エクソシストの一団から少し離れたところで。
「・・・え?勘違い???」
ヒスイは、きょとんとした顔でセレの話を聞いていた。
「あーくんは、自ら落ちて頭を打ったのだよ」
イフリートは誤って召喚されただけで、何の罪もない。
そう、セレの口から告げられる。
本来ならば、リヴァイアサンが召喚される場面・・・いっそ、それを氷漬けにしていればお手柄だったのだが。
オニキスを始め、多くのエクソシスト達が、イフリートの引き上げ作業に当たっている。
「そっか・・・私、やっちゃったんだ・・・」
「それで、なのだがね。“向こう側”が、人質を要求してきているのだよ」
「人質?」
「ペナルティというところかね 」
私が行こうと思う、と、セレ。
「なに、イフリートを無事還すまでの間だ」
心配はいらない、そう言ってヒスイの頭を撫でる。
「ついては、留守の間、教会をトパーズに頼みたいのだがね。彼に伝えて・・・」
「私が失敗したんだから、私が行く」
高みのセレを見上げるヒスイ。
「ごめんね。後のことはよろしく」
謝罪と決意を述べた、その時。ふわり、コハクの両腕に包まれる。
「わ・・・お兄ちゃん!?」
息も乱れていない、汗もかいていない、表情もいつも通り優美なものだが。
風に吹かれ、髪型は少々崩れている。
コハクもまた、スピード全開で駆け付けたのだ。
「僕も行きます。イフリートが戻るまで、なんて言っても、本当か嘘かわかったものじゃない」
ヒスイをひとりで行かせる訳にはいかない、と。しかしセレは。
「それは困る。君と私が離れる訳にはいかないだろう」
次の瞬間。コハクはヒスイから離れ、セレとのヒソヒソ話に転じた。
「誤解を招くような言い方、やめて貰えませんか」
「おやおや、君と私で行こうと思っていたのだがね」
どうやら定員は2名。
「ヒスイと私で行っても良いのだが」というセレの発言に対し、一瞬コハクが目つきを変えたが、今はそれよりも・・・
「あっ・・・ほら・・・ヒスイが・・・」
・・・疑いの眼差しを向けている。
「セレの本命は、まーくんの筈でしょ!?いい加減なことしたら許さないんだからっ!!」
「へぇ・・・そうなんですか?」
白々しいコハクの物言いに。
「彼女の中では、そういう事になっているらしいよ」
苦笑いでセレが答える。
「お兄ちゃんは絶対あげないっ!!」
そう声を張り上げ、セレを押し退けようとするヒスイだったが・・・ビクともしない。
「っ~!!!とにかくっ!!“向こう側”には私が行く!!」
「「「だったら ―」」」
満を持して。男3人の声が重なる。
「オレが行く」と、トパーズ。
「オレが行こう」と、オニキス。
「いや、ここは俺しかいねーだろ」
魔法治療を済ませたアイボリーまでいた。
「僕が行く」コハクも改めて名乗りをあげ。
「やはり私が行くよ」セレもまた、譲らない。
「オレが」「俺が」「僕が」「私が」「オレが」
男5人の間で、このやりとりを、何度も繰り返し。
「・・・・・・」×5
埒が明かないので、アミダくじで決めることになった・・・のだが。
「・・・・・・」(どうして僕が?)
選ばれたのは、6人目の男、マーキュリーだった。
ヒスイのパートナーにエントリーした覚えもないというのに。
アイボリーが勝手に名前を書き、大当たりだ。
(大当たり?どこがだよ)
お母さんと一緒だなんて・・・最悪だ・・・
魔法陣はまだ光を放っている。“向こう側”と繋がっている証拠だ。
日の出前に発たなければならないが、まだ時間はあった。
ふたりきりになれる場所まで移動するコハクとヒスイ。
ただし、どこまで行っても、砂漠は砂漠だ。
しばしの別れを控え。
「ヒスイ――」
背中から抱きしめられると。
「おにぃちゃ~・・・」
つい、甘えた声を出してしまう。更には。
「あ・・・」(やだ・・・わたし・・・こんな時・・・なのに・・・)
体からセックスの快感が抜けきらず、ぢゅくん・・・膣口が啜り上がる。
コハクの腕の中、恥じて俯くヒスイ。すると。
「こんな時、だからだよ」優しく笑ってコハクが言った。
聞こえる筈のない心の声も、コハクには届いてしまうのだ。
「あッ・・・おにいちゃ!!!」
勃起ペニスを後ろから押し付けられると、ヒスイの頬にぱあっと赤味が広がった。
「ね、ヒスイ・・・まだこの中に、いっぱい“僕”が残ってるんだ。全部、連れて行ってくれる?」
熱い息とともに、紡ぎ出される愛の言葉。
たちまち口説き落とされて。ヒスイは小さく頷いた。
「ひぁ・・・」
濡れたコハクの舌が、そっと耳に入れられ。
くちゃり、いやらしく鳴って。脳を官能的に刺激する。
それから・・・
ショーツの中、滑り込んできた手に恥丘を覆われ。
コハクの指が、クリトリスに触れた。
「あふ・・・ぅッ!!」
膨れた肉の芽に何が詰まっているのか・・・軽く撫でられただけで、驚くほどの快感が生まれる。
「あ・・・うぅ・・・」
膣がうねり、そこから練り出された愛液が、コハクの指に絡まってゆく。
もう・・・離れられない。
「あ・・・お・・・にぃ・・・」
目隠しのひとつもない砂漠で。このままいけば、エッチ本番。青姦だ。
その表情は次第に羞恥に満ちて。
「ちょっとまっ・・・・・・あぁッ!!」
コハクの指の腹が、ゆっくりとクリトリスを持ち上げ、動かした。
「あんッ!!んぅ・・・ッ!!」
堪らずヒスイが体を伸び上がらせる。
「あ・・・あ・・・」
クリトリスとともに震える唇を、しばらく唇で塞いで。
「・・・好きだよ」と、ヒスイの口元で囁くコハク。
「そうやって、恥ずかしがってるところもね」
「ヒスイ・・・っ!!なんかあった!?」
遅ればせながら異変に気付いたジストが、空を切り裂き飛び降りた先は・・・溺愛現場。
「うわッ!?」(ヒスイにチンチン生えて・・・)
それは違う。立ったまま、コハクのペニスに跨っているだけだ。
潮を吹いているのか、ペニスの根元から、ぽたぽた・・・ぽたぽた・・・
水っぽく透明な雫が群を成して落ちている。
ヒスイは、性感以外のものが、もうだいぶ鈍くなっているようだった。
ジストの乱入にも反応が薄い。
コハクに背中を預け、斜め上を向いて。唇に与えられるキスを堪能していた。
「ごめ・・・オレあっち行って・・・」
「丁度良かった」
コハクは、慌ててその場を去ろうとするジストを呼び止め。
「足場が悪くて困ってたんだ。手伝って貰えないかな」
嫌じゃなければ・・・だけど、と、コハク。
「!!全然嫌じゃないよっ!!」ジストが答える。
(つかまるところもないんじゃ、大変だもんなっ!!)
「オレっ!手伝うよっ!!」
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