの動きが止まった。
「お・・・にぃ?ど・・・したの?」
頬を紅潮させ、不思議そうな顔をしているヒスイにまたキスをして。
ズルンッ・・・ペニスを引き抜くコハク。
「・・・中の、そろそろ出していい?」


「よしよし、いい子だね〜・・・」


ヒスイをしゃがませ、トントンと腰を叩く。
「ん・・・ぅ・・・あッ・・・」
下向きになった膣口から、りんの玉が出てきた。
それをもとの器に戻すとすぐ、後ろからヒスイの腰を引き寄せ。
「続き、させてね」と言いながら、コハクは自身のペニスを掴み、亀頭をヒスイの膣口に押し込んだ。
「あ・・・ぁ・・・おにいぃ〜・・・」
「・・・好きだよ、ヒスイ」
「・・・っ!!たしも・・・っ!!」
ヒスイはうつ伏せで枕に顔を埋め、お尻を高く上げている。
その背中に覆い被さるようにして、コハクは上体を曲げ、両手をシーツについて。
結合部をより密着させると、深く挿入したペニスでヒスイの膣内を思う存分掻き混ぜた。
「あ・・・あ・・・はぁ・・・ッ!!」
ズッ!ズッ!コハクが腰を前後する度。
ガクガク、ヒスイがお尻を上下させ。
摩擦された愛液がブチュブチュと鳴る。
「はぁはぁ・・・あ・・・はん・・・ッ!!」
二人は、息を継ぐのも忘れるほど、性器を激しく擦り合わせた。


モルダバイトにしては珍しく、蒸し暑い夜だった。気温25度を超える、熱帯夜。


ジメッとした空気が、二人を益々淫らな気分にさせる。
「あ、あ、あ、あッ!!」
ヒスイも絶頂間近・・・だったが、その時。
「!?」
ぽた・・・っ。と、一滴。
ヒスイの背中に、コハクの汗が落ちてきて。
「あ・・・」(おにいちゃんの・・・あせ・・・)と、思った瞬間。


「・・・あぁッ!!」


膣内に蓄積された快感が一気に弾け飛んだ。
「ふは・・・ごめ・・・」
夏の夜の、嘘みたいな出来事。
(汗でイッちゃうなんて・・・どれだけ好きなの、お兄ちゃんのこと)
「ヒスイ?」コハクも驚く。
ヒスイの絶頂に合わせて射精するつもりだったのだが、予定より早くイかれてしまった。
「わ・・・たし・・・おにいちゃんの・・・汗で・・・」
「汗?」言われて初めて自分が汗をかいていることに気付くコハク。
「おにいちゃん・・・めったに汗かかないから・・・」と、ヒスイ。
セックスをしている時も、コハクが乱れることは殆どなく。
汗をかきながら腰を振る姿など、そうそうお目にかかれるものではない。
「だから・・・」
それだけ夢中になってくれたのかと思うと。
「なんか・・・うれし・・・くて・・・イッちゃった・・・」
「ヒスイ・・・」(汗が嬉しいなんて・・・)
言われたコハクも、嬉しい。
「おにい・・・ちゃん」
「ん?」
「汗をかいたのは・・・今夜が特別・・・暑いから?」


「違うよ。ヒスイのことが好きだから」


汗もかくし、射精もする。
「あッ・・・おにい・・・」
ぐるんと、ヒスイの体の向きを変え。後背位から、正常位へ。
「あッ・・・んんッ!んん・・・んッ!!」
ユサユサ、腰を振りながら、ヒスイと何度もキスをして。
間もなくコハクは膣内射精した。


「はぁはぁ・・・」
繋がったまま、セックスのインターバル。
コハクのペニスもヒスイの膣も、互いの形を認識できないくらいグチャグチャに溶け合って。
それがとても・・・心地良かった。
「は・・・ふぁ・・・あついね、おにいちゃん」
「うん・・・あついね、でも・・・幸せだ」
そう言って、コハクはヒスイの手を取り、キスをした。
ヒスイは目を細め、笑い。
「うん、今夜も・・・」



幸せな・・・熱帯夜。






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