「ずいぶんと早いお帰りだね」


トパーズが屋敷の門を抜けると、そこにはコハクが立っていた。
トパーズより少し遅れての帰宅だったので、偶然といえば偶然なのだが。
「ヒスイには会っていかないの?」
コハクは、美しくも白々しい笑顔でトパーズを引き止めた。


眠り姫を目覚めさせた王子が、姿を見せなかった理由――。


直接目にすれば、誰にだってわかる。
本来、色白であるトパーズの肌が・・・褐色に日焼けしていたのだ。
「・・・・・・」
たかが日焼け、されど日焼け。学校でも教会でも大騒ぎとなった。
ヒスイには絶対に見せたくない姿だ。
「いやぁ・・・あの島は本当に暑かったよね」と、コハク。
材料調達の際に訪れた場所についてそう語る。
「だから日焼け止め塗った方がいいって言ったのに」
「うるさい。誰のせいだと思ってる」
トパーズの不機嫌な物言いに。
「ここまできたら、もう後には引けないでしょ」
コハクは苦笑いで答えた。
「・・・いつかはバレる」
「だろうね。その時はその時だよ。それにしても――」


「思った以上に弱かったね、紫外線に」


「・・・・・・」
「吸血鬼だったら、本当に塵になっていたところだけど、まぁ君も神の端くれだし?2、3日で元に・・・ん?」
皮肉交じりにコハクが言った、その時。
トパーズがコハクの足を踏み。
「・・・・・・」
コハクがトパーズの足を踏み返す。
ぐりぐりと、互いに潰し合い。しばらく我慢比べをして。
「・・・まあいい、元は取らせてもらう」と、トパーズが退く。
コハクは前髪を掻き上げ、余裕の笑みで。
「どうぞご自由に」



こうして、トパーズと別れた後、コハクは裏庭へと向かった。
「そろそろ届く頃なんだけど・・・あ、あれかな」
空を仰ぐ、と。雲の切れ間から、桐の小箱が落ちてきた。
やたらと格式高そうな梱包である。
トパーズを日焼け男子に変えてしまった秘密の出張。
コハクにとっては、収穫の多いものとなっていた。
行き着いた先で、風変りな店を見つけ、そこで特注した品が、たった今、届いたのである。
「これは夜のお楽しみ」
桐の小箱を手に、コハクは裏口の扉を開けた。
「ただいま」




同日、夜。

共に入浴を済ませ、それぞれバスタオル1枚という状況で――夫婦の部屋。
「ヒスイにね、プレゼントがあるんだ」
コハクはまず、袖机の引き出しから、紐を2本取り出した・・・と、言っても、日頃ヘアアレンジに使っているリボンだ。
「たぶんこうした方が、気持ちいいと思うよ」
「ん・・・」
コハクの言うことに間違いはない。
頬を赤らめながらも、ヒスイは素直に従った。
右手首を右足首に、左手首を左足首に結びつけられ。
上から下まで完全露出の恥ずかしい格好で仰向けになるヒスイ。
「おにいちゃ・・・これからどうするの?」
「うん、これ」
コハクは小箱の蓋を開け、一本の筆を取り出した。
「え・・・?おにぃ・・・」
困惑する一方で、体は察し。早くも膣口まわりが愛液で濡れている。
「あ・・・やぁ・・・」
脚を開けば、陰唇も開く・・・淫らに調教された体だ。
嫌がっていないことが、一目でわかってしまう。
「くす・・・ヒスイのココで、筆おろしさせてね」
本物の筆先が、膣口の縁をくすぐった。


「!!ひゃんっ・・・おにいちゃ・・・」


こそばゆさに笑っていたのも最初のうちだけで。
「あ・・・っは・・・」(なに・・・これ・・・)
1分も経たないうちに、ヒスイは背中にびっしょり汗をかいていた。
「あッ・・・ふぁんッ・・・!!」
膣内に十数ミリほど入った筆先が、くるくる回る。
ごく一部の膣肉を刺激されただけなのに、全体が綻んで。
筆先との戯れが、異様に気持ちいいのだ。背筋がゾクゾクする。
「お・・・おにぃちゃ・・・ぁ・・・」
「感じてくれたら嬉しいんだけど」と、コハク。
瞳を伏せ、丁寧に筆先を動かしながら言った。


