本の中の監獄。

「おーい。コハク。ヒスイのこと運んでやって」
クーマンが名を呼ぶ・・・と。
「はい」
早すぎる返事と登場。近くで待機していたとしか思えない。
無論、セレも同行している。
「・・・いつからそこにいたんだよ」
「“クーマン”と、ヒスイに命名されちゃったあたりから、ですかね」
これからは僕もそう呼びます、と、笑うコハク。
ヒスイを引き取ると、早速。
「あ、そうだ。クーマンさん」
「なんだよ」
「“命をかけて愛する”っていうのは、なにも死ぬことだけを指している訳じゃない。生きることも、その意味に含まれています。少なくとも、ヒスイはそのつもりで言ってますから、お忘れなく」
「・・・・・・」
「ところで」と、そこにセレが割って入った。
「まーくん、行かせてしまって良かったのかね」
するとクーマンが。
「腹黒い大人の騙し合いに巻き込むことないだろ」
セレとコハクに背を向け、伸びをした。
「一理あるかな」と、セレ。
コハクもまた相槌を打ち。それからこう申し出た。
「クーマンさん。そろそろヒスイに血を飲ませたいんで、ご協力お願いします」



ヒスイを連れ、全員、一旦本の外に出る。
「便利ですね、これ」
クーマンから譲り受けたその本の、空白のページを捲ると、コハクはそこに新たな“部屋”を描いた。
赤い屋根の屋敷の、夫婦の寝室だ。
ヒスイが落ち着く環境を、と、配慮してのことだった。
絵心のあるコハクが描いただけあって、完璧に再現されている。
ただし、そこには、男が4人。
クーマン、セレ、コハク、そして・・・コハクの分身、B。
ベッドに横たわるヒスイの脇にずらりと並ぶ。
「お前等二人でヒスイを介抱する気?」と、クーマン。
吸血行為と直結するセックス込みで言っている。
「「はい」」コハク本体※以下、コハクAと、コハクBが揃って頷く。
本来、独占欲の強い者同士、ヒスイを巡り、上手くいくはずがないのだが。
「ヒスイに血を与えることも、ヒスイと交わることも、僕にとっては、どちらも同じくらい幸せなことなので――」


「今回は、折半できました」


コハクAとコハクB、どちらともなくそう語る。
「ヒスイの血液バランスを整えるには、1/3以上の献血が必要ですよね?」
だとすれば、貧血は必至で。
「何かあった時、ヒスイを守れないようじゃ、本末転倒ですから」
コハクAもコハクBも、ヒスイを独り占めしたいのは山々だが、愛すればこその我慢をすると決めたのだ。
セレの“目隠し”をクーマンに頼み。
「「それじゃあ、始めようか」」


男がふたり、女がひとり。ベッドの上で裸になっている。
膝立ちで抱き合うようにして、コハクBの首元に齧りついているヒスイ。
自分の置かれた状況を理解できていない、が。
夢中で血を吸いながら、いつしか、コハクBに胸を重ねた格好でベッドに倒れ込んでいた。
「ん・・・ふ・・・」
コハクBの上になったヒスイは、勃起しているペニスに自身の股間を擦りつけ、吸血の最中も絶えず愛情を示していた・・・が。
ある時、ビクンッ!と、腰が弾んだ。すると。
「そろそろコレが必要みたいだね」
背後からコハクAの声が聞こえて。ビクつく腰を引き上げられる。
濡れ疼いていた膣口を亀頭で押された瞬間・・・
「!?ふはぁんッ!!」
ヒスイは、コハクBの血管から牙を抜き、喘いだ。
「っ・・・はぁ・・・」(おにいちゃんが・・・ふたり???)
肩越しに振り向くと、そこにもコハクがいて。
混乱しているヒスイに、コハクAはとっておきの笑顔でこう告げた。



「今夜は、二人がかりで愛してあげる」



「お・・・にぃ・・・ちゃ?」(なにいって・・・)
コハクの、その笑顔を見ていると、何が良いのか悪いのか、わからなくなる。
前を向くと、コハクBも同じ笑顔で。効力は2倍。
ヒスイの頬が濃い朱色に染まる。催眠にでもかかってしまったみたいだった。
「もっと吸って、ヒスイ」
「ん・・・ぁ・・・はむッ・・・」
コハクBに囁かれるまま、ヒスイはふたたび牙を剥き。
一方で、ペニスの挿入が再開される。
「んッ・・・ふうッ!!!」
ヒスイの腰が逃げないよう、コハクBが下から両手でしっかりと支え。
「んぐッ・・・!!」
入り込んできた亀頭は、膣よりずっと熱かった。
「んッ・・・んんッ!!!」
肉や襞をうねらせ、どんなに愛液を絡めても、それは変わらず。
「よしよし、いい子だね」と、コハクAが頭を撫でる。
じっくりと時間をかけて、ヒスイの中をドロドロに溶かしながら、ペニスの収まりをつける、と。
「「まだまだ、これからだよ」」
コハクBと共に微笑んだ。
「ん・・・むぅ・・・」
ヒスイの睫毛が、官能に震える。
(ふたりとも・・・)



綺麗な顔で笑うのに、すごく、えっち。






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