「これね、僕の髪の毛で作ったんだ」


「っ・・・!!」(そんなの・・・ずる・・・)
単なる道具ではなかったのだ。
筆=コハクだとしたら、感じるに決まっている。
「あッ・・・」
愛しい筆先がクリトリスをつつく。
「あ・・・ふぅ・・・」
触れ合って、快感を送り込まれる度、そこはどんどん膨らんでいって。
今にも破裂しそうだった。
「あ・・・あぁ・・・」
先端を真っ赤にして、ビクビク震えていたところを、コハクの舌に優しく包まれ。
じゅるッ・・・吸われた瞬間に。
「ひゃあうッ!!あ・・・あああ・・・ッ!!!!」
膣が空収縮する。ヒスイは膝を揺すって1回目の絶頂を知らせた。
「続けても平気だよね?」
ヒスイの額から鼻筋にかけてキスをしながら、コハクが言って。
縮みかけた膣を指で強引に開き、そっと筆先を浸す。
「ひッ・・・んくッ!!」
軸を1/3ほどまで入れ。奥に溜まっていた愛液を、くちゅくちゅ、掻き混ぜる、と。
「あッ!!!!」ヒスイは息を詰め。
「あぁ〜・・・」新しい快感に成す術なく、再び絶頂を迎えた。
「・・・ふ・・・はぁ・・・」
虚ろな目をしたヒスイの呼吸に合わせて、泡を含んだ愛液が、膣口から力なく排出される・・・そして。
「!!あッ!ふぁッ・・・あぁぁ・・・」
より敏感になった膣肉に、柔らかく突き立てられる筆先。
快感のまま、飲み込んでしまい、ついに子宮口まで届く。
「う・・・うそ・・・あ・・・はぁんッ!!!」
そこに連続してハートマークらしきものを描かれ。
ヒスイは何度も絶頂の発作を起こした。
「ひッ・・・ううぅんッ!!!」
イッても、イッても、筆先は止まらず。


“まだ、戻ってきちゃダメだよ?”


そう、コハクに言われているみたいだった。



「あ・・・おにぃちゃぁ〜・・・」
「気に入ってもらえた――みたいだね」
膣口を指で開いているため、にちにち、ねちゃねちゃ、懸命に毛筆を絞っている音が、奥の方から聞こえてくる。
軸から手を離しても、落ちない。それだけ深く咥え込んでいるのだ。
(イクと何でもぎゅーってしちゃうんだよね・・・うん、可愛い・・・)
なにせ自分の髪なので。この光景に嫉妬することもない。
ただただ、ヒスイを愛おしく思うだけだ。
「ヒスイ」
「んぅ・・・おにぃちゃ・・・」
両手で頬を包み、角度を変えては唇を重ねる。
長いキスを終えた後、ヒスイの膣から筆を抜き、拘束リボンを解く・・・と。
ヒスイは体を丸め、コハクに背を向けた。
「ヒスイ?」


「・・・おにいちゃんの、えっちっ!!」


(あれ?そうくる?)
「ごめん、ごめん」コハクは反射的に謝って。
(これはもしかして・・・)
やりすぎ→怒らせ→失敗ルート。かと、思いきや。
「おにいちゃんが、へんなふうに気持ちよくするから・・・さっきからずっとお腹のなか、おかしいの」
責任とって、と。口を尖らせ、拗ねる。
「・・・・・・」(可愛すぎでしょ、これは・・・)
さすがのコハクも、ほんのり赤面。


ヒスイには見せない顔もあるが、ヒスイにしか見せない顔もある。


きっとこれがそうなんだろう、と。
うっすら窓に映った自分の顔に笑いながら「うん」と頷き。
コハクは、勃起ペニスに軽く手を添え、言った。



「じゃあ、これをヒスイのお腹に入れてくれる?」
「うんっ!いいよ!」







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